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二話②
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「なぁ、瑞稀と何話してた?」
「当たり障りない会話。多少聞こえてたろ」
「聞こえてたけどさぁ」
会議室から、自分たちのオフィスのある階までエレベーターで移動中。二人きりになったからか、やたらと間宮が絡んでくる。
「だってさぁ、なんか詠兎の雰囲気がいつもと違うからさぁ。何、ああいうのが好みなん?」
「うん、モロ好み」
到着を告げる音が鳴って、最寄りの階に着いたタイミングで発したその言葉に深い意味はなかった。女子高生がアイドルを追っかけるのと同じような感覚だ。恋愛どうこうとかじゃない。
モロ好みの男に微笑まれて、流し目を喰らったって、別にそれはただそれだけのことで、それだけのことで期待するほど子供じゃない。
エレベーターを降りて、二人きりではなくなったおかげで、間宮がそれ以上絡んでくることはなかった。
自分のデスクに戻り、実際に瑞稀と対面した時に感じたインスピレーションと、今回の作品のコンセプトを再度照らし合わせる。
やりたいように作品を作って良いのは、趣味でやってる奴だけだ。仕事として作品と向き合うならば、クライアントや関係各所のご機嫌が取れるような作品に仕上げるべきだ。
そういうつもりで、今までもこれからも、ひとつひとつの仕事と向き合っていく。
誇れる自分として、今ここに存在する。
どうしてかわからないけれど、そんな自分の信条のようなことを思った時に、ふと吉名先輩のことを思い出した。
またもう一度会えるなら、胸を張れる自分でいたい。先輩の、猫背の背中を思った。
振り返りざまに、気弱で曖昧な笑顔を向けて欲しい。「板崎、なんかかっこよくなったなぁ」って控えめに笑ってほしい。
こんな仕事をしていれば、今までも良い男と出会ったことは山ほどある。
それでも、「良い男ですね」以上の感情を持たずに接していられたのは、どこかでずっと俺を褒めるのは吉名先輩であってほしいと思っていたからのように思う。
そう思う自分がいるのと同時に、あの日「モデルやってください」なんて言っておいて、結局カメラマンになれないでいる自分がすごく恥ずかしくもある。どんな顔であの人の前に立てば良いというのか。
趣味で撮るには、あの人は。あの人はそう。俺には美しすぎるから。
ほぼ、無意識の状態で没頭して、気づけばグラフィックのデザインは出来上がっていた。
考えていたことはほとんど吉名先輩のことだったというのに、どうしてか自分でもものすごく納得のできる作品が出来上がっていた。
これから撮影する瑞稀の写真がここに当てはまったら、きっと完璧だ。そう確信するような。
なんか、やばいな、
何がやばいのか、全く言語化はできないものの、俺は生命本能的なヤバさを感じていた。
「当たり障りない会話。多少聞こえてたろ」
「聞こえてたけどさぁ」
会議室から、自分たちのオフィスのある階までエレベーターで移動中。二人きりになったからか、やたらと間宮が絡んでくる。
「だってさぁ、なんか詠兎の雰囲気がいつもと違うからさぁ。何、ああいうのが好みなん?」
「うん、モロ好み」
到着を告げる音が鳴って、最寄りの階に着いたタイミングで発したその言葉に深い意味はなかった。女子高生がアイドルを追っかけるのと同じような感覚だ。恋愛どうこうとかじゃない。
モロ好みの男に微笑まれて、流し目を喰らったって、別にそれはただそれだけのことで、それだけのことで期待するほど子供じゃない。
エレベーターを降りて、二人きりではなくなったおかげで、間宮がそれ以上絡んでくることはなかった。
自分のデスクに戻り、実際に瑞稀と対面した時に感じたインスピレーションと、今回の作品のコンセプトを再度照らし合わせる。
やりたいように作品を作って良いのは、趣味でやってる奴だけだ。仕事として作品と向き合うならば、クライアントや関係各所のご機嫌が取れるような作品に仕上げるべきだ。
そういうつもりで、今までもこれからも、ひとつひとつの仕事と向き合っていく。
誇れる自分として、今ここに存在する。
どうしてかわからないけれど、そんな自分の信条のようなことを思った時に、ふと吉名先輩のことを思い出した。
またもう一度会えるなら、胸を張れる自分でいたい。先輩の、猫背の背中を思った。
振り返りざまに、気弱で曖昧な笑顔を向けて欲しい。「板崎、なんかかっこよくなったなぁ」って控えめに笑ってほしい。
こんな仕事をしていれば、今までも良い男と出会ったことは山ほどある。
それでも、「良い男ですね」以上の感情を持たずに接していられたのは、どこかでずっと俺を褒めるのは吉名先輩であってほしいと思っていたからのように思う。
そう思う自分がいるのと同時に、あの日「モデルやってください」なんて言っておいて、結局カメラマンになれないでいる自分がすごく恥ずかしくもある。どんな顔であの人の前に立てば良いというのか。
趣味で撮るには、あの人は。あの人はそう。俺には美しすぎるから。
ほぼ、無意識の状態で没頭して、気づけばグラフィックのデザインは出来上がっていた。
考えていたことはほとんど吉名先輩のことだったというのに、どうしてか自分でもものすごく納得のできる作品が出来上がっていた。
これから撮影する瑞稀の写真がここに当てはまったら、きっと完璧だ。そう確信するような。
なんか、やばいな、
何がやばいのか、全く言語化はできないものの、俺は生命本能的なヤバさを感じていた。
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