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四話①
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湯気で煙る浴室内で、ぼーっと天井を見つめている。
珍しくユニットバスに湯を溜めたのだ。単身者用のマンションのユニットバスの広さなんてたかが知れれている。
いくら痩せているとはいえ身長はそれなりにあるため、たっぷりと溜めた湯からも膝小僧が浮き出ている。
ちゃぷん、と天井から滴った水滴が湯船にぶつかって音を立てる。
こんななんでもないような水音でも、多少のヒーリング効果があるのだろうか。ずっと混乱状態にあった頭が少しずつほぐれていくような気がした。
色んなメディアで見ない日は無い、人気のモデル瑞稀が、高校時代の先輩だった。
確かに髪型や洋服の雰囲気は変わっていたし、めちゃくちゃ垢抜けていたけれど、こんなに分からないものなのか。
高校時代の接点といえば、写真部でのやり取りくらい。2学年差で、夏休みに会話をした以来ほとんど会うこともなかった。
けど、あの頃から俺はずっとあの人のことをめちゃくちゃかっこいいって思っていたのに。
紐解いてみると、俺の頭がぐちゃぐちゃになった原因は、悔しさなのかも知れなかった。
吉名先輩がモデルになったことを知らなかった俺。モデルになった吉名先輩と再会しても気づかなかった俺。
「いつか撮らせてくださいね」なんて言っておきながら、カメラマンになっていない俺。
「ださ…」
小さい声でつぶやいた音さえ、浴室では響いた。それが無性に苛立たせて、今度は大声で言った。
「なんだよ瑞稀って!!!先輩の名前は奏真だっただろうが!!名前違って、あんなに垢抜けてたらわかるはずねぇだろうが!!!!」
一息で言い切った時、長時間湯船に浸かっていたせいかクラリとした。
「あー、もう」
このままじゃいけない。まじでのぼせる。そう思ってやっと湯船から出て、体を拭いた。
リビングに移動して、いつもならこのまま缶ビールを開けているところだが、「流石にね」と呟きながらコップに水道水を汲む。
乾いた喉に、水の甘さが染みる。
瞼の裏に、へにゃりと笑った今日の吉名先輩の顔が映る。
その美しさと、懐かしさと、それを見られている恥ずかしさで混乱した俺は、やんわりと掴まれていた腕を乱暴に振り解いて「今日は本当にありがとうございました!!!」と言って、その場を去った。
つまり逃げたのだ。振り返るのも怖くて、控え室の荷物を掴んでそのままスタジオを走り出た。
今になって、あの後先輩がどんな顔をしていたのかを想像すると、胸が痛くなる。
多分、きょとんとして、その後少しだけしゅんとして、でもスタジオを出る時にはいつもの瑞稀の顔に戻ってる。
ありありと、手に取るようにわかってしまうのがまた苦しかった。
「この後の流れは…最悪、もう会わなくても済む…かな?」
PCで社内共有のスケジュールを確認し、少し安心している自分にまた落胆する。
ただただ、懐かしい先輩との再会を喜べたら良かったのに。
そう思って、あぁそれが正解か。とやっと腑に落ちた。たったそれだけのことで良かったのに。
どうして俺は、あんなに取り乱したりしたんだろう。
あんなに…、恥ずかしくて、嬉しくて、頬が熱くなったんだろう。
珍しくユニットバスに湯を溜めたのだ。単身者用のマンションのユニットバスの広さなんてたかが知れれている。
いくら痩せているとはいえ身長はそれなりにあるため、たっぷりと溜めた湯からも膝小僧が浮き出ている。
ちゃぷん、と天井から滴った水滴が湯船にぶつかって音を立てる。
こんななんでもないような水音でも、多少のヒーリング効果があるのだろうか。ずっと混乱状態にあった頭が少しずつほぐれていくような気がした。
色んなメディアで見ない日は無い、人気のモデル瑞稀が、高校時代の先輩だった。
確かに髪型や洋服の雰囲気は変わっていたし、めちゃくちゃ垢抜けていたけれど、こんなに分からないものなのか。
高校時代の接点といえば、写真部でのやり取りくらい。2学年差で、夏休みに会話をした以来ほとんど会うこともなかった。
けど、あの頃から俺はずっとあの人のことをめちゃくちゃかっこいいって思っていたのに。
紐解いてみると、俺の頭がぐちゃぐちゃになった原因は、悔しさなのかも知れなかった。
吉名先輩がモデルになったことを知らなかった俺。モデルになった吉名先輩と再会しても気づかなかった俺。
「いつか撮らせてくださいね」なんて言っておきながら、カメラマンになっていない俺。
「ださ…」
小さい声でつぶやいた音さえ、浴室では響いた。それが無性に苛立たせて、今度は大声で言った。
「なんだよ瑞稀って!!!先輩の名前は奏真だっただろうが!!名前違って、あんなに垢抜けてたらわかるはずねぇだろうが!!!!」
一息で言い切った時、長時間湯船に浸かっていたせいかクラリとした。
「あー、もう」
このままじゃいけない。まじでのぼせる。そう思ってやっと湯船から出て、体を拭いた。
リビングに移動して、いつもならこのまま缶ビールを開けているところだが、「流石にね」と呟きながらコップに水道水を汲む。
乾いた喉に、水の甘さが染みる。
瞼の裏に、へにゃりと笑った今日の吉名先輩の顔が映る。
その美しさと、懐かしさと、それを見られている恥ずかしさで混乱した俺は、やんわりと掴まれていた腕を乱暴に振り解いて「今日は本当にありがとうございました!!!」と言って、その場を去った。
つまり逃げたのだ。振り返るのも怖くて、控え室の荷物を掴んでそのままスタジオを走り出た。
今になって、あの後先輩がどんな顔をしていたのかを想像すると、胸が痛くなる。
多分、きょとんとして、その後少しだけしゅんとして、でもスタジオを出る時にはいつもの瑞稀の顔に戻ってる。
ありありと、手に取るようにわかってしまうのがまた苦しかった。
「この後の流れは…最悪、もう会わなくても済む…かな?」
PCで社内共有のスケジュールを確認し、少し安心している自分にまた落胆する。
ただただ、懐かしい先輩との再会を喜べたら良かったのに。
そう思って、あぁそれが正解か。とやっと腑に落ちた。たったそれだけのことで良かったのに。
どうして俺は、あんなに取り乱したりしたんだろう。
あんなに…、恥ずかしくて、嬉しくて、頬が熱くなったんだろう。
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