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二話①
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うわ、まぶしー。
街頭広告でその姿を拝見してから数週間が経ち、その間にコンセプトやラフの提出なり何なりを経て、じゃあ実際に顔合わせ。という会議での俺の感想だ。
瑞稀が出演するCMのグラフィック担当が実は俺だったことにまず驚いたけれど、与えられた仕事には真摯に向き合いたい。そう思って、瑞稀のこれまでの出演作品や過去の経歴を色々調べてみたが、芸歴の半分は学業との並行だったとのことで露出が少ない上に、そもそも事務所の意向で『ミステリアスな存在』にしておきたいらしく、自身のことについて触れられている媒体がなかった。
なので、情報が少なすぎる状態で「とりあえず顔が良い」という認識だけで会議に臨んだ俺も悪かった。
まるで阿呆のようにその姿に見惚れてしまい、間宮が名刺を渡すために隣で立ち上がらなければ涎でも垂らしていたかもしれない。
それくらい、瑞稀の姿は美しかった。
間宮に倣って俺も席を立ち、マネージャーと瑞稀にそれぞれ名刺を渡す。「頂戴します」と言う滑らかで低い声と、細長いのに節くれだった指に、背中がぞくぞくした。
頭の中がふわふわした心地のまま、それでも会議は順調に進んでいき、次の春夏に向けたカラーコンタクトレンズのCM撮影の概要は決まった。では後はスケジュール調整を。と言うことで瑞稀のマネージャーと間宮が話し合っている横で、四角いテーブルの対面上に座らされている瑞稀と俺はお互いに手持ち無沙汰になっていた。
「詠兎さんって、綺麗なお名前ですね」
先に言葉を発したのは瑞稀の方だった。え、これ雑談とか始まるパターン?と、目の前のモロに好みの男に対して冷や汗が出る。
「いや、瑞稀さんのお名前も素敵じゃないですか」
当たり障りなく返して、このままフェードアウトしたい気持ちを滲ませぬように笑顔を浮かべる。
けれど雑談を終わらせるつもりは無いらしく新しい質問が飛んできた。
「カラーコンタクトってします?」
「いや、実は視力めちゃくちゃ良くて。透明なコンタクトもつけた事ないんですよ」
「あぁ、なんかそんな感じしますね」
にこ、と微笑まれるともう堪らない。これまで見てきた媒体では『ミステリアス』と言う事務所の推しポイントの通り、笑顔で写っているものはほとんどなかった。キリッとした眼差しで繰り出される流し目や、睨みつけるような鋭い眼光。正直、そんなものよりこの笑顔の方が数倍威力がデケェぞ。そう思い、心の中でウサギをプルプル振るわせているような心地で雑談を必死に繋ぐ。クライアントが使いたがっている宣伝材料さまのご機嫌を損ねるわけにはいかないのだ。
「瑞稀さんは、コンタクトですか?」
「そうなんです。僕は視力悪くて。学生の頃はずっと眼鏡だったんですけど」
「へぇ、じゃあプライベートは眼鏡なんですか?」
「というより、撮影の時以外は眼鏡ですね。ドライアイが酷くて」
「え、じゃあ今日は?」
「今日は、なんとなくですが。コンタクトにしてきて良かったです」
「へ?」
あまりにも間抜けな声を出してしまった。なぜなら、瑞稀の必殺流し目攻撃を受けてしまったからだ。思わず心臓が跳ね上がり、咄嗟に変な声が出てしまった。
なぜ、今、ここで、そんな色気を発動するのか。小さなパニックを起こしていると、どうやらマネージャーと間宮のスケジュール調整が終わったらしい。
「瑞稀、次行くよ。
本日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございました」
見るからにバリキャリ。という風体の女性マネージャーが美しくしなやかにお辞儀をして、会議は終わった。
「はい撮影の際は、僕たちも参加させていただきますのでよろしくお願いいたします。それまで必要なことはメールでやり取りさせてください」
間宮もお辞儀をして、遅れて俺も頭を下げた。
そっか、俺また瑞稀と会うのか。
