暗闇の麗しき世界へ【完結】

Lynx🐈‍⬛

文字の大きさ
10 / 45

9

しおりを挟む

「疑ってんだろ?俺達を」
「……………そ、そんな……」

 晄に見破られてしまう、麗禾の思考。出来る限りポーカーフェイスを心掛けようとしているのに、いとも簡単に図星を突かれる。

「……………まぁ、それでも良いぜ?………今日は俺達も帰るが、数人はこのマンション周辺で警護に残しておく………で、お前のスマホ貸せ」

 灰皿に、煙草を押し付け火を消した晄が、徐ろに立ち上がると、麗禾の前迄歩いて来た。
 麗禾は勿論身構えて、一歩下がる。

「スマホ、ですか?」
「そうだ………俺の連絡先入れさせろ」

 スーツの中から晄のスマートフォンを出され、麗禾は自身の持っていたバックを、ダイニングテーブルに置いたのを思い出し、取りに行こうとする。

「……………嫌です」
「榊」

 それを察したのか、晄は尽かさず榊に指示を出し、既の所で榊にバックを奪われてしまう。

「はい」
「あっ!私のバック!」
「申し訳ありません、お嬢………若頭の指示は絶対でして」
「くっ!」

 人の持ち物を勝手に見られたくはないし、ましてや相手は男だ。中身だって女特有の必需品も入れている。
 しかし、それには目もくれず、晄は麗禾の財布とスマートフォンだけ出した。

「…………顔認証………」
「はい…………失礼します、お嬢」
「え!…………ち、ちょっと!」

 顔認証ロックを掛けていた麗禾のスマートフォンは、晄に画面を向けられて解除させられてしまった。しかも、榊に顔を固定されてまでされてしまう。

「……………男らしき連絡先は………まぁ、今度で良いか…………念の為にこいつ等調べるから、全部連絡先を俺のに移すぞ」
「や、止めて下さい!人のプライバシーを何だと思ってるんですか!」
「別に、お前にとって安全ならこいつ等に何も手出しはしない…………要注意人物だった場合は連絡先ブロックさせるがな…………で、俺の連絡先を………と………後はGPSアプリを入れて………と…………ほら、返す」
「っ!……………貴方をブロックしますから!アプリ迄勝手に入れて…………大概にして下さい!」
「消したらまた入れるし、もし続けるようならのスマホを持たせるだけだ」

 直ぐに消去してやる、と麗禾の表情は言っている。

「……………分かりやす……お前………単純だな………身体も素直だと良いが………」
「さ、触らないで下さい!」

 麗禾は晄と榊に挟まれて、しかも黒龍組の組員迄もが麗禾の近くに居る。
 だが、榊の手も直ぐに下ろされ、麗禾には誰も触れてはいないが、唯一我が物顔で無断で触れて来ようとする晄の手だけは非常に怖い。胸の辺りを触ろうとする晄の手がやらしそうに見えるのだ。

「……………、て言っただろ………財布に、俺のクレジットカードを入れておく。好きに使え」
「……………は?………要りません!持って帰って下さい!」
だと思っとけ………明日のお前の予定は?」
「……………何で言わないと駄目なんですか?」
「デートぐらい誘わせろ」
「嫌です」
「じゃあ、明日朝から此処に来てやろうか?デートはお前のベッドの上…………」
「絶対に嫌です!」

 今日は麗禾に手を出さなくても、明日は出すのか、とどの口がほざくのだろうか。

「他の女の所に行って下さい!どうぞ、私なんて捨て置いてくれて構いませんから!」
「嫌だね…………選べ………外でデートか此処で1日中ベッドの上でデートか」
「……………外出して、私に何をする気ですか?」
「デートだって言っただろうが…………飯行って買い物して…………まぁ、女子大生が好きそうなデートスポットに付き合ってやろう、て思っただけだが?」
「仕事されては如何ですか?」
「俺が仕事してる姿でも見たいのか?としてかとしてか………まぁ、お前には両方見る権利はあるよな」
「……………興味ありません………デートも嫌です」

 頑なに拒否続ける麗禾に、晄も折れる気は無さそうだ。埒が明かない。

「若頭、そろそろ次の予定が………」
「……………あぁ……そうだったな………麗禾、明日正午に迎えに来る。居留守使ったり、このマンションに居なかったら探すからな」
「だから、嫌だと…………っ!」

 いきなりだった。
 黒龍組の組員達に囲まれているのに、いきなり抱き寄せられて、晄の顔が近付いて来たと思った矢先、食べられそうな勢いで、晄の唇が麗禾の唇を奪う。可愛らしいキスではない。強引な強気のキスで、舌を絡め取られ吸われ、歯肉をなぞり、晄の唾液が流し込まれる。それは苦しくて苦しくて、思わず晄の胸を叩き、離そうとするのにビクともしない。なかなか離れてくれず、時間を見れば1分や2分ではなかった。初めてのキスで、呼吸の仕方も上手くはない麗禾に、優しくない晄のキスは、麗禾に涙を流させた。唇もヒリヒリし始めたと思った時、晄は銀糸を引いて麗禾をやっと解放する。

「……………フッ……キスも初めてみたいだな………下手過ぎて、勃ちもしねぇ………本気出してやって、半勃ちってとこか………エロい顔が少し見れて今日は満足してやるよ………恋愛初心者のお前が俺に惚れる様にしてやるから、覚悟しておけ…………戸締まりはしっかりしとけよ、麗禾」
「……………な……」

 本気出してキスされた麗禾は、腰が抜けて床に座り込んでしまった。
 その頭をポンポン、と叩かれて晄は部屋を出て行ったが、麗禾は放心状態のままだ。

 ---何が………本気出した………て………何のつもりなのあの人!話が通じない!勝手に明日の予定も決めて、誰があんな人とデートするもんですか!

 感じて腰が砕けて、下半身が疼く程されて、恐怖と嫌悪が大きくなっていく。
 果たして、麗禾が晄を好きになる事になるのだろうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...