雫 -SIZUKU- 最終特異少年戦記~破

ユキナ

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第5章 阿鼻叫喚~ 辺獄空間の死闘

九話 鏡花水月

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終幕の刻ーーシグレはふと背後に気配を感じ、振り返った。


「なっ! そんな馬鹿な!?」


シグレは驚愕の声を上げる。何故なら、自分の目の前で木っ端微塵になった筈のユキが、何事も無かったかの様に佇んでいたのだから。


シグレは先程の遺骸に目を向けるが。


“――な……何だと!?”


其処には遺骸は無く、氷の欠片が散らばっているだけだった。


「星霜剣 幻氷界ーー“鏡花水月”」


そう呟くユキへ、シグレは振り向き様に刀を振るう。


“――手応え有り!”


確かに刀はユキを捉え、斬る感触まで伝わってきたのだが、それすらも氷の欠片へと姿を変える。


「無駄ですよ」


シグレの周りには幾多ものユキその者が、取り囲んでいた。


「なっ!?」


流石にシグレも、この異様な光景に戸惑いを隠せない。


「「水面に映る月が決して掴めぬ様に、この鏡花水月の前で私の実体を捉える事は出来ません」」


シグレを取り囲む多数のユキが語るそれは、各々の声が鏡面反射の様に、綺麗に重なり合い聞こえてくるのであった。


「ならば全てぶち壊してくれるわ!」


シグレは周りを囲む無数のユキへ、我武者羅に刀を振り回す。


“――どれだ? どれが本体だ!?”


一つ、また一つと無数のユキを斬り崩していくが、その全てが氷の虚像。


「「言ったでしょう? 捉える事は出来ないと」」


氷の虚像から、ユキの声が多重に聴こえてくる。


「舐めるなぁ!!」


“水刃 煉懐壁ーー”


シグレの村雨から全方位に放たれる水の刃が、取り囲む全ての虚像を斬り崩し、その全てが氷の粒子となって霧散していった。


「これならどうだ? ーーはっ!?」


シグレは即座に違和感に気付く。その氷の粒子が青白い形となって、シグレの周りに漂っているのを。


“――雪? これは……しまっ!!”


シグレがそれに気付いた時には、既にその青白い雪が自身を包み込む様に拡大、凍結していった。


「ぐあぁぁぁぁ!!」


その身体が瞬時に青白い冷気で凍結していき、シグレは絶叫する。


“絶対零度ーー終焉雪”


ユキの特異能ーー“無氷”に於ける最大顕現、絶対零度。


「絶対零度に散れ」


何時の間にか彼本人が、凍りつくシグレの背後で振り返る事無く、そう呟いていた。
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