拝啓、殿下♡私を追い出して頂いて感謝致します【完結】

Lynx🐈‍⬛

文字の大きさ
12 / 38

11 *レイノルズside

しおりを挟む

 まだまだ分厚いサブリナからの。レイノルズが玉座に座る国王の横に積み重ねられている紙の山がと言うのならば、手紙なのだろう。
 国王と王妃は睡眠時間を削って迄読んだのか、目の下にはクマが出来ている。

「こんなに、冷静に判断し、貯めに貯めた証拠と証言が、余にはどんなに悲しいか分かるか、レイノルズ」
「そ、そんな事俺の責任ではありません!サブリナが王太子妃に固執したからではないですか!」
「馬鹿者!」
「っ!」
「固執させたのは、余だ!其方にはしっかりした賢い令嬢が伴侶にならねば、其方の為にならぬ、と思ったからではないか!捻くれて、サブリナを見ようとせず、他の女に靡きおって!」

 サブリナは王太子妃になりたい、とは思ってはいなかった。
 賢いから、と国王と王妃が懇願して成立させた縁。それを捻くれた目でレイノルズがサブリナを見たから、見続けたから、サブリナは逃げたのだ。
 
「…………こんな事なら、サブリナの言葉を親身に聞いておけば良かった………サブリナが出来が良過ぎ、他の令嬢をレイノルズに充てがう等、考えたくもなかったからな………」

 素質ある令嬢を手放したくなくて、追い詰めたのは国王も一緒だった。
 損害は大きい。
 しかし、これからもっと大きくなるのを防ぐ為に、レイノルズには頑張って貰わないとならない。

「あんな何処にでも居そうな女………顔は良かったが、性格悪い女等………俺にはミューゼが居ますからそれで良いでしょう?」
「分かっておらんではないか!」
「っ!」
「良いか!レイノルズ!今日からパサ宮殿には帰宅を許さん!朝から晩迄、仕事詰めの毎日だと思え!サブリナが居ない今、王太子の仕事を真面目にやるのだ!」
「え~…………秘書官に任せれば良いのに………」
「馬鹿者!」

 何処をどう育て方を間違ったのか、とこれ程後悔した事は無いだろう国王。
 教育はしてきた筈なのだが、サブリナを婚約者として迎えた頃から、レイノルズの反抗心が芽生えて今に至った。サブリナへの劣等感から、真面目でいたくない、とでも言うかの如く。

「サブリナは探す!それ迄は1人で王太子の仕事を熟せ!良いな!」
「で、ではミューゼと一緒に………サブリナは探さなくても良いで………」
「未亡人は忘れろ!あの女は罪人の嫌疑が掛かっておる、と言うておろう!それでも罪がないなら、僻地に飛ばす!」
「そ、そんな!ミューゼと再婚したいんですよ!俺は!」
「許さん!…………衛兵!王太子を執務室に閉じ込めよ!今日の分を終える迄、休ませるな!」
「ち、父上!………は、離せ!おい!」

 レイノルズは執務室に閉じ込まれたが、それで仕事をするのかは分からない。
 玉座に残っていた国王は、サブリナからの手紙の束を手に取り、再び溜息を漏らす。
 見れば見る程頭を抱えそうな問題が山積みなのだ。
 レイノルズが裁可した事業を見ると、欠陥工事の結果報告や、冤罪の罪で投獄した民衆リスト、収支の計算ミスの見落とし等、種類様々。
 此等は、サブリナに丸投げする前の事で、サブリナが修正し、事無きを得た事例もあるのだが、比較した結果さえ事細かく知らせてくれていた。

「逃した魚は大きい、とはこの事だな………」
「レイノルズの妃になってくれて、安心してましたしね………娘がわたくし達には居ませんでしたから、サブリナは本当の娘の様に見ておりましたのに………陛下、離縁の承認どうなさるおつもりですの?」
「…………心情は離縁はさせたくないが、サブリナはもう帰るつもりは無い、と申しておるしな………国外逃亡等、罪に問う事も出来るが、そうなるとサブリナが罪人になってしまうだろう……」
「それも見越して、亡命をするなんて、本当に出来た娘ですわ」
「……………レイノルズめ……何故、あの娘の価値が分からないのか……」

 この日の午後には、レイノルズが不貞をした、と広まっていた。
 外面が良いレイノルズを擁護する声は多く、サブリナへは批難の声が飛び交った。
 同情されるレイノルズはまた高飛車にはなってはいたが、その後レイノルズの仕事の失敗談が漏れ始める事になる。
 レイノルズが着工をさせ、工事を進めさせていた河に掛かる橋の工事が欠陥工事だったのだ。
 材料費や材質も、レイノルズの判断で決められた工事は、手抜き工事になり完成したばかりの橋が崩れ、大事故になったのだ。
 負傷者も出て、死者も確認出来たこの橋の崩落事故は、勿論責任追及されていく。
 そう、レイノルズが材質を安価な物にし、材料費をケチり、忙した工事に責任者であったレイノルズに向け、批難を浴びせられていく。
 サブリナが気が付いた時、レイノルズに追及したが、サブリナの言葉はレイノルズに届いた試しがなく、工事の取り止めも促していたものの、それも聞き入れなかったので、それでも秘書官を通し、今からでも補強を、と指示はしてたが、補強工事を依頼するには遅すぎた工事だったのだ。
 大半が出来上がっていて、支えの土台から崩れていく程脆かった様だ。
 事故ではない。寧ろ人災だった、レイノルズの仕事の結果だった。
 サブリナが補強させた場所は壊れる事もないまま、壊れた橋は残っていた。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です

ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」 「では、契約結婚といたしましょう」 そうして今の夫と結婚したシドローネ。 夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。 彼には愛するひとがいる。 それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?

処理中です...