嬉しいような末恐ろしいような気持ちで、瑞稀たちが会議室を出ていくまで頭を上げられなかった。
街頭広告でその姿を拝見してから数週間が経ち、その間にコンセプトやラフの提出なり何なりを経て、じゃあ実際に顔合わせ。という会議での俺の感想だ。
瑞稀が出演するCMのグラフィック担当が実は俺だったことにまず驚いたけれど、与えられた仕事には真摯に向き合いたい。そう思って、瑞稀のこれまでの出演作品や過去の経歴を色々調べてみたが、芸歴の半分は学業との並行だったとのことで露出が少ない上に、そもそも事務所の意向で『ミステリアスな存在』にしておきたいらしく、自身のことについて触れられている媒体がなかった。
なので、情報が少なすぎる状態で「とりあえず顔が良い」という認識だけで会議に臨んだ俺も悪かった。
まるで阿呆のようにその姿に見惚れてしまい、間宮が名刺を渡すために隣で立ち上がらなければ涎でも垂らしていたかもしれない。
それくらい、瑞稀の姿は美しかった。
間宮に倣って俺も席を立ち、マネージャーと瑞稀にそれぞれ名刺を渡す。「頂戴します」と言う滑らかで低い声と、細長いのに節くれだった指に、背中がぞくぞくした。
頭の中がふわふわした心地のまま、それでも会議は順調に進んでいき、次の春夏に向けたカラーコンタクトレンズのCM撮影の概要は決まった。では後はスケジュール調整を。と言うことで瑞稀のマネージャーと間宮が話し合っている横で、四角いテーブルの対面上に座らされている瑞稀と俺はお互いに手持ち無沙汰になっていた。
「詠兎さんって、綺麗なお名前ですね」
先に言葉を発したのは瑞稀の方だった。え、これ雑談とか始まるパターン?と、目の前のモロに好みの男に対して冷や汗が出る。
「いや、瑞稀さんのお名前も素敵じゃないですか」
当たり障りなく返して、このままフェードアウトしたい気持ちを滲ませぬように笑顔を浮かべる。
けれど雑談を終わらせるつもりは無いらしく新しい質問が飛んできた。
「カラーコンタクトってします?」
「いや、実は視力めちゃくちゃ良くて。透明なコンタクトもつけた事ないんですよ」
「あぁ、なんかそんな感じしますね」
にこ、と微笑まれるともう堪らない。これまで見てきた媒体では『ミステリアス』と言う事務所の推しポイントの通り、笑顔で写っているものはほとんどなかった。キリッとした眼差しで繰り出される流し目や、睨みつけるような鋭い眼光。正直、そんなものよりこの笑顔の方が数倍威力がデケェぞ。そう思い、心の中でウサギをプルプル振るわせているような心地で雑談を必死に繋ぐ。クライアントが使いたがっている宣伝材料さまのご機嫌を損ねるわけにはいかないのだ。
「瑞稀さんは、コンタクトですか?」
「そうなんです。僕は視力悪くて。学生の頃はずっと眼鏡だったんですけど」
「へぇ、じゃあプライベートは眼鏡なんですか?」
「というより、撮影の時以外は眼鏡ですね。ドライアイが酷くて」
「え、じゃあ今日は?」
「今日は、なんとなくですが。コンタクトにしてきて良かったです」
「へ?」
あまりにも間抜けな声を出してしまった。なぜなら、瑞稀の必殺流し目攻撃を受けてしまったからだ。思わず心臓が跳ね上がり、咄嗟に変な声が出てしまった。
なぜ、今、ここで、そんな色気を発動するのか。小さなパニックを起こしていると、どうやらマネージャーと間宮のスケジュール調整が終わったらしい。
「瑞稀、次行くよ。
本日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございました」
見るからにバリキャリ。という風体の女性マネージャーが美しくしなやかにお辞儀をして、会議は終わった。
「はい撮影の際は、僕たちも参加させていただきますのでよろしくお願いいたします。それまで必要なことはメールでやり取りさせてください」
間宮もお辞儀をして、遅れて俺も頭を下げた。
そっか、俺また瑞稀と会うのか。
嬉しいような末恐ろしいような気持ちで、瑞稀たちが会議室を出ていくまで頭を上げられなかった。
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