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現在

マキシマス

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「お、お前!!何故此処に居る!!マキシマス!!」
「……………ロベルトの考えている事は容易に判断出来る。馬鹿な男だからな」

 ロベルトを馬鹿にする男は、昼間ロゼッタが海で会った男。

「なっ!!」
「お前、俺が魔道士だと忘れたか?短絡思考のロベルトが考えそうな事だ」
「ゲホゲホッ」
「ロゼッタ!大丈夫か!?」

 夫の暴行で、夫は妻を労わず、ロゼッタの見知らぬ男が労う光景は不思議なものだった。

「ふん、そんな子が産めない女にはもう用は無い……ロゼッタの妹、サブリナの産む子がこの領土の次期領主になるんだからな」
「サブリナだと?…………サブリナがまだここに居るのか!!追い出せと言った筈だ!ロゼッタ!!」
「………………え?……サブリナは心の病気なの………私はそんなサブリナに……」

 マキシマスはロゼッタの言葉に疑問を持った。すると、領主印がある金庫に行き、鍵を開けると、印や領主として必要書類をマキシマスの手の内に飛ばした。ロベルトもマキシマスに奪われまいとするが、ロベルトはマキシマスには勝てなかった。

「ロゼッタ、コレを持て………お前をココに置いてはおけない!」
「………え?」

 反論しようにも、聞き返す隙等与えず、無理矢理ロゼッタに持たせたマキシマスは、ロゼッタを抱き締め、魔法でロベルトの前から消えた。

           ✧✧✧✧✧

「……………え?」
「俺の屋敷だ………領土は出ていない」
「??」

 キョロキョロとロゼッタは辺りを見回す。しかし、見学も大して出来ず、バタバタと屋敷の奥から侍従らしき者達が現れた。

「まぁ!ロゼッタ様!お久しぶりでございます!」
「…………え?」
「暫くロゼッタはこの屋敷で領主の仕事をする。 部屋も用意しておいてくれ」
「はい!勿論でございます!」

 侍従達が、ロゼッタを歓迎し、嬉しそうだった。

「ロゼッタ、こっちだ、来い」
「……………あ、はい」
「…………『はい』か………」

 歓迎されているのなら、ロゼッタが居ても危害は無いだろうと思い、マキシマスに付いていくロゼッタ。しかし、マキシマスは寂しそうで、ロゼッタの心を刳る。
 案内された部屋は、ロゼッタが好きな雰囲気の調度品が集められ、色も好きな壁紙で落ち着く。

「3年前のままだ………俺は、3年間国境付近で王令でこの領土を離れてしまって、帰って来れなかったからな」
「…………3年……」

 扉の付近でマキシマスはロゼッタに聞いた。

「ロゼッタ……3年前、俺が領土から離れた前後、何があったか今は問わない。ただ、あれだけ嫌がっていたロベルトとの結婚を受入れた原因が俺にあるのなら謝る………王令に叛いてでも、ロゼッタから離れる冪ではなかったんだ、と今のロゼッタを見たら分かるよ………徐々にでいい、俺が君に掛けたまじないではないが君に掛かっているなら、全て俺が取り払おう…………聞きたい事はあるが、今は聞かない………今日はゆっくり休め。後で、イヴァンカから温かい飲み物を運ばせる」

 バタン。

 マキシマスが紳士的で、悲しみを含む口調、懐かしさが込み上げるロゼッタからの気持ちが、如何してもロゼッタが悪い気がしてしまう。扉が閉まっても、マキシマスが居ない部屋がとても寂しく感じた。

「………私……あの人を知ってる?」

 マキシマスの声は、ロゼッタには温かく落ち着いた。だが、ロベルトへの態度は冷たく、近寄り難かったのと、何故ロベルトはマキシマスを知っているのかさえ分からない。

 コンコン。

「失礼致します、ロゼッタ様」
「…………私を知っているのですか?」
「?ロゼッタ様?……イヴァンカではありませんか……マキシマス様にお仕えしている……まさか私をお忘れですか?」
「…………ご、ごめんなさい……私、3年前の数カ月、記憶が無いの……だから、その頃に会った人は全く……」

 初老の女は、青褪める。持ってきたティーポットをカチャカチャと振るわせ、ワゴンに置いて、ロゼッタに近寄り手を握った。

「ロゼッタ様!記憶が?………あぁ……恐ろしい事が立て続けでしたから、忘れてしまいたかったんでしょう………マキシマス様しか心の拠り所では無かったですし………こんな事なら私が此方に残っていれば良かった………あぁっロゼッタ様……」
「な、何があったのですか?」
「…………私からは……マキシマス様はロゼッタ様に何も聞かれなかったのですか?ロゼッタ様はマキシマス様に伺った事は?」

 イヴァンカは、首を横に振り、差し出がましいと思ったのか、何も言わない。

「何も聞かれないし、聞いてないです」
「…………何とお労しい……」
「教えて下さい!私に何があったのです?」
「………も、申し訳……ありません……私からお伝えする等……」
「…………そうですか……」
「で、ですが、ロゼッタ様が此方に居られる間は誠心誠意お仕えします!ロゼッタ様はマキシマス様の大切な方ですから!」
「…………私、既婚者ですよ?」
「……………え?……既婚者……?ま、まさか……マキシマス様、ロゼッタ様を無理矢理連れて来られたとかではないでしょうね!?」

 イヴァンカは、マキシマスから何も聞かされてないのは本当らしい。血相を変え、鬼の形相になっていく。

「あ、違うの!彼は、私を夫から守ってくれて!………だから此方に避難を!」
「………夫から守って………?失礼ですが、その夫とはロベルトとかいう男ですか?」
「………え、えぇ……」
「あの男…………全く3年前と変わってないのですね!?…………ご安心下さい!必ずマキシマス様がロゼッタ様をお助けしますから!」

 ロゼッタはマキシマスが魔法を使える事は知ったし、今もロベルトから助けた事も分かるが、そこ迄してもらう筋はない筈だ。記憶が抜けた間の事とどう関係しているのか分からなかった。
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