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【2】幼馴染みは可愛い男の子-②
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「ミルコ?」
「相手は誰!」
「オルシーニ家の次男。僕らより二つ下」
「愛してるのっ!?」
「な、なんでそうなるの!」
ただの家の取り決めだ。破棄される予定だし、言う必要もないと思っていた。
「相手の気持ちは?」
「ディーノ? 子供の頃の約束だから、忘れてるんじゃない?」
仔犬の姿で一度会っただけの少年だ。覚えているはずがない。
オルシーニ家は今や大きな警備会社を経営している。僕なんかよりもっと相応しい相手がいるだろう。
「連絡は取ってる?」
「ううん、一切ないよ。あっちが『獣性をコントロールできるようになるまで会わせない』って言ってたし」
「じゃあ……もう流れてるのかもね。でも油断しちゃ駄目だよ。僕も協力する!」
「ありがとう……?」
なぜそこまで一生懸命なのか、ちょっとわからない。
けれどミルコは真剣だった。
「結婚なんて、まだ早いよ……」
ぽつりと呟かれた言葉にああそうかと思う。彼も同じ歳だから、たぶん、置いていかれた気がしたのだろう。
僕らはまだ“途中”だ。何者にもなれていない。
(それに僕は、前世でも途中のままだった)
僕はまだ高校生だったのに、事故に巻き込まれて死んだ。
突然、何の前触れもなく、未来を失った。
その“終わり方”を、いまも覚えている。
「そうだね、結婚はまだ早い。それにそもそも、先に恋愛をしなくちゃだよね」
せっかく生まれ変わったというのに、僕はまだ誰とも恋をしていない。
「だったら僕とする?」
「えっ、ミルコと!?」
どんなに可愛くても、男の幼馴染と恋は無理だ。隣で寝てても落ち着くだけ。
まるで、よく馴染んだ座布団みたいに。
「でも奥手な君には、僕くらいが丁度良いよ」
「ええ~、理由が雑すぎるよ。それに僕は、女の子の方が良いもの」
「女の子? 肉食系女子は苦手なくせに?」
「う……そうなんだよね」
実は僕は、グイグイくる女の子が苦手だ。
自分に決断力が無いから引っ張って行ってくれる人が良いけど、余り積極的に迫られるとテンポに付いていけず、気後れしてしまう。
情けない、弱腰外交の日本人かよって思うけど――うん、情けない男子です。
「どこかに可愛くて控えめで、でも自分の意見もしっかりと持っている癒し系の女の子っていないかな?」
「ジュリアーナさんみたいな?」
「あれは癒し系じゃない!」
即答する僕に、ミルコは小さく笑った。それからすぐに表情を引き締める。
「大体、君より可愛い子なんていないよ」
真顔で言わないでよ。照れるって。
「大真面目に何を言ってるのさ。僕より可愛い子なんて、幾らでもいるだろう」
「いないよ。いたら僕はとっくに恋に落ちてる」
(うわ、ミルコってば、言うことが男前……)
軽口のつもりが、ほんの少しだけ鼓動が跳ねた。
「エミーリオ? ちゃんと聞いてた?」
「えっ、聞いてる聞いてる。可愛い子を見つけたら恋に落ちるって」
「そんな事は言ってない!」
何故か起こり出したミルコの口に、僕はシュガーボンボンをそっと押し込む。
甘い香りが風に溶け、彼の眉間が緩む。
何度か繰り返していたら、小鳥みたいに小さくため息をついた。
「これが駄目なんだろうな」
「何が?」
「君にシュガーボンボンを貰うのは、もう終わりにしなくちゃなって事」
「えっ、どうして?」
僕も彼もこの小さな砂糖菓子が大好きなのに。
「それがわからないうちは、結婚はまだ早いよ」
その一言に、今度は僕がふくれっ面になり、砂糖菓子を口に放り込んだ。
