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三の罪状

似た者同士

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「ぐおぁっ!?」


――異変。


それは嗚咽と共に時雨の右肩から、突如水道管が破裂したかのように鮮血が吹き上がる光景。


「ぐっ!」


そして今度は逆に時雨が膝を着いていた。


「かすっていた事にも気付いてなかったのか? お前はもう終わってるんだよ……」


膝を着いた時雨の下へ歩み寄り、右手を掲げる雫。


その掌の蒼き輝きこそ今は失われているが、あの一撃は確実に時雨を捉えていたのだ。


「くく、何言ってんだか……これで勝ったつもり? 俺がこの程度の傷で――はっ!」


そう。所詮それは只のかすり傷。


傷の度合いは雫の方が上。だがすぐに彼は気付いてしまった。


この状況の深刻さに――


「ちっ!」


時雨は反射的に己の右肩を確認。やはりというか、その傷痕からは凍結の侵食が始まっている。出血は既に無い。


絶対零度を宿した雫の掌は、例え僅かなかすり傷であっても、そこから凍結が侵食し、やがて全ての細胞が動きを止めていき、死滅崩壊へと誘われる。


止める方法は皆無。あるとすれば実行者の雫のみ。


「お前にそのまま返してやろう。俺に命乞いでもしてみるか? 俺の気が変わるかも知れんぞ」


先程と全く逆の立場となった二人。


雫の嘲笑うかのような表情が、まるでしてやったりだ。


『性格悪っ! いや同レベルだアイツら……』


外野で眺めていたジュウベエの、溜め息に近いぼやき。


二人は全く性格が違う様で、実は最も近しいのでは? と思わずにはいられない。


それは長年連れ添ってきたジュウベエですら見た事の無い、雫の新たな側面を見た気がしたのだ。


「命乞い? くくく、馬鹿かお前は?」


薄笑いを浮かべながら、造作もなく立ち上がった時雨。


完全に先程の焼き直し版だが、状況は少々違う。


時間は待ってはくれない。


刻一刻と凍結は時雨を蝕んでいた。


「俺の特異能……忘れちまったのか?」


それは凍結が侵食する傷口からの異変。


“何だあれは?”


ジュウベエも思わず、その異変に目を見張った。


それは時雨の傷口から、何かが盛り上がるかの様に蠢いているのを。


そして――


“ブシュッ”


傷痕から勢いよく鮮血が吹き上がった。


「んなっ!?」


それが何を意味していたのか、ジュウベエには理解出来ない。


まるで自滅。血を流し過ぎたのか、時雨の右肩からは夥しいまでの血液が流出していた。


「俺の特異能で死海血を強制的にそこだけ排出させれば、少なくとも他の細胞が凍る事は無ぇ。俺に絶対零度は通用しねぇよ」


彼は何事もなく、当然の様にそう宣言。


つまり時雨は凍結が全体を侵食する前に、その傷口の部分だけを血液ごと外部へ排出したのだ。


自らの痛みをもいとわぬ覚悟、それを平然と。


云わば肉体の一部を抉り取ったのだから、ダメージも相当なものだろう。


「それにしてもやってくれんじゃねぇか……。久々に本気でぶっ殺したくなってきたぜ!」


それでも時雨のやる気は少しも削がれてはいない。それ処か、ますます高まってさえいた。


「奇遇だな……俺もだよ。次は心臓を狙う。これなら排出しようもあるまい」


それは雫もまた同じ。再び宿る蒼き輝きはその顕れか?


『てかまだやる気かよ!?』


呆れ返るジュウベエを余所に、二人は更なる境地へ――
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