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ーーーーー
「どっちに行ったら外に出れるんだろう・・・。」
上手く誰にも会わずにお城の外に出れた私は城下町を歩いていた。
幅の広い道は土を固めて整備されてるようで歩きやすく、両側にお店らしき建物が立ち並んでいた。
果物や野菜を売ってる店や、日用品のような雑貨を売ってる店、それに服屋さんや花屋さんなんかもあって、まるで前世であった商店街のような雰囲気だ。
「おや、お嬢ちゃん。何か探し物かい?」
「え?」
「晩御飯に困ってるなら肉はどうだい?」
「えっと・・・・」
近くのお店の人から急にかけられた言葉にどう返していいかわからずに困ってると、反対のお店からも似たような言葉が飛んできた。
「うちは魚があるよーっ!晩御飯にどうだいっ、お嬢ちゃん!」
「え?え?」
「果物もいるんじゃないかい?」
「野菜もたくさんあるよーっ!」
「えー・・・。」
あちこちから声を掛けられ、私は手を小さく振りながらゆっくり歩き始めた。
「いや・・大丈夫・・です・・・・。」
断りながら進んだことで文句を言われたらどうしようかと思ったけど、お店の人たちは私の言葉を聞いた後、笑顔で手を振ってくれた。
「そうかいそうかい!じゃあまた買いに来ておくれよーっ!」
「今度来てくれた時はサービスすっからよーっ!」
「次はもっと新鮮な果物、入れておくよ!」
優しい言葉に安堵しながらお店のある道を過ぎると、今度は住宅のような家が立ち並ぶ場所に入っていた。
小さい子供たちが魔法の練習をしていたり、木の枝を剣に見立てて振り回して遊んでる姿が目に入る。
(『外はどっちですか』なんて聞けない・・・。)
明らかによそ者感丸出しで行くと、どこかで捕まるかもしれない不安があったのだ。
(どうしよう・・・。)
仕方なく私は人通りが少なそうな方を選び、外を目指して歩き始めた。
ーーーーー
同時刻、城ではステラの姿を見つけることができなかった為、会議が開かれていた。
出席者はザウラク国王にトゥレイス、タウ、ワズン、ナシュ、それに補佐のアダーラとミンカルだ。
全員がステラの顔を知ってることから集められた。
「・・・で?ステラはどこに消えたんだ?」
ザウラク国王が全員を見回した。
「城の隅々まで探しましたが姿を捉えれてません。城門に連絡した時にはもう外にでてしまったものと思われます。」
トゥレイスがそう答えると、ザウラク国王は手を額にあてて盛大にため息をついた。
「はぁー・・・ワズン、どう責任を取るつもりだ?」
事の発端はワズンの行動だ。
今回の責任は全てワズンが取るべきなのに、ワズンは悪びれるそぶりも見せずに自論をかまし始めた。
「お言葉ですが、『登録』も済んでないものは自国民ではございません。ディアヘルの刺客の可能性もあります。」
その言葉を聞いて、トゥレイスとタウの補佐であるアダーラとミンカルがぼそっと呟いた。
「ステラって登録しに城にきたんだろ?」
「普通女の子に剣向けるか?」
その言葉が聞こえていたワズンは軽く咳ばらいをし、また自論を語り始める。
「女だろうと不穏なものは排除するに限る。ただでさえピストニアの国民が行方不明になる事件が多発してるんだ。それくらい慎重にならないと王の身に危険が迫るだろう。」
「・・・。」
「・・・。」
最近、ピストニアの国内では若い青年が行方不明になる事件が相次いで起こっていた。
行方不明になったものは戻ってこず、家族からの届け出が増える一方なのだ。
「ちょっといいですか?」
ワズンの話を黙って聞いていたタウが口を開いた。
「どうした?タウ。」
「今は行方不明者の捜索じゃなくて、ステラを探し当てて連れてくればいいんですよね?」
「そうだ。」
「ならナシュに計算させればいい。」
その言葉を聞いた全員が、ナシュを見た。
「面倒くさいから嫌だ。」
行動に移すことを渋るナシュは『計算』で人の行動を読むのが得意だ。
だがその計算は膨大な情報量を元に式を立てることから、面倒くさがってなかなかしてくれない。
