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11 *レイノルズside
しおりを挟むまだまだ分厚いサブリナからの手紙。レイノルズが玉座に座る国王の横に積み重ねられている紙の山が手紙と言うのならば、手紙なのだろう。
国王と王妃は睡眠時間を削って迄読んだのか、目の下にはクマが出来ている。
「こんなに、冷静に判断し、貯めに貯めた証拠と証言が、余にはどんなに悲しいか分かるか、レイノルズ」
「そ、そんな事俺の責任ではありません!サブリナが王太子妃に固執したからではないですか!」
「馬鹿者!」
「っ!」
「固執させたのは、余だ!其方にはしっかりした賢い令嬢が伴侶にならねば、其方の為にならぬ、と思ったからではないか!捻くれて、サブリナを見ようとせず、他の女に靡きおって!」
サブリナは王太子妃になりたい、とは思ってはいなかった。
賢いから、と国王と王妃が懇願して成立させた縁。それを捻くれた目でレイノルズがサブリナを見たから、見続けたから、サブリナは逃げたのだ。
「…………こんな事なら、サブリナの言葉を親身に聞いておけば良かった………サブリナが出来が良過ぎ、他の令嬢をレイノルズに充てがう等、考えたくもなかったからな………」
素質ある令嬢を手放したくなくて、追い詰めたのは国王も一緒だった。
損害は大きい。
しかし、これからもっと大きくなるのを防ぐ為に、レイノルズには頑張って貰わないとならない。
「あんな何処にでも居そうな女………顔は良かったが、性格悪い女等………俺にはミューゼが居ますからそれで良いでしょう?」
「分かっておらんではないか!」
「っ!」
「良いか!レイノルズ!今日からパサ宮殿には帰宅を許さん!朝から晩迄、仕事詰めの毎日だと思え!サブリナが居ない今、王太子の仕事を真面目にやるのだ!」
「え~…………秘書官に任せれば良いのに………」
「馬鹿者!」
何処をどう育て方を間違ったのか、とこれ程後悔した事は無いだろう国王。
教育はしてきた筈なのだが、サブリナを婚約者として迎えた頃から、レイノルズの反抗心が芽生えて今に至った。サブリナへの劣等感から、真面目でいたくない、とでも言うかの如く。
「サブリナは探す!それ迄は1人で王太子の仕事を熟せ!良いな!」
「で、ではミューゼと一緒に………サブリナは探さなくても良いで………」
「未亡人は忘れろ!あの女は罪人の嫌疑が掛かっておる、と言うておろう!それでも罪がないなら、僻地に飛ばす!」
「そ、そんな!ミューゼと再婚したいんですよ!俺は!」
「許さん!…………衛兵!王太子を執務室に閉じ込めよ!今日の分を終える迄、休ませるな!」
「ち、父上!………は、離せ!おい!」
レイノルズは執務室に閉じ込まれたが、それで仕事をするのかは分からない。
玉座に残っていた国王は、サブリナからの手紙の束を手に取り、再び溜息を漏らす。
見れば見る程頭を抱えそうな問題が山積みなのだ。
レイノルズが裁可した事業を見ると、欠陥工事の結果報告や、冤罪の罪で投獄した民衆リスト、収支の計算ミスの見落とし等、種類様々。
此等は、サブリナに丸投げする前の事で、サブリナが修正し、事無きを得た事例もあるのだが、比較した結果さえ事細かく知らせてくれていた。
「逃した魚は大きい、とはこの事だな………」
「レイノルズの妃になってくれて、安心してましたしね………娘がわたくし達には居ませんでしたから、サブリナは本当の娘の様に見ておりましたのに………陛下、離縁の承認どうなさるおつもりですの?」
「…………心情は離縁はさせたくないが、サブリナはもう帰るつもりは無い、と申しておるしな………国外逃亡等、罪に問う事も出来るが、そうなるとサブリナが罪人になってしまうだろう……」
「それも見越して、亡命をするなんて、本当に出来た娘ですわ」
「……………レイノルズめ……何故、あの娘の価値が分からないのか……」
この日の午後には、レイノルズが不貞をした、と広まっていた。
外面が良いレイノルズを擁護する声は多く、サブリナへは批難の声が飛び交った。
同情されるレイノルズはまた高飛車にはなってはいたが、その後レイノルズの仕事の失敗談が漏れ始める事になる。
レイノルズが着工をさせ、工事を進めさせていた河に掛かる橋の工事が欠陥工事だったのだ。
材料費や材質も、レイノルズの判断で決められた工事は、手抜き工事になり完成したばかりの橋が崩れ、大事故になったのだ。
負傷者も出て、死者も確認出来たこの橋の崩落事故は、勿論責任追及されていく。
そう、レイノルズが材質を安価な物にし、材料費をケチり、忙した工事に責任者であったレイノルズに向け、批難を浴びせられていく。
サブリナが気が付いた時、レイノルズに追及したが、サブリナの言葉はレイノルズに届いた試しがなく、工事の取り止めも促していたものの、それも聞き入れなかったので、それでも秘書官を通し、今からでも補強を、と指示はしてたが、補強工事を依頼するには遅すぎた工事だったのだ。
大半が出来上がっていて、支えの土台から崩れていく程脆かった様だ。
事故ではない。寧ろ人災だった、レイノルズの仕事の結果だった。
サブリナが補強させた場所は壊れる事もないまま、壊れた橋は残っていた。
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