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しおりを挟む「疑ってんだろ?俺達を」
「……………そ、そんな……」
晄に見破られてしまう、麗禾の思考。出来る限りポーカーフェイスを心掛けようとしているのに、いとも簡単に図星を突かれる。
「……………まぁ、それでも良いぜ?………今日は俺達も帰るが、数人はこのマンション周辺で警護に残しておく………で、お前のスマホ貸せ」
灰皿に、煙草を押し付け火を消した晄が、徐ろに立ち上がると、麗禾の前迄歩いて来た。
麗禾は勿論身構えて、一歩下がる。
「スマホ、ですか?」
「そうだ………俺の連絡先入れさせろ」
スーツの中から晄のスマートフォンを出され、麗禾は自身の持っていたバックを、ダイニングテーブルに置いたのを思い出し、取りに行こうとする。
「……………嫌です」
「榊」
それを察したのか、晄は尽かさず榊に指示を出し、既の所で榊にバックを奪われてしまう。
「はい」
「あっ!私のバック!」
「申し訳ありません、お嬢………若頭の指示は絶対でして」
「くっ!」
人の持ち物を勝手に見られたくはないし、ましてや相手は男だ。中身だって女特有の必需品も入れている。
しかし、それには目もくれず、晄は麗禾の財布とスマートフォンだけ出した。
「…………顔認証………」
「はい…………失礼します、お嬢」
「え!…………ち、ちょっと!」
顔認証ロックを掛けていた麗禾のスマートフォンは、晄に画面を向けられて解除させられてしまった。しかも、榊に顔を固定されてまでされてしまう。
「……………男らしき連絡先は………まぁ、今度で良いか…………念の為にこいつ等調べるから、全部連絡先を俺のに移すぞ」
「や、止めて下さい!人のプライバシーを何だと思ってるんですか!」
「別に、お前にとって安全ならこいつ等に何も手出しはしない…………要注意人物だった場合は連絡先ブロックさせるがな…………で、俺の連絡先を………と………後はGPSアプリを入れて………と…………ほら、返す」
「っ!……………貴方をブロックしますから!アプリ迄勝手に入れて…………大概にして下さい!」
「消したらまた入れるし、もし続けるようなら俺専用のスマホを持たせるだけだ」
直ぐに消去してやる、と麗禾の表情は言っている。
「……………分かりやす……お前………単純だな………身体も素直だと良いが………」
「さ、触らないで下さい!」
麗禾は晄と榊に挟まれて、しかも黒龍組の組員迄もが麗禾の近くに居る。
だが、榊の手も直ぐに下ろされ、麗禾には誰も触れてはいないが、唯一我が物顔で無断で触れて来ようとする晄の手だけは非常に怖い。胸の辺りを触ろうとする晄の手がやらしそうに見えるのだ。
「……………今日はしない、て言っただろ………財布に、俺のクレジットカードを入れておく。好きに使え」
「……………は?………要りません!持って帰って下さい!」
「小遣いだと思っとけ………明日のお前の予定は?」
「……………何で言わないと駄目なんですか?」
「デートぐらい誘わせろ」
「嫌です」
「じゃあ、明日朝から此処に来てやろうか?デートはお前のベッドの上…………」
「絶対に嫌です!」
今日は麗禾に手を出さなくても、明日は出すのか、とどの口がほざくのだろうか。
「他の女の所に行って下さい!どうぞ、私なんて捨て置いてくれて構いませんから!」
「嫌だね…………選べ………外でデートか此処で1日中ベッドの上でデートか」
「……………外出して、私に何をする気ですか?」
「デートだって言っただろうが…………飯行って買い物して…………まぁ、女子大生が好きそうなデートスポットに付き合ってやろう、て思っただけだが?」
「仕事されては如何ですか?」
「俺が仕事してる姿でも見たいのか?支配人としてか極道としてか………まぁ、お前には両方見る権利はあるよな」
「……………興味ありません………デートも嫌です」
頑なに拒否続ける麗禾に、晄も折れる気は無さそうだ。埒が明かない。
「若頭、そろそろ次の予定が………」
「……………あぁ……そうだったな………麗禾、明日正午に迎えに来る。居留守使ったり、このマンションに居なかったら探すからな」
「だから、嫌だと…………っ!」
いきなりだった。
黒龍組の組員達に囲まれているのに、いきなり抱き寄せられて、晄の顔が近付いて来たと思った矢先、食べられそうな勢いで、晄の唇が麗禾の唇を奪う。可愛らしいキスではない。強引な強気のキスで、舌を絡め取られ吸われ、歯肉をなぞり、晄の唾液が流し込まれる。それは苦しくて苦しくて、思わず晄の胸を叩き、離そうとするのにビクともしない。なかなか離れてくれず、時間を見れば1分や2分ではなかった。初めてのキスで、呼吸の仕方も上手くはない麗禾に、優しくない晄のキスは、麗禾に涙を流させた。唇もヒリヒリし始めたと思った時、晄は銀糸を引いて麗禾をやっと解放する。
「……………フッ……キスも初めてみたいだな………下手過ぎて、勃ちもしねぇ………本気出してやって、半勃ちってとこか………エロい顔が少し見れて今日は満足してやるよ………恋愛初心者のお前が俺に惚れる様にしてやるから、覚悟しておけ…………戸締まりはしっかりしとけよ、麗禾」
「……………な……」
本気出してキスされた麗禾は、腰が抜けて床に座り込んでしまった。
その頭をポンポン、と叩かれて晄は部屋を出て行ったが、麗禾は放心状態のままだ。
---何が………本気出した………て………何のつもりなのあの人!話が通じない!勝手に明日の予定も決めて、誰があんな人とデートするもんですか!
感じて腰が砕けて、下半身が疼く程されて、恐怖と嫌悪が大きくなっていく。
果たして、麗禾が晄を好きになる事になるのだろうか。
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