結婚したのに最後迄シない理由を教えて下さい!【完結】

Lynx🐈‍⬛

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「痛っ…………お腹痛い……っ!………あ……」

 昼食も食べず、夕食も食べれる気もならず、下腹部の痛みが走り、アルマは立ち上がるが、碌に睡眠も取れなかった身体に精神的にまいっているアルマには、急に立ち上がったので目眩を起こした。
 バタッと何も目の前に無い所に倒れたが、頭を床に打ち付けてしまった。

「…………ア、アルマ!」

 その倒れた後、ジークハルトが様子を見に来て駆け付けるが、アルマの意識が途切れている姿を発見し、額を打ち付けたのか腫れ始めていた。

「誰か!誰か居ないか!」

 頭を打ったと分かるので、揺さぶる事は出来ない。
 ジークハルトはアルマに呼吸があるのを確認して、一安心はしたものの、意識の無いアルマを抱き締めて縋る。

「アルマ!アルマ!目を覚ましてくれ!アルマ!」
「…………っ………ん………」
「アルマ!」
「奥様!」
「旦那様、落ち着いて下さい!医者を直ぐに連れて来ますから!」

 ジークハルトがアルマをベッドへ運び、手を握り締める。

「アルマ………すまない……俺が君を追い込んだ…………すまない……」
「…………ジーク……様?………泣いてらっしゃるんですか?………何故……」
「アルマ!」
「良かったぁ、奥様………」

 ベッドをジークハルトと侍従達に囲まれ、アルマは一瞬何が起きたのか、と目を泳がせていた。

「アルマ、君は今倒れてたんだ!意識が無かったし…………心配した………君が居なくなったら……と……」
「…………た、多分、睡眠不足と腹痛と目眩が重なって………だと……昨夜眠れなかったので……ご心配お掛けして申し訳ありません……」
「謝るのは俺だ………アルマ……君を追い込む様な事を言い続けたんだ、辛いのは君の方なのに……」
「…………ジーク様……泣かないで下さい……私…………痛っ………」
「アルマ?」
「ごめんなさい、誰か………綿布を……あと、ちょっと人払い………お願い出来ますか?」

 アルマは額の腫れより、腹痛の方が痛いのか、顔を赤らめて侍女に綿布を頼む。
 何故必要なのか分からないジークハルトは、涙が止まった。

「アルマ?何故綿布が要るんだ?」
「だ、だから………あ、あの………だ、男性の方は出て行って下さい!」
「旦那様、お願いします」
「さぁさ、先ず其方を優先させて下さい」

 侍女達は察する事が出来たが、男達はまだ理解出来はしない。

「俺は良いだろ!夫だ」
「っ!………は、恥ずかしいじゃないですか!」
「何が?」
「…………つ、月の穢れが………来たので……その処置を………」
「…………あ……そ、そうか……で、では………処置が終わったら教えてくれ………」

 月の穢れが来たら教えろ、と言ってはいたが、いざ目の当たりにすると如何したらいいのか分からないジークハルトだった。
 処置が終わると、その頃には医者も再び来て、アルマは診察を受ける。

「…………胃も荒れてらっしゃいますね、睡眠不足と精神的に食欲不振にもなられた所で貧血になり目眩を引き起こした、という悪循環に見舞われましたな」
「生命に関わる事ではないのだな?」
「今回は有りませんが、精神的苦痛から胃に穴が開く場合もあるんですよ?あまり、ご自分を追い込まぬ様に願います、奥様」
「…………す、すまない、アルマ……追い詰めて……」
「…………あぁ、原因は公爵閣下でしたか。喧嘩は程々になさらないと、追い詰められた奥様はまた倒れますよ。貴方は怒ると怖いのですから」

 アルマが不思議とジークハルトはこの医者に頭が上がらない様に見えたので、そんな事を考えていると、侍女から子供の頃よりジークハルトの主治医だと耳打ちされ、納得してしまうアルマ。

「では、また何かありましたらお呼び下さい。公爵閣下」
「何度もすまないな」
「それが仕事でございます………奥様の食事はなるべく消化の良い物から摂る様にして下さい。薬も此方に………鉄分不足になりがちの様ですから、補給出来る物と、胃薬です……あとは、額の腫れを抑える塗り薬」
「ありがとうございます、先生」
「では………」

 アルマが倒れた事により、ドタバタとして険悪な雰囲気に包まれていた邸内の空気が戻った様に見える。

「アルマの夕食を作り直してやってくれ」
「はい、只今」
「た、食べれます」
「アルマ、消化の良い物にするだけだ。流石にこの塊肉は冷めると固くなって、消化には悪い」

 冷めきってしまったステーキとスープにパンという、夕食はアルマが今見ても、柔らかい肉とは言えなくなっていた。

「ですが、食べ物を粗末にするのは……」
「でも食べれなかったんだろ、今日1日」
「ゔっ………は、はい……」
「だから良いんだ、粗末にしない様に料理人達にも伝えれば何か策を練る筈だ。今のアルマは身体を労れ。そこ迄気を回すな」
「…………申し訳ありません……」
「…………皆、少し外れてくれないか。アルマと2人きりにして欲しい」
「…………っ……」

 真剣な顔を見せたジークハルトに、また怒られるかもしれない、とアルマは思って、身体を硬直させた。
 心配させて怒られていたのだ。倒れた事に怒っているに違いない、と思えてならず、ベッドのアルマに掛けられた毛布を握り締め、俯いてジークハルトの言葉を待つ。

「アルマ、聞いて欲しい」
「…………え……」

 その力が入ったアルマの手にジークハルトは重ね、力を抜けさせるかの如く包み込まれると、熱の篭った目線を贈られた。

「俺は………嫉妬するあまり、君を詰ってしまった………辛いのはアルマ、君なのに…………俺が被害者の様な、裏切られた事に腹が立ち、君を更に傷付けた」
「う、裏切ったのは事実です………あの日、窓からジーク様達を見送る為に窓からベランダに出てしまい、その時に侵入されて………力では拒めなかった………大声で助けを求め様としても、引き裂かれた服を口に押し込まれて………知っている彼じゃなかった………ジーク様の優しい手でも………なくて………ずっと気持ち悪くて………終わって直ぐ、お風呂場で掻き出して、侍女達が来る迄ずっと冷めた湯船の中で泣いて………何故、あの…………いえ………」
「言い掛けたら話してくれ………辛いだろうがその辛さは共有して2人で乗り越えよう」
「…………あ、あの………セルトの………出された………ア、アレが………何故、ジーク様のじゃなかったのか………て………」
「…………っ!」

 不謹慎だと思われそうだが、セルトのではなくジークハルトのだったら、相手がジークハルトだったらどんなに幸せだっただろうか、とアルマは言う。そのアルマの言葉でジークハルトも照れてしまった。
 執事からアルマに慕われている、とジークハルトは聞かされてなければ、勘付かなかっただろう。
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