「仕事。」
「仕事。」
「仕事だろ?」
「仕事だ。」
「お仕事ですねー。」
ワズン以外の全員に言われ、ナシュは軽くため息をつきながら首を縦に振った。
「はぁ・・なら情報を。なんでもいいからステラに関する情報をくれ。」
「情報ならトゥレイスが持ってるだろう?ずっとステラと一緒だったんだから。」
「あぁ、だが些細なことしか知らないぞ?」
「それで構わん。動向を探るぐらいなら会話で充分だ。」
「なら『面倒くさい』とか言うなよ・・・。」
トゥレイスはナシュにステラとの会話を話していった。
用意した服の代金を気にしていたことや、ワズンに威圧的な態度を取られて身を隠したことなんかも・・。
(・・・小さくて軽かったことは言わなくていいよな。)
言うことと言わないことを選別しながら話していくと、ナシュは一つの可能性をぽつりぽつりと言い始めた。
「遠慮がちな性格なら・・・街中を避けそうだな。逃げたってことを考えたら家に帰りたくなる・・・外への出口を探しながら・・・人がいないところを歩きそうだ。」
ナシュの言葉を聞いたザウラク国王はこの場にいる全員に向かって指令を出した。
「各々隊を連れて街外れを重点的に探せ。城下町を通ったはずだから聞き込みもするように。ワズンはここに残れ。」
「はい!」
「はい!」
「はい!」
「はい!」
「はい。」
指令を受けたトゥレイスとタウ、アダーラ、ミンカルは自分の隊のメンバーを集め、城から飛び立った。
城下町で情報を集めながらステラを探し始める。
「金色の髪をした女の子が通らなかったか?」
「あぁ、通りましたけど・・・」
「どこに行った?」
ステラが行ったであろう方角を重点的に探していく。
一方そのころ、城に残ったナシュは窓から外を見ながらぼそっと呟いていた。
「・・・遠慮がちな性格っぽいから・・・大勢で行ったら逃げるかもしれませんねぇ。」
「お前・・・今、それを言うか・・・?」
頭を抱えるようにして盛大にため息をついたザウラク国王だった。
「どっちに行ったら外に出れるんだろう・・・。」
上手く誰にも会わずにお城の外に出れた私は城下町を歩いていた。
幅の広い道は土を固めて整備されてるようで歩きやすく、両側にお店らしき建物が立ち並んでいた。
果物や野菜を売ってる店や、日用品のような雑貨を売ってる店、それに服屋さんや花屋さんなんかもあって、まるで前世であった商店街のような雰囲気だ。
「おや、お嬢ちゃん。何か探し物かい?」
「え?」
「晩御飯に困ってるなら肉はどうだい?」
「えっと・・・・」
近くのお店の人から急にかけられた言葉にどう返していいかわからずに困ってると、反対のお店からも似たような言葉が飛んできた。
「うちは魚があるよーっ!晩御飯にどうだいっ、お嬢ちゃん!」
「え?え?」
「果物もいるんじゃないかい?」
「野菜もたくさんあるよーっ!」
「えー・・・。」
あちこちから声を掛けられ、私は手を小さく振りながらゆっくり歩き始めた。
「いや・・大丈夫・・です・・・・。」
断りながら進んだことで文句を言われたらどうしようかと思ったけど、お店の人たちは私の言葉を聞いた後、笑顔で手を振ってくれた。
「そうかいそうかい!じゃあまた買いに来ておくれよーっ!」
「今度来てくれた時はサービスすっからよーっ!」
「次はもっと新鮮な果物、入れておくよ!」
優しい言葉に安堵しながらお店のある道を過ぎると、今度は住宅のような家が立ち並ぶ場所に入っていた。
小さい子供たちが魔法の練習をしていたり、木の枝を剣に見立てて振り回して遊んでる姿が目に入る。
(『外はどっちですか』なんて聞けない・・・。)
明らかによそ者感丸出しで行くと、どこかで捕まるかもしれない不安があったのだ。
(どうしよう・・・。)
仕方なく私は人通りが少なそうな方を選び、外を目指して歩き始めた。
ーーーーー
同時刻、城ではステラの姿を見つけることができなかった為、会議が開かれていた。
出席者はザウラク国王にトゥレイス、タウ、ワズン、ナシュ、それに補佐のアダーラとミンカルだ。
