惚れた男は根暗で陰気な同僚でした【完結】

Lynx🐈‍⬛

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根暗陰気同僚が押し掛けて

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 茉穂の住むマンションはオートロック付きの1LDKのマンションだ。家賃は割高だが、オートロック付きのマンションに住みたかった茉穂がかなり切り詰めて生活していた。
 彬良が来た事は無かったのだが、先日彬良が茉穂に出した条件により、ある日の休日、彬良が荷物をまとめて茉穂のマンションに押し掛けて来たのだ。

「荷物、これで全部?もっとあったよね?」
「デカイ家具や家電は処分した……要らねぇしな」
「本当にいいの?引っ越してきて」
「最近、部屋探してたからな………茉穂ん所のマンションの立地や家賃考えたら、同棲も悪くないだろ」

 彬良が住んでいたマンションは治安はあまり良くなく、茉穂が彬良のマンションに1人で来る時は心配だったらしい彬良。それにより、引っ越し先を探していたという。
 条件として、彬良は茉穂に同棲をするのを切り出した所、マンションの契約更新をしたばかりだった茉穂は勿体無いと断った。
 それなら、と彬良は茉穂の家賃、光熱費負担もするから一緒に住まわせろ、と転がり込んだのだ。

「たまに、様子を見に両親や弟来るけど、急過ぎて何も言えてないのに……」
「弟居たのか」
「うん、大学院生……最近は両親より弟が来る事多いけど」
「次来るのは?」
「分かんない……急に来るから………連絡あってその当日や翌日」
「迷惑な弟だな」
「彬良が言う?………私はもう少し時間頂戴、て言ってたよね?」

 茉穂は返事を先延ばしにしていたのだ。彬良と同棲は不満は無いが、両親の了承無しに同棲はしたくなかったのだ。

「もう、あっちは解約したからな……ま、来ても、『引っ越し先決まる迄』とか適当に言っとけよ」
「そうはいかないよ………年齢的にさ……両親は古い考え持ってる人だから、ケジメつけなさい、て言われるだろうし………弟や両親来る日は、悪いけど泊まる場所確保してね?」
「交際と同棲を認めて貰えばいいじゃねぇか」
「『一緒に住んでます』で『認めて下さい』?………両親はそれ認めないと思うよ……だから、居る時に両親や弟が来たら、先ずは交際を認めて貰ってから、暫くして『同棲したい』て私が両親に言うから」
「………面倒くさいな……仕方ないが、茉穂に関わる事だから従うか……」
「だから、返事は待ってて、て言ったのよ」

 彬良の荷物が持ち込まれても、部屋の雰囲気が変わる事は無く、茉穂は少しホッとする。家族が来て勘繰られないだろうとの事だ。

「ここ、航ん家と近いんだな」
「そうなの?」
「あぁ……ここから歩いて行けるぜ?」
「行けないかな……食べてみたいけど割烹料理なんだよね?……高そう………」
「行くか?今夜………奢ってやるから金の心配はするな………航に連絡するから、来てもいい、て言ったらな」

 彬良はポケットからスマートフォンを取り出し、航に連絡を入れる。

「航?彬良だけど」

 電話越しに、航の声が聞こえる。少し難色を示した様な航の声。

 ―――今日、土曜だったけど……航さんの妹は彬良の元カノ……居るんじゃ……

「もう気にするんじゃねぇよ、蒸し返すな航!………とにかく彼女連れて行きてぇから、席取っとけ!」

 何故か喧嘩っぽい会話になる彬良や彬良の友人達。電話を切った彬良は、心配そうに見る茉穂の頭を撫でる。

「開店する時間に合わせて準備するぞ」
「行けるの?」
「いいってさ」
「やった!美味しかったから楽しみ」
「まだ、数時間あるな………」

 ちょっと敷居が高そうな店に行けるとあって、茉穂は寝室で着ていく服を選ぼうと、向かう後ろを彬良は付いて行く。

「何?」
「昨日、抱いてないし今日から寝るベッドの寝心地の確認を」
「シないよ!」
「何でだよ!」
「生理中」
「…………何だと!」
「残念でした~」
「…………終わったら抱き潰し決定」
「……………いつもじゃん」
「知らね」
 
 茉穂は服を選び、不貞腐れTVをぼんやり見ている彬良の横に座る。

「後で、口でシてあげる」
「………突っ込みたくなるからいい……終わったらシてくれよ」

 肩を抱き寄せられ、茉穂の額にキスを贈り、彬良はTVをまた見始めた。

 ―――あ……なんか、こういうのいいな……

 茉穂が彬良と付き合って、こんなにのんびりとした時間は初めてかもしれない。彬良の家に行くと、セックスする時間が長過ぎて、何気なくTVを見る時間さえ無かったのだ。これから毎日、こんな時間があればいいな、と思っていた茉穂。

「たまには、何するでもなくTV見てんのもいいな」
「…………プッ……」
「何だよ」
「同じ事思ってたから笑っただけ」

 彬良に髪を指で漉かれ、甘ったるい空気になるが、彬良からキスされる事もなく、再びTVに向いた彬良。

「ま……セックスばっかだったしな、俺の家じゃ……俺は居候になるし、家主の茉穂が嫌だったら自制するしかねぇよ……追い出されたら、今は住む場所ねぇしな」
「私、彬良に甘えそうだな……家賃や光熱費折半してくれると……贅沢しそう」
「なら、その分貯めとけよ……俺もその分貯めとく………で、貯まったら旅行とか、贅沢な飯とか食おうぜ」
「いいね、それ……旅行行きたい!」
「決まりだな」

 それから、同棲をするにあたり、生活の為にルールを決めた。あっという間に時間になってしまい、話はまた後にする事にして、着替えて菜穂と彬良は、航の店に向かうのだった。
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