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口づけ(口移し)と混浴風呂

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 入浴を済ませると、また敷布が変えられたベッドに乗せられた蝶子。タオルを頭から掛けられ、髪も拭く月夜。これでは、蝶子がメイドとして来た意味もない。その覚悟で来たのに、実家のメイド達より、いたれりつくせりの扱いに戸惑っていた。

「乾いたな………もう夜だ……今日は寝ろ……明日からはもう少し調教時間を増やしていくからな」
「…………わ、私は……いつその主人と会うのですか?………ここに来た時に会った家令らしき人は……」
「あの男は主人の執事だ。俺達はただの竿として雇われただけ」
「………竿師?」
「………………娼婦の教育係と思え………純血を奪い、男を喜ばせる為に調教する」
「……………そ、そんな仕事が………」

 蝶子の知らない仕事だった。女を抱く仕事等、男娼だけではないのか、と思っていたのだ。好きでもない女を抱いても心は痛まないのだろうか。

「………好きで……この仕事を……?」
「……………っ……さぁな………話は終わりだ、寝るぞ」

 蝶子は倒され毛布が掛けられる。そして、月夜に抱き締められたのだ。

「!!………抱き締められたら眠れません!」
「…………これも、主人の添い寝に必要だ……夜伽の後は、主人が寝るのを見守って、明け方部屋に帰る………慣れろ」
「…………そ、そんな……」

 だが、月夜の温もりは、安心感がありいろいろあったこの日、疲れたのか直ぐに眠ってしまった蝶子。

「…………蝶子………」
「…………」

 静かに寝息を立てているのを確認した月夜。額に口づけを落とすと、そっと離れ部屋を出た。

「宜しいのですか?」
「…………新月……三日月か」
「蝶子を助ける為だ」
「ですが、権藤にもし蝶子様が奪われては……」
「では、如何すれば良かった?………高蔵寺家では蝶子を助けられない」

 真剣な眼差しで、月夜を心配そうに見つめる新月と三日月。三日月は、悔しそうに月夜に進言する。

「俺達は…………蝶子様の玉体を見ているのですよ?」
「そうですよ……貴方様の前で………しかも愛撫迄………」
「………くっ…………俺だって嫌だ!!………もっと早く気付いてさえすれば……」
「申し訳ありません………我等隠密の不徳のいたす所で………」
「光月は今潜入か?」
「はい」
「……………報告を待つ……俺はもう少ししたら、家に帰らなきゃならん……父上にも報告しなければならないしな」
「では、お留守の時は、我々が蝶子様のお側に」
「…………頼む………仕度して来る………権藤が接触してきたら、適当に流しとけ」
「「御意」」

 月夜は隣室に入り、使用人の様な服を着ると、窓から縄を使い外に出た。

「…………見張り、手薄にしました」
「満月……助かる」
「お礼なんて要りませんよ」
「車は?」
「…………1区先に、時雨が待機してますよ」
「……分かった………蝶子を頼んだぞ……1、2時間程で戻る。」
「御意………お気を付けて」

 月夜に紛れ、月夜は待機している車に乗り込むと、闇夜に消えた。

      ❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈❈

 翌朝。蝶子は1人のベッドで目が覚める。

「月夜さん?…………誰も居ない?」
「…………居るぜ」
「……新月さん?」

 部屋の隅に居たのだろう、ベッドの方へ来る2つの足音。他に誰が居るかは分からない。

「俺も居る」
「…………三日月……さんですか?」
「………あぁ」
「月夜さんは?」
「月夜は所用で居ない………夕方には来るだろう」

 新月は月夜の居ない理由を言った。昨夜、一度戻って来たが、蝶子の顔を見てまた直ぐに出て行った事は説明はしなかった。

「そうですか…………あの……昨日の様な事をするんでしょうか?」
「望むなら今からでも良いけど?」
「!!…………い、いえ!」
「…………食事にしようか」
「…………あ、あの……お手水に………」
「「…………」」

 新月と三日月は顔を見合わせると、新月が口を開いた。

「昨日、如何した?」
「…………月夜さんに連れてってもらいました………入浴も……」
「……………了解」

 新月が蝶子の手を持つと、手水に連れて行くが、まだ慣れていない場所と目隠しで不慣れな為、蝶子はなかなか用を足せない。

「如何した?」
「ば、場所がよく分からなくて……月夜さんは誘導してくれた……ので………」
「!!…………あ、あぁ……そうだったんだ……えっと………上に立たせれば?」
「…………は、はい………目隠しを取って頂ければ、出来るんです!!」
「そ、それは外せねぇよ………鍵は月夜が持ってる」
「……………そうですか……あ、あの……誘導を………」

 もじもじと恥ずかしそうにする蝶子を見て、新月は慌てて誘導し、見ないように蝶子を視界から外す。三日月も同じだ。

「あ、あの………紙を………場所分からなくて………」
「!!…………あ、あぁ……待ってろ」
「………ありがとうございます」

 全裸にされている蝶子だが、礼儀正しい言葉遣いを崩さない。恥ずかしそうに胸や秘部は隠そうとはしているが、手水や入浴は隠すのは無理だと、昨夜知ってしまったから、その場に居る者に頼むしかないのだ。

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