全員がステラの顔を知ってることから集められた。
「・・・で?ステラはどこに消えたんだ?」
ザウラク国王が全員を見回した。
「城の隅々まで探しましたが姿を捉えれてません。城門に連絡した時にはもう外にでてしまったものと思われます。」
トゥレイスがそう答えると、ザウラク国王は手を額にあてて盛大にため息をついた。
「はぁー・・・ワズン、どう責任を取るつもりだ?」
事の発端はワズンの行動だ。
今回の責任は全てワズンが取るべきなのに、ワズンは悪びれるそぶりも見せずに自論をかまし始めた。
「お言葉ですが、『登録』も済んでないものは自国民ではございません。ディアヘルの刺客の可能性もあります。」
その言葉を聞いて、トゥレイスとタウの補佐であるアダーラとミンカルがぼそっと呟いた。
「ステラって登録しに城にきたんだろ?」
「普通女の子に剣向けるか?」
その言葉が聞こえていたワズンは軽く咳ばらいをし、また自論を語り始める。
「女だろうと不穏なものは排除するに限る。ただでさえピストニアの国民が行方不明になる事件が多発してるんだ。それくらい慎重にならないと王の身に危険が迫るだろう。」
「・・・。」
「・・・。」
最近、ピストニアの国内では若い青年が行方不明になる事件が相次いで起こっていた。
行方不明になったものは戻ってこず、家族からの届け出が増える一方なのだ。
「ちょっといいですか?」
ワズンの話を黙って聞いていたタウが口を開いた。
「どうした?タウ。」
「今は行方不明者の捜索じゃなくて、ステラを探し当てて連れてくればいいんですよね?」
「そうだ。」
「ならナシュに計算させればいい。」
その言葉を聞いた全員が、ナシュを見た。
「面倒くさいから嫌だ。」
行動に移すことを渋るナシュは『計算』で人の行動を読むのが得意だ。
だがその計算は膨大な情報量を元に式を立てることから、面倒くさがってなかなかしてくれない。
「仕事。」
「仕事。」
「仕事だろ?」
「仕事だ。」
「お仕事ですねー。」
ワズン以外の全員に言われ、ナシュは軽くため息をつきながら首を縦に振った。
「はぁ・・なら情報を。なんでもいいからステラに関する情報をくれ。」
「情報ならトゥレイスが持ってるだろう?ずっとステラと一緒だったんだから。」
「あぁ、だが些細なことしか知らないぞ?」
「それで構わん。動向を探るぐらいなら会話で充分だ。」
「なら『面倒くさい』とか言うなよ・・・。」
トゥレイスはナシュにステラとの会話を話していった。
用意した服の代金を気にしていたことや、ワズンに威圧的な態度を取られて身を隠したことなんかも・・。
(・・・小さくて軽かったことは言わなくていいよな。)
言うことと言わないことを選別しながら話していくと、ナシュは一つの可能性をぽつりぽつりと言い始めた。
「遠慮がちな性格なら・・・街中を避けそうだな。逃げたってことを考えたら家に帰りたくなる・・・外への出口を探しながら・・・人がいないところを歩きそうだ。」
ナシュの言葉を聞いたザウラク国王はこの場にいる全員に向かって指令を出した。
「各々隊を連れて街外れを重点的に探せ。城下町を通ったはずだから聞き込みもするように。ワズンはここに残れ。」
「はい!」
「はい!」
「はい!」
「はい!」
「はい。」
指令を受けたトゥレイスとタウ、アダーラ、ミンカルは自分の隊のメンバーを集め、城から飛び立った。
城下町で情報を集めながらステラを探し始める。
「金色の髪をした女の子が通らなかったか?」
「あぁ、通りましたけど・・・」
「どこに行った?」
ステラが行ったであろう方角を重点的に探していく。
一方そのころ、城に残ったナシュは窓から外を見ながらぼそっと呟いていた。
「・・・遠慮がちな性格っぽいから・・・大勢で行ったら逃げるかもしれませんねぇ。」
「お前・・・今、それを言うか・・・?」
頭を抱えるようにして盛大にため息をついたザウラク国王だった。
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