領主は私です、婿の貴方は何様ですか?【完結】

Lynx🐈‍⬛

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ロゼッタの夫

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 屋敷に帰ってきたロゼッタ。領主としての仕事を放り出していたので、書斎に篭っていた。領土を豊かにする為に、ロゼッタは亡くなった父の爵位を継いだ侯爵だった。ロゼッタには男兄弟が居らず、長女であったロゼッタは夫を迎えなければならない為、父が決めたロベルトと結婚した。しかし、ロベルトは父が亡くなると、婚約当時とは性格を変えた。婚約当時は、優しくロゼッタに対してだけでなく、屋敷の侍従達や、父、妹サブリナへも気遣いの権化だった。だが、父が3年前に急死し、態度が一変。ロゼッタに暴行を加え、酒に入り浸り、女を漁る男だったのだ。
 ロゼッタには子供を産まなければならず、ロベルトが必要で離婚は出来なかった。何故なら、父の遺言である。その遺言は、父と懇意のあるロベルトの両親との約束。その約束に、ロベルトとロゼッタの子供を産ませる、という馬鹿らしい遺言。しかし、ロゼッタにはそれが苦痛でならなかった。ロベルトとの房事は必死に我慢をし、結婚して2年。でも子供は出来ず、医師に調べさせたら以前の『流産』が原因では、と診断された。
 ロゼッタの記憶上、妊娠した覚え等は無い。だが、流産をしたという。ロベルトは顔を青褪めてはいたが、ロゼッタは何が何だか分からない。
 すると、ロベルトは突拍子の無い事をロゼッタに言い放つ。

『サブリナとの子供なら、お前なら誤魔化せるだろう』

 と。
 何て阿呆な夫なのだ、とロゼッタは思った。サブリナは父が急死してから、心の病と言われ、外出も出来なくなり、街で姿が見えなくなったサブリナをロゼッタは『留学した』という事にした。心の病は奇病と迄言われている。治す薬は無いのだと。それでも可愛い妹をロベルトの毒牙に掛けたくなかったロゼッタ。

『やめて!そんな事したら、許さないわ!』
『そんな事言える立場か!お前は俺の子を産めないのに!』
『……!!……やめて!!………痛いっ!!』

 必死に守りたかった妹が、ロベルトに侵されるのを、ロゼッタは見て見ぬ振りをするしかなかった。青痣をいっぱい作り、泣きじゃくったロゼッタ。暴行された後、サブリナの部屋から、サブリナの叫ぶ声が聞こえる日が暫く続く。もう、ロゼッタは限界だった。しかし、ロベルトの奇行はそれだけではない。サブリナもなかなか妊娠せず、ロベルトは娼館だけでなく、手当り次第に女を抱いた。

『俺が悪いと言うのか!そもそも、お前が俺の子を産まないのが悪いんだ!』

 と、逆ギレされる。妊娠した女達は、認知しろだの、ロベルトと別れろだの、産んだら引き取れ等、散々ロゼッタに責任を取らせようとした。

『離婚して頂ける?ロベルト』
『冗談だろ!ロゼッタ!お前を愛してるのに!』
『阿呆らしいわ……ロベルト………私は貴方から愛されてると感じた事はこれっぽっちも伝わってないの。父の遺言に関しては無効にする方法を探します。離婚して頂戴』

 何度も言ってきた言葉だが、遺言が優先させられてしまい、仕方なくロゼッタが蓄えた金で、妊娠した女達に慰謝料を渡した。そんな事を繰り返し、半年程経った頃、サブリナが妊娠したのだ。ロベルトの子である。夫とは到底思いたくない男。街の女達を抱かなくなったと思えば、思い通りに出来るサブリナをまた抱きに行った馬鹿な男に、本当に嫌気が差した。サブリナが妊娠したのなら、もう我慢はしない。離婚してやる、と思ったロゼッタは、離婚届を書いていた。

 カチャ。

「帰ったぞ~」
「…………丁度良かった………サブリナが妊娠したのだし、離婚届に署名してくれる?子供は私の子として育てるし、貴方は用無しよ」
「…………は?何言ってる………ヒック」
「………酔ってるなら、明日でいいわ。また明日にでも、お酒飲む前に書いて頂戴」
「…………俺は出て行かんぞ」
「領主は、貴方は婿養子。権限はにあるの………のお勤め?ご苦労様でした」

 バンッ!!

「出て行くのはお前だ、ロゼッタ」
「は?何言ってるの?私を追い出す権利は貴方に無いわ」

 扉を開けて、書斎を出ようとしたロゼッタを阻むロベルト。

「…………やっとサブリナが妊娠したんでな……サブリナが領主になるさ……お前こそ用無し」
「どれだけ馬鹿な男なの?サブリナは心の病で部屋からも出れず、奇行を繰り返してるのよ?」
「…………だから何だ?……領主であるロゼッタが居なくなるなら、サブリナが相続する。そのサブリナを慰め、が領主代理になればいい」
「一切、領主の仕事を手伝おうしなかった貴方に出来る訳ないじゃない!」

 ドンッ!

「!!」

 片手に酒の瓶、片手はロゼッタの首を締めようとロベルトが壁にロゼッタを押し付けた。

「子も産めねぇ、領主じゃなきゃな………愛していたんだがな……少なくとも3年前のお前の裏切りが無きゃ、もっと優しくしてやったのによ…………なぁ、ロゼッタ……」
『…………なるほどね』
「!!」

 室内は窓を閉めているのに、風が入る書斎。その風を感じた途端、ロベルトは吹き飛ばされた。すると、ロゼッタを庇う様に立ち塞がる男が立っていた。
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