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しおりを挟むアルマがセルトに犯されてから1週間程経った頃。
ジークハルトがアルマに体調を聞かれた。
「体調はもう大丈夫か?アルマ」
「は、はい………」
「そうか、それならまた今夜から一緒の部屋で過ごそう」
「っ!………は、はい………」
アルマも何となく、ジークハルトから探りを入れられている感じがしてならず、毎日顔を合わせると、熱や体調を確認されながら過ごしていた。
「無理は禁物だがね、俺がアルマ不足ですまない」
「い、いえ…………あ、あの………私も寂しかったです…………ひ、広いベッドに1人って慣れなかったので………」
「…………はははっ、可愛い事言うなぁ、アルマは」
一見、仲睦まじい夫婦にしか見えない会話ではあるのだが、アルマには針のむしろだ。
まだ妊娠回避の兆候である月の穢れが無いからだ。もしこの1週間、来ていたら妊娠はしていないと分かって安心出来たがそれが無い。
アルマ自身、その期間時期では無いので、緊張感は解けないでいるままなのだ。
先月は、結婚式を挙げた数日後に、月の穢れが来て、ジークハルトとの閨は断っている。
この時期に閨行為をして良いものかもよく分かっていなかったアルマなので、それが正解かを知らぬまま、ただそれから数日はジークハルトに抱き締められて眠るだけだった。
そう思えば、そろそろアルマの周期に近いこの週に来て欲しいと思っている。
「アルマ、体調悪い中でも読書をしていたのか?」
「…………そんな気分にはなれなくて………書斎にも行けませんでした………」
この1週間、部屋に篭もるしか出来なかったアルマ。
気を緩めると、何故か涙を零し、本を開いては読む気になれず、また綴じて、窓の外を眺めては、思い出すあの日をまた考えて涙し、を繰り返していた。
なるべく人に見られたくなくて、人払いばかりして1人で過ごしてしまい、侍従達には心配掛けていただろう。
それなのに、アルマが実直過ぎて、嘘が吐けない性格だからこそ、セルトにされた事が尾を引き過ぎて、如何にもならなかった。
「アルマ………」
「っん!」
いつもの様に優しいキスから始まり、舌が割り入れられ押し倒されるアルマ。
後ろめたさが募るアルマは、ジークハルトからのキスさえも反応が出来なかった。
「…………アルマ、今日は止めようか……」
「っ!…………止めません!私………ジーク様との子供が欲しくてっ!」
「…………アルマ……くっ!」
アルマはジークハルトに覆い被さられたのを力任せにひっくり返すとアルマはジークハルトの腹上に乗る姿勢になる。
「ジーク様…………私……本当にジーク様との子を…………」
「…………言った筈だ………アルマには此処の生活が慣れてから、と………それは俺が判断する」
「っ!」
ジークハルトがアルマを自分から下ろし、ベッドから下りてしまった。
「ジーク様っ!」
「アルマと身体を繋げるのは早かったかもしれないな………俺の性欲の捌け口にしか出来ずに悪かった…………」
「そんな事はありません!私は………ジーク様に嫁いだ身………いずれはジーク様の子を……ヴォルマ領地を統治する後継者を産む覚悟もあります!ですが………夫婦になったなら……ゔっ……」
またいつセルトが来るかも分からないアルマには、早く確定的になる証明が欲しかった。
その感情が募り、込み上げてジークハルトの前で涙を零す。
「…………アルマ!………そこ迄根を詰める事無くてもいい!俺はアルマとの子供は欲しいと思っている。だがまだ時期は今ではない!」
「…………それは………いつなのですか?………」
「…………少なくとも、まだ2年は先にしたい………」
「…………に、2年………」
アルマは落胆しかなかった。
縋るように、ジークハルトの羽織るバスローブの裾を掴み、懇願しても拒まれてしまう態度に、力なくその裾から手を引いてしまう。
「…………暫く、別の部屋にしよう……俺の性欲はなんとかする」
「…………ぅっ………ぐすっ………」
「泣かせるつもりはなかった………だが、アルマを大切に思う気持ちに偽りはない」
本心を隠しつつ、望みを言うジークハルトが信じられなくて、涙が止まらなくなっていたアルマは、顔を合わせる事さえ辛くて毛布に包まってしまった。
「…………アルマ……信じて欲しい………結婚はしたが、アルマを大切にしたいが為の事なんだ………」
「何故なんですか!何故………」
「…………アルマは知らないかもしれない……まだ成長期の身体の歳での出産は、死を伴う可能性が大きいからだ」
「…………え?」
「まだ16歳の君は、成長期かどうか俺はまだ分からない。だから娶った後、成長が止まり大人の身体になったのを確認した後、子供を作ろうと思っていた」
「…………だから、ですか?」
「そうだ」
「…………分かりました………それなら……もう……無理強いはしません………」
毛布に包まったまま、ジークハルトに背を向け、アルマには信じ難い事を言われたのだとしか思わず、押し黙る事しか出来なかった。
泣き崩れるアルマから離れ、ジークハルトが寝室から出て行ってしまい、アルマは枕を濡らすしかなかった。
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