2 / 7
第二雪【無邪気】
しおりを挟む来る日も来る日も白が世界を覆う。
真っ白な雪が敷き詰められた世界を見るたび、私は独りなのだと実感させられる。
一歩一歩足を進めるたび、後ろには跡が残るが、この雪国では、すぐにその跡は消え、また白で埋めつくされてしまう。
白は足跡と共に音も消し去ってしまい、そこにあるのは静寂だけ。
それは、まるで自分が此処にはいらないと、言われてるみたいだと感じた。
「なぁ、赤月、赤月は志望大学どこなの?」
私がぐるぐる足跡をつけて廻るのを不思議そうに見ながら、彼が問うた。
不思議なことに私と彼の関係は、あの日から細々と続いていた。
「私基本21時頃からここに居るから、篠宮くんのこと待ってる。」
軽く言ったつもりだっただったが、責任感の強い彼はバイトがある日の夜は律儀にも来てくれた。
基本彼は優しいのだ、私はそんな彼の心理を利用してる。独りが好きだと言いながら、独りが寂しい事だと知っているから。側にいてくれるなら誰でもよかったのだ。
「私?そうだなぁ、どこにしよう。」
「また、そうやってはぐらかす。」
「篠宮くんはそんなに私に興味があるの?」
「そうやって……そりゃ気になるでしょ、せめて県外か県内かぐらい教えてくれてもいいだろ。赤月のレベルなら何処でもいけるだろうけど、僕はそうじゃないし。」
「……?もしかして篠宮くん同じ大学行こうとしてくれてるの?」
「なっ……!?参考までにだよ。赤月がちゃんとした友好関係築けるのか心配だし、一緒に居てあげれるなら居てあげようかなって。って、何言ってんだ僕は……」
「……そっか~。篠宮くん私が心配なのね。ほんと、篠宮くんって自ら面倒くさいことに足突っ込んじゃうよね。お兄ちゃんだからかな?」
「そうかもしれない……けど、僕の弟はここまで手かからないよ。」
「なにそれ?失礼な!私は7歳の子より下なの。」
「やることがね。真冬の寒い中、あんな凍った噴水の上歩いて、冷え切った水かかって楽しいとか、7歳児はそんなことしないし。」
「それは大人だからこそできる技よね。」
「……赤月、それは無理がある。」
「~~っ!いいの!なんでも楽しんだもん勝ちよ!」
「さいですか。」
「篠宮くんも言うようになったよね。最初とは大違い……」
「……そうだね、赤月といると取り繕うだけ無駄な気してくるから。」
「じゃあ、篠宮くんは私といるときは素ってことか!嬉しいな!!」
彼は、ここ数ヶ月で大分言うようになったと思う。
私がそうしやすいように振舞っているのもあるが、ここまで素をだしてくれると私も嬉しく感じた。
このまま、私も家族のことや学校のこと全てさらけ出して素直になれたら、どれほど楽だろう。
でも、きっとそんなことしたら、優しい彼は、同情でも私の側にいてくれるだろう。
それは、私の本意ではない。
さて、志望大学が国外だと言ったら彼はどんな顔をするだろう。
そんな想いを胸にしまい、今日もまた私は、少女のように無邪気に振舞った。
0
あなたにおすすめの小説
本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います
こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。
※「小説家になろう」にも投稿しています
侯爵様の懺悔
宇野 肇
恋愛
女好きの侯爵様は一年ごとにうら若き貴族の女性を妻に迎えている。
そのどれもが困窮した家へ援助する条件で迫るという手法で、実際に縁づいてから領地経営も上手く回っていくため誰も苦言を呈せない。
侯爵様は一年ごとにとっかえひっかえするだけで、侯爵様は決して貴族法に違反する行為はしていないからだ。
その上、離縁をする際にも夫人となった女性の希望を可能な限り聞いたうえで、新たな縁を取り持ったり、寄付金とともに修道院へ出家させたりするそうなのだ。
おかげで不気味がっているのは娘を差し出さねばならない困窮した貴族の家々ばかりで、平民たちは呑気にも次に来る奥さんは何を希望して次の場所へ行くのか賭けるほどだった。
――では、侯爵様の次の奥様は一体誰になるのだろうか。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
行かないで、と言ったでしょう?
松本雀
恋愛
誰よりも愛した婚約者アルノーは、華やかな令嬢エリザベートばかりを大切にした。
病に臥せったアリシアの「行かないで」――必死に願ったその声すら、届かなかった。
壊れた心を抱え、療養の為訪れた辺境の地。そこで待っていたのは、氷のように冷たい辺境伯エーヴェルト。
人を信じることをやめた令嬢アリシアと愛を知らず、誰にも心を許さなかったエーヴェルト。
スノードロップの咲く庭で、静かに寄り添い、ふたりは少しずつ、互いの孤独を溶かしあっていく。
これは、春を信じられなかったふたりが、
長い冬を越えた果てに見つけた、たったひとつの物語。
悪役令嬢の大きな勘違い
神々廻
恋愛
この手紙を読んでらっしゃるという事は私は処刑されたと言う事でしょう。
もし......処刑されて居ないのなら、今はまだ見ないで下さいまし
封筒にそう書かれていた手紙は先日、処刑された悪女が書いたものだった。
お気に入り、感想お願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる