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記憶消失
ロゼッタの妊娠
しおりを挟むアルベドの葬儀が執り行われた。ロゼッタは憔悴しきっており、マキシマスが寄り添おうとするが、 ロベルトとサブリナに阻まれる。
「婚約者は俺なんだよ!義父上の遺言書に書いてあるんだよ!!邪魔なのはお前だ!!」
「そうよ、マキシマス。貴方は私の婚約者として参列を許しているんだから、私の側に居て頂戴!私だってお父様を亡くして悲しみに暮れてるのよ?」
遺言書がある以上、ロゼッタはロベルトと結婚しなければならないだろう。だがその前に何とかしたかったマキシマス。ロゼッタはアルベドが亡くなった事にしか考えが回らず、ロベルトからの言葉もサブリナからの言葉も耳に入る様子もなかった。行方不明になった頃、心配しロゼッタはマキシマスに縋るように、存在を感じるように、身体を求めた。
『ああああっ………もっとぉ』
求め合って幸せを感じた訳ではない。そんな意味で求め過ぎては、マキシマスに申し訳なく、アルベドが見つかってから、ロゼッタはマキシマスの屋敷から出て行った。領主としての仕事が忙しく、会おうともしなかった。仕事と葬儀準備以外の人間とは会わず、ロゼッタは必死に働いた。
「ロゼッタ、俺達の結婚式はいつにするよ」
「…………」
「勝手に決めちまっていいな?………クククッ」
「よく笑えるわね………貴方と結婚なんてしないわ」
「遺言書にあるじゃねぇか」
「……………無効にしてみせる」
だが、遺言書の効力は優先させられる。喪が明けたら正式に結婚を認めると許可をロベルトが取りに行ってしまったのだ。
「もうすぐね、お姉様が領主に縛られるの………ふふふ」
「領主は俺になるさ。妻を働かせるなんてとてもとても………クククッ」
「私ももう直ぐ計画は実行されるわ………みてなさい、マキシマス………お姉様をこの地に留まらせる為に邪魔なのよ……」
「振られた女は怖いねぇ」
「アンタだって、お父様殺したじゃないの」
「しぃ~~っ!誰が聞いてるか分からねぇんだ!それは言うんじゃねぇよ!」
屋敷の片隅でロベルトとサブリナの密談。しかし、その言葉を聞いていた者が居た。侍女の一人がロゼッタに話したのだ。
「何ですって!…………んぐっ!」
「お、お嬢様!!」
書斎に居たロゼッタは、急に吐き気がし、仕事の書類の上を汚す。
「お嬢様………少しお休みになられては……」
「…………大丈夫よ、これぐらい……何ともないわ………お願いがあるの……今から手紙を書くから、お使いに行ってくれないかしら……誰にも知られない様に……」
「…………分かりました」
ロゼッタはこの吐き気の意味は分かっていた。だが、医者を呼べばロベルトとサブリナに知られてしまうから。アルベドの葬儀前から、避けていたマキシマス。彼に連絡を取らなければならない。侍女に手紙を持たして、マキシマスが迎えに来るのをロゼッタは待った。
「……………ロゼッタ……」
「ごめんなさい………マキシマス……貴方を遠ざけて……」
ロゼッタの私室で空間が歪むのを待っていた。私室の調度品は、ロゼッタが使っていた物では無い。愛用品はマキシマスの屋敷にある。屋敷に戻って来たその日からロゼッタは殺風景な調度品と書斎の行き来しかしていない。調度品を揃え直す事も、如何でも良かったからだ。
「痩せてる…………食べて、しっかり寝てるのか?」
「………食べても吐いてしまうの……寝たら………悪夢ばかり見てしまうからあまり……」
「吐く?」
「……………多分、妊娠してる……医者に診て貰いたいけど、ロベルトやサブリナに知られてしまったら、と思うと……お父様の葬儀が終わってから、月のモノが来ないのも気が付いたわ………」
「ロゼッタ!!」
マキシマスはロゼッタを抱き締めた。涙を流し始める。
「……………マキシマス?」
「嬉しいよ……すまない、結婚と妊娠が逆になってしまったが、嬉しい!」
「ま、待ってっ!…………わ、私、ロベルトと結婚しなければならないの……お父様の遺言で…………もう……ロベルトが申請してしまった……」
「遺言書?………しまった!それをロベルトが持ってるのか!」
「………えぇ………来週には受理されるわ……」
「ロゼッタ、逃げよう………この屋敷から……領主の仕事はこの屋敷じゃなくても出来る!」
「駄目よ!そんな事をしたら、マキシマスが罪に問われるわ!………それに、お父様はロベルトに殺された、て……あと、サブリナも何か企んでる…………私は貴方を呼んだのは、医者に診て貰いたい身体と、この事を知らせて、何とかあの2人の企みを阻止するのに、連絡を取りやすい方法を相談したくて!」
「…………分かった……ロゼッタ、この部屋は誰か来るか?」
「いいえ、鍵掛けてるし、書斎とこの部屋の行き来してるのは皆知ってるから」
「じゃあ、とりあえず屋敷に行こう、ここでは無理だ………明日朝に帰すから、今夜は俺と居てくれ」
ロゼッタは頷いた。
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