狼の婚約者 ―君の愛が、僕の呪いをほどくまで―

海野ことり

文字の大きさ
3 / 35

【2】幼馴染みは可愛い男の子-①

しおりを挟む
「今日は春風が気持ち良いね」
 カフェのテラス席で風に髪を遊ばせながら言うと、向かいのミルコが呆れたように息を吐いた。

「君は呑気だなあ。さっきから“春の天使”見たさに人が押し寄せてるってのに」
「天使って、僕はもう十六だよ? 流石にそれは無理があるだろ」

 ゼッポリーニ家の“春の天使”と呼ばれたのも今は昔。前世を思い出してから二年が経ち、ようやくこの派手な顔にも慣れてきた。
 それでも、鏡を覗くたびに中身は地味なままだと自覚する。
 派手な外見の裏で、どこか遠慮がちに笑う自分がいる。
 それが前世の癖だと分かっていても、なかなか抜けない。
 だから、僕はやっぱり "主役" にはなれない。

「あの人たちはきっと君を見に来ているんだよ」
 ニコニコと笑いながらミルコにそう言ったら、冷たい視線を返された。

「呆れた。君は本当に自覚が足りない。学校じゃ親衛隊がガードしてくれてるけど、外じゃ危ないんだからね」
「ええ~、それはミルコの方だろ? 僕より小さいし」
「これから大きくなるんだよっ!」
 顔を真っ赤にするミルコを見て、僕は思わず吹き出した。
 彼の家――サンテス家は服飾を手掛けていて、紡績で財を築いた僕の家とは古くから取り引きがある。ミルコとも幼い頃から顔を合わせていた。
 サンテス家はフラミンゴの獣人家系で、スラリと背が高くて優美でナルシストだ。けれどミルコは養子なので、明らかに毛色が違う。
 彼はセグロサンショクヒタキ――俗に言うピンクロビンの獣人だ。紺青の髪にぽっちりとつぶらな瑠璃色の瞳が愛らしい。
 胸から腹にかけての体毛は鮮やかなピンクで、まるで春の花のようだ。
 僕は彼の派手なツートンカラーをとても気に入っている。

「僕はちゃんと自覚してるけど、君は自分の容姿の破壊力をわかってないんだ」
「そんなことないよ? 派手で遊んでそうに見えるよう努力してるし」
「遊んでそう?」
「フッフッフ。男の癖にアクセサリーなんて付けて、化粧までしてるもんね~」
 どうよ、と勝ち誇った顔をしたらミルコが手のひらで額を押さえた。

「そのキラッキラのピアス、レフ板効果で顔が明るく見えるね。あと見事な銀の透かし彫りの指輪はレースみたいで、華奢な君の指にピッタリ。ああ、化粧ってもしかして色付きリップのこと? それだけは美味しそうになるから止めた方が良いと思うけど、睫毛の先にラメが散っているのは綺麗だね」
「はっ? はっ? はぁあああ?」
 僕は思わず目を白黒させた。
 前世で見たチャラ男を参考にしたはずなのに、何かが違うらしい。

「ラメはジュリアーナさんの仕業でしょ?」
「……多分」
 姉のジュリアーナに瞬きをすると蝶が羽ばたくみたいで大変だと言ったら、何それ悔しいって鼻をつままれた。多分その時に付けられたんじゃないかと思う。

「派手に見せるのは結構だけど、遊んでいると思われたいなんてどうして? 変な輩が寄って来て困るだろう」
 ミルコに不思議そうに聞かれ、そう言えば彼に婚約の事を話していなかったと気付く。

「実は、婚約者がいるんだ。相手が成人してから結婚することになってて……。それまでに“遊んでる”って噂が立てば破談になるかなって」
「婚約者! 何それ、聞いてない!」
 ミルコがテーブルに大きな音を立てて手を付き、立ち上がった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大魔法使いに生まれ変わったので森に引きこもります

かとらり。
BL
 前世でやっていたRPGの中ボスの大魔法使いに生まれ変わった僕。  勇者に倒されるのは嫌なので、大人しくアイテムを渡して帰ってもらい、塔に引きこもってセカンドライフを楽しむことにした。  風の噂で勇者が魔王を倒したことを聞いて安心していたら、森の中に小さな男の子が転がり込んでくる。  どうやらその子どもは勇者の子供らしく…

黒豹拾いました

おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。 大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが… 「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」 そう迫ってくる。おかしいな…? 育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。

花街だからといって身体は売ってません…って話聞いてます?

銀花月
BL
魔導師マルスは秘密裏に王命を受けて、花街で花を売る(フリ)をしていた。フッと視線を感じ、目線をむけると騎士団の第ニ副団長とバッチリ目が合ってしまう。 王命を知られる訳にもいかず… 王宮内で見た事はあるが接点もない。自分の事は分からないだろうとマルスはシラをきろうとするが、副団長は「お前の花を買ってやろう、マルス=トルマトン」と声をかけてきたーーーえ?俺だってバレてる? ※[小説家になろう]様にも掲載しています。

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

令嬢に転生したと思ったけどちょっと違った

しそみょうが
BL
前世男子大学生だったが今世では公爵令嬢に転生したアシュリー8歳は、王城の廊下で4歳年下の第2王子イーライに一目惚れされて婚約者になる。なんやかんやで両想いだった2人だが、イーライの留学中にアシュリーに成長期が訪れ立派な青年に成長してしまう。アシュリーが転生したのは女性ではなくカントボーイだったのだ。泣く泣く婚約者を辞するアシュリーは名前を変えて王城の近衛騎士となる。婚約者にフラれて隣国でグレたと噂の殿下が5年ぶりに帰国してーー? という、婚約者大好き年下王子☓元令嬢のカントボーイ騎士のお話です。前半3話目までは子ども時代で、成長した後半にR18がちょこっとあります♡  短編コメディです

【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる

おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。 知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。

騎士団長の秘密

さねうずる
BL
「俺は、ポラール殿を好いている」 「「「 なんて!?!?!?」」 無口無表情の騎士団長が好きなのは別騎士団のシロクマ獣人副団長 チャラシロクマ×イケメン騎士団長

処理中です...