16 / 40
かざねの過去。
しおりを挟む
夜8時・・・
かざね「ん・・・。」
目が覚めた私はゆっくりと体を起こした。
かざね「あれ・・・私・・・?」
ちーちゃんの寝室で眠ってたっぽい感じがする。
記憶の糸を手繰り寄せると、ちーちゃんに抱かれたことを思い出した。
受け入れた余韻が・・・まだ体に残っている。
かざね「あんなの・・・知らない・・。」
自分の体を抱き締めていると、がちゃっ・・・と寝室のドアが開いた。
千秋「起きたか。」
入ってきたのはちーちゃんだ。
かざね「今って・・・夜?」
千秋「そうだよ。体は?しんどくないか?」
ちーちゃんは私の隣に座った。
おでこに手をあてたり、私の首に手をあてたりしてくる。
かざね「だ・・大丈夫・・・。」
千秋「ならいいけど・・・。晩飯食う?梅さんの作り置きだけど。」
かざね「!・・・食べたいっ。」
私はベッドから下りた。
床に足をついて立ち上がった時、腰に違和感が走る。
かざね「いっ・・・。」
千秋「?・・・どうした?」
かざね「・・・腰が痛い。」
千秋「・・・。」
擦りながら歩き始めると、ちーちゃんが私の体を支えてくれた。
千秋「・・・かざねが細すぎて・・・抱き締めすぎた。ごめん。」
かざね「~~~っ!」
気を失うまで抱かれたことを思い出し、
顔が熱くなっていくのがわかる。
千秋「・・・そんな顔するなよ。」
かざね「えっ?」
千秋「自制心がきかなくなる・・・。」
そっと抱き締められる体。
体に残っていたちーちゃんの熱が呼び起こされそうだ。
かざね「ーーーっ!」
千秋「・・・もう一回抱かれてからメシにするか?」
かざね「~~~っ!・・・ごはんっ!」
千秋「わかってるって。・・・温めてくるから体温・・計っときな。」
そう言ってちーちゃんは私に体温計を渡してきた。
かざね「?・・・もう風邪は治ったよ?」
何日も前に完治して、それから風邪は引いてない。
千秋「かざねの平熱を上げるんだよ。そうしたら風邪は引きにくくなる。」
かざね「そうなの?」
千秋「お前は低すぎるんだよ。ほら、計っとけ。」
かざね「むー・・・。」
渋々体温計を脇に挟んだ。
冷蔵庫の中に入ってたおかずたちをレンジに放り込んでいくちーちゃん。
本当なら私がした方がいいんだろうけど・・・レンジの使い方すらわからない。
ピピッ・・・
千秋「お、鳴った?何度だ?」
私は体温計を取りだした。
表示窓の数字は・・・
かざね「35度2分。」
千秋「・・・やっぱ低いな。」
かざね「・・・もともとは36度ちょっとあったんだよ?」
千秋「じゃあなんで下がった?なんか病気でもしたか?」
ちーちゃんは温めた順番にダイニングテーブルにおかずを並べていく。
かざね「両親が亡くなった後・・・ご飯が食べれなくなって。」
千秋「・・・拒食?」
かざね「実家・・・売ったって言ったでしょ?」
千秋「あぁ。」
かざね「あの事故の後・・・大変で・・・・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーー
両親の交通事故のあと、私は支払いに追われていた。
壊してしまった民家の修理。
二人分の葬儀代。
お墓のお金もいる。
大学生だった私は、『家』の『どこ』に『どれだけ』のお金があるのかを知らなかったのだ。
かざね「どうしよう・・・もう1000万近くになってる・・・。」
重なってくる支払い。
私の学費も上乗せしないといけない。
かざね「学校辞める・・・?」
なんでもいいから働いてお金を稼ぐ。
それしか方法はないと思ってた。
そんな時・・・
「この家・・・売ったらどう?」
悩んでるときに提案してきた親せきの人。
かざね「売る・・・?」
「きれいだし・・・売ったら1000万くらいにはなるんじゃない?」
かざね「!!」
1000万あれば支払いが全て終わる。
私の学費も出る。
でも・・・
かざね「思い出が・・・全部無くなる・・・。」
3人でお祝いした誕生日。
泣いた日も、笑った日もあった。
お母さんの作ってくれたごはん。
一緒に遊んでくれたお父さん。
そんな思い出が詰まったこの家を・・・手放すことは・・・。
「『生きてる』あなたのほうが大事だと思うよ?お金を工面できなくて申し訳ないけど・・・。」
かざね「ありがとうございます・・・。」
親切にアドバイスをくれた親せきの人たち。
みんなが帰った後、何日も何日も一人で考えた。
ぼーっと座ったまま、ごはんは殆ど喉を通らない。
ふと・・・リビングを見渡せば目に入るピアノ。
ふわっとかかってる赤のピアノカバーは、お母さんが作ってくれたものだ。
かざね「もうだいぶ弾いてない・・・。」
私はカバーを外し、ピアノの蓋を開けた。
鍵盤に書かれてる『ど』『れ』『み』の文字。
幼いころはどこが『ど』なのかわからず、お父さんが油性のマジックで書いてくれたのだ。
うっすら残ってるその文字をそっと指でなぞる。
かざね「ごめん・・・お父さん、お母さん。・・・この家、手放すよ。」
かざね「ん・・・。」
