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成人
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エレノア16歳。6年が経過しても、王族と神殿との険悪の差は開く一方だった。
エレノアは、各地に暇さえあれば赴いて、聖魔法を受けられない地に行って加護を与え、自然災害が起きそうな場所に赴いては、精霊達と獣達と協力しながら、オルレアン国を守っていた。そう、エレノアが動いていても、神殿からは飢餓が出た場所でさえも、救援には行かず、私欲を増やしている。そうする事で益々貧富の差が激しくなる事を気にしてはいない様だ。
「はい………これで暫く安静にしておけば回復して行くわ」
「ありがとうございます、ありがとうございます……………」
「貴女こそ、本物の聖女様だ………」
「……………困ってる人を助けたいだけよ、私は」
「エレノア、こっちの救援は終わった」
「ありがとう、レオ…………あ、ハサウェイ!それは薬草だからゴミと一緒にしないで!」
「あ、そうなの?ごめん、エレノア」
神殿派貴族からは威厳も無くした王族達。今の所は王族派の方が多いが、裕福な神殿派へ寝返る者もチラホラと見えている。
今迄、何も国王もレオナルドもしなかった訳ではない。王宮からの使徒も無視し続けていて、実質上国は分裂している。
「エレノア、王宮に帰るぞ」
「うん」
レオナルドは成長と共に、エレノアの転移魔法陣を作れる程になった。22歳になったレオナルドは、少年の雰囲気はもう無く、弱音も吐かない青年になり、近日にエレノアはレオナルドと正式に婚約式を挙げる事になっている。
「すっかり、移転魔法陣をマスターしたね、レオ」
「俺だっていつまでも、エレノアには負けてられないからな…………俺に惚れていて貰わないと」
「惚れてる惚れてる」
「……………冗談に聞こえるから嫌だ……ちゃんと、本心を言ってくれよ」
エレノアに甘えて来る姿は可愛くて、ついつい冗談にしてしまうが、エレノアはレオナルドが好きになっていた。
王宮に到着すると、王宮の転移魔法陣の前にはルーカスが出迎えてくれていたのだが。
「兄上、お帰り………言いたくないけど、偽聖女が面会を求めてる」
「聞きたくないし、聞かなかった事にしてくれ」
「あら、そんな事仰らないで下さいませ………殿下」
「ルーカス!何故通した!」
転移魔法陣は特別な場所だ。入れる者は極僅かに制限している。
「ち、違うって………マーカス卿に付いて来たんだよ」
「……………マーカス?で?アイツは見当たらないが?マーカスもツヴァイクも、ベルセルク公爵家の者は、此処への立ち入りは許可は出してない!」
「俺だって、マーカス卿をこの外で待たせてた!だが、この女が隙見て入って来たんだよ!」
「追い出せ」
「酷いですわ、レオナルド殿下………婚約者のわたくしが会いに来てはいけませんか?」
「婚約者は君じゃない」
「出来損ないなんて、捨て置き下さいませ」
久し振りに聞いた、出来損ない。そんな事を言う妹を、エレノアはもう家族とは思ってもいない。6年間、会いに来る事も無かったのだ。兄のツヴァイクやマーカスは、レオナルドに会いに来る事もあったが、度々レオナルドからエレノアに会わないのか、と聞いても会う気も無かった、とレオナルドから聞いている。
ベルセルク公爵家はもう、神殿派で敵対する相手なのだと思うとやるせない気持ちになる。生まれ変わる度に、両親は違い兄弟姉妹達も違うが、それぞれに愛情は皆から与えられていたのに、ベルセルク公爵家だけは違うので、家族とは思っているのは、エレノアただ1人なのだ。
「彼女は出来損ないではない………連れ出せ!」
「令嬢、此方に………」
「レオナルド殿下!わたくしとの婚約式、楽しみにしておりますわ!」
「っ!」
エレノアとレオナルドの婚約式は来週に控えている。王族という立場から、招待状は全貴族に送られていて、成人した16歳以上の参加になっている。
それは勿論、ベルセルク公爵家にも送られていて、1つの家だけ送るのを止める、という訳にはいかなかった。そして、ベルセルク公爵家はエレノアの生家。無視は出来ない。
「大丈夫?エレノア」
「う、うん…………大丈夫よ、ハサウェイ」
「エレノア!…………すまない……」
「何でレオが謝るの?貴方は悪くないわ………ルーカスにはお仕置きかしら?」
「え!ま、待ってよ!エレノア!俺だって悪気無いよ!付いて来たあの娘を止めれなかった警護だって…………」
「怒ってるのはレオだからね?」
「そうだ!俺は怒ってる!」
「ご、ごめん!兄上!」
「待て!ルーカス!」
エレノアは、レオナルドを含め、ルーカスやハサウェイにも救われていた。兄の様に優しいルーカスとハサウェイ。そして恋人の様にエレノアを支えてくれるレオナルド。
「懲りないね、君の妹」
「レオが好きなのは昔からだしね」
「エレノアは?」
「ん?」
「エレノアはレオナルド兄上が好き?」
「好きか、嫌いか、で言えば好き…………大人なのに子供っぽい所が可愛い………私は、1000年の記憶があって、一度も恋をした事がないの………書物では恋がどんな感情か、て理解してるのよ?ドキドキしたり、嫉妬したり………でも、レオとはそれが無い…………同志の様………婚約もこのままの関係なら、長く添い遂げる事も出来そうだから承諾した…………国王になるレオを支えたい、信頼もしてる。国を治めるには、愛だの恋だのより、そっちが大事だから………統治者という立場なんかじゃなくて、恋人の様な関係も憧れてるけどね」
「兄上に言ってみれば?」
ハサウェイが、エレノアに助言をすると、エレノアは首を傾げた。
「何を?」
「ドキドキさせて、てさ」
「え!」
「そうすれば、ちょっとは甘い関係になれるかもよ?」
「い、言えな…………言えないよ!そんな経験も無いから…………」
「エスコートとかは自然にしてるじゃん、2人共」
「それは…………」
「ドキドキしないの?」
「しない」
「協力してあげよっか」
「協力?」
「任せときな、て………ルーカス兄上と考えてあげる」
「あ、ちょっと!ハサウェイ!い、いいよ!忙しいんだから、貴方も…………行っちゃった………」
付き合いが長いと今更、恋愛感情が沸かないのだな、と思っていた。この関係を崩すきっかけがあるならば、破滅か進展かの何方かだろう。
婚約はしたのに、6年前から関係は変わってはいないのだ。
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