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誤解と喧嘩からの通じ合い
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しおりを挟む「じゃ、そういう事だ。マシュリー、マーク、エリス行くぞ」
「はい、ルカス様」
ルカスはマシュリーを連れ、薔薇の間の前から離れようとしている。
「父上?…………えっと……俺はこのままアリエスを連れ込んじゃいますよ?」
アリエスの名がルカスから出なかったのだ。ロティシュも疑問が出たのだろう。
「あら、良いの?アリエスをモルディア公爵家に帰らせて」
「え!」
「ロティシュ、今日は許す………良いだろ?マーク、エリス」
「……………ルカス様のお子ですよ?反対した所で、姑息な手を使う気になられるでしょうからね………明日のアリエスの城下街視察はシュナク殿下が同行するのですから、程々にして下さいよ?ロティ様」
「アリエス、避妊薬飲みなさいよ」
「明日からアリエスの部屋は百合の間を使いなさいね。以前からエリスと百合の間をアリエス好みにしていたのだから」
「……………え!こ、皇妃様?」
アリエスには決して入らせなかった百合の間。
幼かった頃、マシュリーが使用していた部屋ではあったが、ルカスが皇帝になった事で、ロティシュが薔薇の間を使う事になり、ずっと使われてこなかった部屋だ。
いつしか、アリエスがロティシュと身体の関係になった頃辺りから、アリエスは百合の間に掃除する事もさせてくれなくなっていて、その理由もエリスから、ロティシュの妃が使う部屋をアリエスは見たくないだろう、と話しアリエスの気持ちを汲んでくれていた、と思っていた。
それが、もうその部屋はロティシュと婚約出来たアリエスの部屋となる。
アリエスにとって、憧れの部屋だったのだ。
「アリエスのドレスや愛用品、公爵屋敷の物と揃えてあるのよ?…………もう、2人共頑固だからいつ使ってくれるのか、とハラハラしましたね、マシュリー様」
「本当ね………ロティ、アリエスを抱き潰さない様にね」
「今日は仕方ないんじゃないか?」
「止めて下さいよ、ロティ様を煽るのは」
「あ、そうそう………薔薇の間に軽食や果物も運ばせておいたからな………アリエスの誕生日も祝ってやれ、ロティ」
親達4人は、本当にアリエスとロティシュの恋路を幼い時から見守ってきていて、ハラハラさせられた事だろう。
久々に晴れやかな顔になり、部屋から離れて行ってしまった。
「「……………」」
緊張しっぱなしだったアリエスとロティシュだったのに、顔を見合わせると一気に安堵感が走る。
「プッ…………」
「……………はははっ!………参った………敵わないな、父上達には………」
「私…………憧れです………陛下と皇妃様、私の両親の様な夫婦………」
「俺もだよ………あぁ……安心したら腹減った………食おうか、アリエス」
「はい!」
アリエスはロティシュに手を取られ、薔薇の間の扉を開けるが、薔薇の間のソファでその軽食を摘む、ザナンザとイリーサが手を振り待ち構えていた。
「やっと終わった~!」
「隠れて待ってたら、軽食運ばれて来たからさ、先にヤってるよ、兄上」
「何でお前達居るんだよ!」
「わたくし達だって、アリエスにお祝いしたいですわ」
「そうだよ!俺は失恋したんだから慰めてよ!」
「いつから居たって?此処に」
「夜会終わって直ぐ?百合の間に隠れてたんだけど、父上達が来たから、話も聞こえてた」
「あぁあ………わたくし、アリエスとエリスが侍女辞めるのは悲しいわ………」
「イリーサ様…………」
目の前でバクバク食べられ、ほぼ無くなっているだろう料理。
ロティシュは来賓の相手ばかりで何も口にしてはいないのだ。安心した束の間、空腹過ぎて苛立ってくる。
「出てけ~!」
「え~!わたくしだって、アリエスのお誕生日お祝いしたいのよ!」
「俺だって!」
「そこ迄だ!」
「「「「!」」」」
薔薇の間に突如現れた、ルカスの精神。
「ち、父上………」
「ザナンザ、イリーサ………部屋に戻りなさい」
「え~!お父様酷い!」
「父上!またソレして!いい加減教えて下さいよ!やり方!」
「あ、ズルい!ザナンザお兄様!わたくしも!」
「抜け駆けするな!ザナンザ!イリーサ!俺も知りたいんだぞ!」
「お前達に教えなきゃいかない事はまだ山の様にある!いいから、今はロティとアリエスを2人にさせろ!」
「「…………は~い」」
折角仲直りさせられたのに、4人で騒いだら2人の時間が無くなると、ルカスは気を効かせたつもりなのだろう。
ザナンザとイリーサも分かるのだが、興味が勝ち薔薇の間に来てしまった様だ。
「……………全く……じゃあな、無理させるなよ、ロティ」
「……………あ、はい……」
またルカスの精神がスッと消えたのを見ると、力の差が歴然と違う事にアリエスも驚きを隠せない。
「す、凄いですね………お父様からは聞いたんですけど、身体は死人の様になられて、かなり神力を消費されるそうで、お父様も試したけれど全く出来なかったそうなんです」
「……………お、俺も絶対に身につけてやる!見せてやるからな!」
「そこ迄は望んでないですよ、私」
「望めよ!俺が父上より劣ってるみたいだろ!」
「みたい、じゃなくて、そうじゃないですか。勉強サボってましたよね?」
「ゔっ…………」
「食べません?ロティ様、全く食べてませんでしたよね」
「……………あぁ、腹減ったよ……だが………食いもんより、アリエスが欲しい!」
「っきゃっ!」
空腹だった筈なのに、アリエスを抱き上げたロティシュにベッド迄運ばれてしまうと、アリエスはロティシュにドレスの裾を捲り上げられた。
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