目が覚めた私はゆっくりと体を起こした。
かざね「あれ・・・私・・・?」
ちーちゃんの寝室で眠ってたっぽい感じがする。
記憶の糸を手繰り寄せると、ちーちゃんに抱かれたことを思い出した。
受け入れた余韻が・・・まだ体に残っている。
かざね「あんなの・・・知らない・・。」
自分の体を抱き締めていると、がちゃっ・・・と寝室のドアが開いた。
千秋「起きたか。」
入ってきたのはちーちゃんだ。
かざね「今って・・・夜?」
千秋「そうだよ。体は?しんどくないか?」
ちーちゃんは私の隣に座った。
おでこに手をあてたり、私の首に手をあてたりしてくる。
かざね「だ・・大丈夫・・・。」
千秋「ならいいけど・・・。晩飯食う?梅さんの作り置きだけど。」
かざね「!・・・食べたいっ。」
私はベッドから下りた。
床に足をついて立ち上がった時、腰に違和感が走る。
かざね「いっ・・・。」
千秋「?・・・どうした?」
かざね「・・・腰が痛い。」
千秋「・・・。」
擦りながら歩き始めると、ちーちゃんが私の体を支えてくれた。
千秋「・・・かざねが細すぎて・・・抱き締めすぎた。ごめん。」
かざね「~~~っ!」
気を失うまで抱かれたことを思い出し、
顔が熱くなっていくのがわかる。
千秋「・・・そんな顔するなよ。」
かざね「えっ?」
千秋「自制心がきかなくなる・・・。」
そっと抱き締められる体。
体に残っていたちーちゃんの熱が呼び起こされそうだ。
かざね「ーーーっ!」
千秋「・・・もう一回抱かれてからメシにするか?」
かざね「~~~っ!・・・ごはんっ!」
千秋「わかってるって。・・・温めてくるから体温・・計っときな。」
そう言ってちーちゃんは私に体温計を渡してきた。
かざね「?・・・もう風邪は治ったよ?」
何日も前に完治して、それから風邪は引いてない。
千秋「かざねの平熱を上げるんだよ。そうしたら風邪は引きにくくなる。」
かざね「そうなの?」
千秋「お前は低すぎるんだよ。ほら、計っとけ。」
かざね「むー・・・。」
渋々体温計を脇に挟んだ。
冷蔵庫の中に入ってたおかずたちをレンジに放り込んでいくちーちゃん。
本当なら私がした方がいいんだろうけど・・・レンジの使い方すらわからない。
ピピッ・・・
千秋「お、鳴った?何度だ?」
私は体温計を取りだした。
表示窓の数字は・・・
かざね「35度2分。」
千秋「・・・やっぱ低いな。」
かざね「・・・もともとは36度ちょっとあったんだよ?」
千秋「じゃあなんで下がった?なんか病気でもしたか?」
ちーちゃんは温めた順番にダイニングテーブルにおかずを並べていく。
かざね「両親が亡くなった後・・・ご飯が食べれなくなって。」
千秋「・・・拒食?」
かざね「実家・・・売ったって言ったでしょ?」
千秋「あぁ。」
かざね「あの事故の後・・・大変で・・・・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーー
両親の交通事故のあと、私は支払いに追われていた。
壊してしまった民家の修理。
二人分の葬儀代。
お墓のお金もいる。
大学生だった私は、『家』の『どこ』に『どれだけ』のお金があるのかを知らなかったのだ。
かざね「どうしよう・・・もう1000万近くになってる・・・。」
重なってくる支払い。
私の学費も上乗せしないといけない。
かざね「学校辞める・・・?」
なんでもいいから働いてお金を稼ぐ。
それしか方法はないと思ってた。
そんな時・・・
「この家・・・売ったらどう?」
悩んでるときに提案してきた親せきの人。
かざね「売る・・・?」
「きれいだし・・・売ったら1000万くらいにはなるんじゃない?」
かざね「!!」
1000万あれば支払いが全て終わる。
私の学費も出る。
でも・・・
かざね「思い出が・・・全部無くなる・・・。」
3人でお祝いした誕生日。
泣いた日も、笑った日もあった。
お母さんの作ってくれたごはん。
一緒に遊んでくれたお父さん。
そんな思い出が詰まったこの家を・・・手放すことは・・・。
「『生きてる』あなたのほうが大事だと思うよ?お金を工面できなくて申し訳ないけど・・・。」
かざね「ありがとうございます・・・。」
親切にアドバイスをくれた親せきの人たち。
みんなが帰った後、何日も何日も一人で考えた。
ぼーっと座ったまま、ごはんは殆ど喉を通らない。
ふと・・・リビングを見渡せば目に入るピアノ。
ふわっとかかってる赤のピアノカバーは、お母さんが作ってくれたものだ。
かざね「もうだいぶ弾いてない・・・。」
私はカバーを外し、ピアノの蓋を開けた。
鍵盤に書かれてる『ど』『れ』『み』の文字。
幼いころはどこが『ど』なのかわからず、お父さんが油性のマジックで書いてくれたのだ。
うっすら残ってるその文字をそっと指でなぞる。
かざね「ごめん・・・お父さん、お母さん。・・・この家、手放すよ。」
36
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる