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しおりを挟む「此処に居たのか、アルマ」
「ジーク様もご挨拶に?」
「墓参りの前にな………アルマも墓参りに行くか?」
「はい………そういえば、まだご挨拶してませんでした、私」
「場所を教えてなかったからな」
アマリリスの肖像画の前。
ジークハルトは何だか寂しそうな表情をしていた。
「…………今日が命日でな……」
「…………では、ジーク様のお誕生日なのですか?」
「そうだ………複雑だな……人は誕生日を嬉しがるが、母上の命日にもなるから、誰もが複雑な顔をするので、俺も嬉しさと寂しさが入り交じる………おいで、墓は邸内にある」
「…………はい」
外に出て庭園を抜けた丘の上迄来ると、景色が広がる。
墓碑が立ち、ひっそりとしていた。
「ヴォルマ公爵家の墓は別にあるが、母上のだけは此処にあるんだ」
「何故ですか?」
「此処は、母上が好きな場所だったらしい。メリッサ夫人と花冠を作って遊んでいた絵があっただろう?」
「あ、はい」
「それがこの場所だ」
「…………だからですか……」
「母上が無念で闇に堕ちぬ様に、思い出の場所で、少しでも幸せを思い出してくれる様に、と祖父がな」
アルマが、墓碑の前で屈み、祈りを捧げる。
「…………あ……」
「如何した?」
「花冠!…………作りませんか?」
「え?俺は作れないぞ!」
「お教えします!花冠を作って、お母様に捧げましょう!」
「…………教えてくれ、アルマ」
この場所がアマリリスとメリッサの思い出の場所なら、花冠を捧げれば嬉しい筈だ。
庭園にある花や丘に咲く花を混ぜ、花冠をジークハルトに教えていきながら、なんとか2つ作る。
「ジーク様が不器用なの初めて知りました」
「に、苦手だったのがあったんだな、俺………」
花の茎で切れた手を眺め、爪の間迄葉っぱが挟まっているジークハルトが可愛いので、クスクスとアルマは笑う。
「もう2つ作るか」
「如何してですか?」
「これは母上の、メリッサ夫人の………そして、俺とアルマの分………作って、頭に被って遊んでたんだ。頭の数だけ作る」
「喜ばれますね、きっと」
墓碑の前に綺麗に作れた花冠と、不器用でぐちゃぐちゃの花冠が2つずつ備えられ、祈りを捧げた。
「…………母上、産んでくれてありがとうございます………そのおかげで俺は、メリッサ夫人の娘、アルマを妻に出来ましたよ………シュバルツ公爵の事は終わらせました。もう、無念を忘れ、天国で安らかにお過ごし下さい」
「アマリリス様…………母メリッサは、子供の頃の約束を覚えてました………だから、ジーク様に嫁ぐ事が出来ました……ジーク様を支えて、幸せに致します」
「幸せだぞ、充分………だが、俺もアルマを幸せにしなければならないな」
「私も幸せですよ」
アルマとジークハルトは見つめ合うと、自然と唇を合わせた。
そよ風が舞い、包み込まれた温もりを感じる風がアルマとジークハルトに吹いた。
「…………母上が来たかな」
「そうかもしれないですね。きっとそうですよ」
「アルマ」
「はい」
「子作り、今日からしようか」
「え?あと2年はしない、て」
「医者が何度も大丈夫だ、と念押してな……アルマは健康だから、と……」
「…………はい、ジーク様の子供産みたいです」
「っ!」
「きゃっ!」
ジークハルトにアルマは抱き上げられる。
腕に乗るアルマは、ジークハルトを見下ろす高さ迄上げられ驚いた。
「全ての復讐が終わったら、耐えられないと思った………自分は思ったより我慢が出来なかったらしい」
「不器用なのも分かりましたしね」
「そうだな………アルマに俺が自分の事を知らない所を見つけて貰わないとな。2人なら乗り越えられるとも分かったから」
「っ!…………はい!私も見つけて下さい。ジーク様が私自身知らなかった事を」
「勿論だ………アルマの身体を探索するのは得意だぞ?」
「そ、そういう意味じゃな………んあっ!」
「背中が弱い所とかな」
背筋を指で撫でられ、思わず甘い声が出てしまったアルマ。
もう、閨を想像される話にさせられてしまって、欲しくさせられそうだ。
「よ、夜迄駄目です!」
「待てないな………今から寝室に直行しようか」
「お仕事しましょう!」
「待てない」
「お、下ろして下さい!」
「駄目」
「ジーク様っ!」
ジークハルトは墓碑から離れて歩き出した。
墓碑に捧げられた花冠の花弁が舞う。
『私の子……幸せにね………』
「っ!」
「ジーク様?」
「…………あ、いや……何か言ったか?アルマ」
「下ろして下さい、て言いました」
「それは却下」
「…………もう!暴れますよ!」
「危ないからもっと駄目」
「お誕生日のお祝いさせて下さい!」
「あぁ、そうだな。ベッドでしてくれ」
「邸の皆とですってば!」
「2人きりがいい」
「頑固者!」
「認めてるな、それは」
寝室迄、アルマは下ろされる事がなかったが、執事によりジークハルトは呼び戻されてしまい、結局お預けにされたのだった。
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