舌に残る甘さの奥で、なぜか胸の奥がきゅうっと痛んだ。
──まるで、何かを思い出しそうな痛みだった。
「相手は誰!」
「オルシーニ家の次男。僕らより二つ下」
「愛してるのっ!?」
「な、なんでそうなるの!」
ただの家の取り決めだ。破棄される予定だし、言う必要もないと思っていた。
「相手の気持ちは?」
「ディーノ? 子供の頃の約束だから、忘れてるんじゃない?」
仔犬の姿で一度会っただけの少年だ。覚えているはずがない。
オルシーニ家は今や大きな警備会社を経営している。僕なんかよりもっと相応しい相手がいるだろう。
「連絡は取ってる?」
「ううん、一切ないよ。あっちが『獣性をコントロールできるようになるまで会わせない』って言ってたし」
「じゃあ……もう流れてるのかもね。でも油断しちゃ駄目だよ。僕も協力する!」
「ありがとう……?」
なぜそこまで一生懸命なのか、ちょっとわからない。
けれどミルコは真剣だった。
「結婚なんて、まだ早いよ……」
ぽつりと呟かれた言葉にああそうかと思う。彼も同じ歳だから、たぶん、置いていかれた気がしたのだろう。
僕らはまだ“途中”だ。何者にもなれていない。
(それに僕は、前世でも途中のままだった)
僕はまだ高校生だったのに、事故に巻き込まれて死んだ。
突然、何の前触れもなく、未来を失った。
その“終わり方”を、いまも覚えている。
「そうだね、結婚はまだ早い。それにそもそも、先に恋愛をしなくちゃだよね」
せっかく生まれ変わったというのに、僕はまだ誰とも恋をしていない。
「だったら僕とする?」
「えっ、ミルコと!?」
どんなに可愛くても、男の幼馴染と恋は無理だ。隣で寝てても落ち着くだけ。
まるで、よく馴染んだ座布団みたいに。
「でも奥手な君には、僕くらいが丁度良いよ」
「ええ~、理由が雑すぎるよ。それに僕は、女の子の方が良いもの」
「女の子? 肉食系女子は苦手なくせに?」
「う……そうなんだよね」
実は僕は、グイグイくる女の子が苦手だ。
自分に決断力が無いから引っ張って行ってくれる人が良いけど、余り積極的に迫られるとテンポに付いていけず、気後れしてしまう。
情けない、弱腰外交の日本人かよって思うけど――うん、情けない男子です。
「どこかに可愛くて控えめで、でも自分の意見もしっかりと持っている癒し系の女の子っていないかな?」
「ジュリアーナさんみたいな?」
「あれは癒し系じゃない!」
即答する僕に、ミルコは小さく笑った。それからすぐに表情を引き締める。
「大体、君より可愛い子なんていないよ」
真顔で言わないでよ。照れるって。
「大真面目に何を言ってるのさ。僕より可愛い子なんて、幾らでもいるだろう」
「いないよ。いたら僕はとっくに恋に落ちてる」
(うわ、ミルコってば、言うことが男前……)
軽口のつもりが、ほんの少しだけ鼓動が跳ねた。
「エミーリオ? ちゃんと聞いてた?」
「えっ、聞いてる聞いてる。可愛い子を見つけたら恋に落ちるって」
「そんな事は言ってない!」
何故か起こり出したミルコの口に、僕はシュガーボンボンをそっと押し込む。
甘い香りが風に溶け、彼の眉間が緩む。
何度か繰り返していたら、小鳥みたいに小さくため息をついた。
「これが駄目なんだろうな」
「何が?」
「君にシュガーボンボンを貰うのは、もう終わりにしなくちゃなって事」
「えっ、どうして?」
僕も彼もこの小さな砂糖菓子が大好きなのに。
「それがわからないうちは、結婚はまだ早いよ」
その一言に、今度は僕がふくれっ面になり、砂糖菓子を口に放り込んだ。
舌に残る甘さの奥で、なぜか胸の奥がきゅうっと痛んだ。
──まるで、何かを思い出しそうな痛みだった。
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