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お忍びデート
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しおりを挟む「こんにちは」
奥から、店主らしき老人が出て来ると、ロティシュを見てにこやかに笑う。
「おぉ、殿下……孫娘からは連絡入っておりましたわ………加工で?」
「そうなんだ、これを指輪とイヤリングにしてくれ」
そう言うと、無造作にカウンターに転がす、ロティシュの宝石。美しい虹色の様だが、白銀にも光る不思議な色だ。
「また素晴らしい色で………殿下の宝石はマシュリー様以上ですな」
「………母上は生粋のツェツェリア族のだ……俺はモルディアの血も入っているから、こうなんだろう…………調べようとは思ってないが……」
「混血ですからな………あ、そうそう……陛下にこれをお渡ししといて下さい……マシュリー様の宝石をまた集められたとかで、ネックレスと指輪を頼まれておりまして」
店主がそう言うと、また素晴らしいネックレスと指輪が輝く箱を出した。
「分かった………じゃあ後から受け取ろう………俺のと一緒に………あと指輪のサイズは……………この指のサイズを」
「…………え!?」
ロティシュはアリエスの左手を店主に見せる。
「…………おや、お嬢さんもツェツェリア族かい………しかも珍しいオッドアイだ……綺麗な宝石を出しそうだ……」
「わ、私の母がツェツェリア族で……」
「………あぁ、エリスの娘か……俺の孫娘がエリスとマシュリー様の侍女でね……エリスの娘かい?」
「は、はい」
「そうかい………殿下、どの指のサイズに作る?」
「………く…………こ、小指でいい」
ロティシュは薬指と言い掛け、小指にと言い直す。だが、ロティシュの宝石を見た店主は、アリエスの手を見比べ、首を振った。
「殿下………この子の指と殿下の宝石を合わせるなら、薬指か中指ですよ」
「………じゃ、じゃあ薬指で作ってくれ」
「ロティ様、私要りません!」
「!!………だ、誰がお前にやるんじゃ……」
「違うんかい?」
「い、一応………しょ、将来の嫁用に……一般的なサイズかと………」
「…………う~ん、まぁ細い指ではあるが、サイズは直せるから、お嬢さん用に合わせるか………任せてくれ、15年以上の常連だからな…………今から作ると夕方になるが」
「いい、夕方に取りに来る」
「楽しみにしてくれ」
店を出ると、ロティシュは再びアリエスの手を取り、歩き始める。
「ロティ様、次は何方へ?」
「…………花宿」
「え!!」
「………抱きたい、て言ったろ?」
花宿とは、旅行で立ち寄る宿ではない。結婚前に独身の男女が房事する宿だ。途端に顔を赤らめ、ロティシュもアリエスも手が汗ばみ、繋がる手に熱が篭もる。
ツェツェリア自治区の花宿に着くと、ロティシュは宿の店主に話をする。
「…………泊まりではなく、休憩で」
「はいよ…………3時間ね」
「…………」
「行くぞ」
「……………あっ……」
再びロティシュに手を引っ張られ、鍵の部屋番号へ行く。ロティシュが鍵を開け部屋にアリエスを先に入る様に促され、アリエスは入る。大きなベッドがあるだけの部屋に、小さな洗面付の風呂場とトイレがあるぐらい。
「…………アリエス……今日は全部見たい」
「え!む、無理です!!」
「俺も脱ぐ」
「…………は、恥ずかし………から……」
「帰りの為に脱いだ方がいいんじゃないか?」
「…………シ、シなきゃいいの………では?」
「抱きたい、て言ったろ?………最後迄はしないけど」
本当はシたいが、ロティシュは耐える。せめて、ギリギリ迄はアリエスを味わいたかった。
「……………わ、分かりました……」
だが、ロティシュもアリエスも服を脱ぐ手が震える。お互い緊張しているのだと知ると、ロティシュはアリエスを抱き締めた。
「脱がそうか?」
「………ど、どっちも……恥ずかしいです……」
「始めたら、気にならなくなる」
「ロティ様はそうかもしれないですけど………っと………うわっ!」
「ブッ………色気ねぇ倒れ方……」
ロティシュがアリエスを抱き締めつつ、ベッドへと誘う様に移動し、押し倒したのだ。
「び、びっくりしたんです!ベッドがある方だとは………思わなか………んっ……」
会話を止めたかったロティシュは、アリエスの口を唇で塞いでしまう。何度かキスをしてはいるが、ロティシュのキスの経験値の高さに、アリエスは翻弄された。
「…………もう、黙れよ………ちょっと限界なんだ……」
「………は、は………い……」
トロン、としたアリエスの表情にクラクラするロティシュは、照れ隠しからかアリエスから目線を外し顔を赤らめていた。だが、それは、アリエスにも照れが伝わる程だった。
「か、勘違いするから、その表情止めて下さいよ!」
「…………勘違い?」
「そうですよ!………ロティ様が………私……を…………………何でもない………です……」
「言いかけたら言えよ」
「言いません!何でもないんですから!」
「…………あ、そ………じゃ、見せなきゃいいんだろ?…………なら、目隠しさせろ」
「…………え!!」
「いちいち、驚き過ぎなんだよ!お前は………何か知らないが、俺の顔で勘違いするなら、見なきゃいいんだろ?………確かハンカチが…………」
もし、この時の勘違いを話していたら、今後起こっていく事を回避出来た筈なのだが、まだ若過ぎて性急してしまったロティシュにハンカチをポケットから出さへ、アリエスの目を隠させてしまった。
「た、確かに………見れなくなりましたけど………ひやぁ!」
「いちいち、煩いなぁ………愛撫の1つ1つでびっくりする声を出すなよ…………せめて喘ぎ声に変えてくれ………」
おかげで、勘違いをスルーしてしまう。
耳たぶを甘噛みされたアリエス。
「み、耳………びっくりして……」
「面白いなぁ………弱いか確かめさせろ」
目隠しをされたらされたで、ロティシュがどう動くか分からないので、アリエスの反応が面白くなり、耳の愛撫を続行された。
「っ………んっ……」
アリエスの耳に舌をねじ込ませるロティシュ。逆の耳は、手で耳たぶを揉んでいる。気が付けば、アリエスのワンピースの胸のリボンを解かれ、胸元の谷間がロティシュの視界に入る。
「胸デカくしたいなら協力してやるけど、如何する?」
「…………ロ……ティ……様が………好みの…方…………で……」
「………っ!」
ロティシュの顔は益々赤くなるのだが、アリエスは目隠しの為、分かる筈も無い。言い換えれば、『ロティシュの好みの女にすればいい』と言っている様なものだからだ。
「じゃあ、今日は声を我慢しなくていいからな………好きなだけ喘ぎ声を聞かせろ」
「………わ……分かりませんよ!………だって………私に経験なんてないんですから………」
「委ねればいい……」
「んっ……」
ロティシュは耳の愛撫を止め、アリエスの唇を貪った。
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