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異世界での我が家。

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「金貨3枚くらいだ。」


ご主人の言葉に、私は無言でその席を立った。

そして自分の部屋に戻り、金貨を持ってまた戻った。

ご主人の手に金貨を4枚、握らせる。


「・・・は!?」

「作っていくうちに私から要望がでると思うので、これで賄ってもらえませんか?お願いします。」


作りながら誤差はでるもの。

都度都度請求されるくらいなら先払いの方が気前よく作業してくれるだろうと思ってのことだった。


「でも多すぎるぞ・・・!?」

「じゃあ家具も一緒にお願いします。ベッドとか、テーブルとか。店主さんのご主人さんならきっといいものを知ってると思うので。」


にこっと笑いながら言うと、ご主人は照れるようにして笑い返してくれた。


「おうよ!任せろ!」

「ふふっ。よろしくお願いしますっ!」


こうして私の家は無事着工されることになった。

基本的にログハウスのような形になるらしく、ご主人はその材料になる木を最高級のものにしてくれたようだ。

防虫、防獣効果があるらしく、家の周辺にも同じ作用のある木や植物を置いてくれて、私の家の周りは強固なものになっていく。

間取りもゆったりと取ってくれ、一人暮らしにしては贅沢な作りに。

細かい部分の打ち合わせも重ねていき、作りながら話を詰めていく部分もあった。


(そういえばコンロとかどうなるんだろう・・・。)


気になっていた前の世界で言う利器。

薪でもくべて火を起こすのかと思っていたら、ご主人は便利なものがあることを教えてくれたのだ。


「石を使ったものもあるぞ?もちろん薪もあるけど。」

「石?」

「あぁ。」


何でもこの世界は魔法のような石が存在するらしく、『火』の力がある石がついてるコンロならツマミで火をつけることができるそうなのだ。


「くっそ高ぇけどな。どうする?その辺も相談しようと思っててさ。」

「・・・。」

「あ、石は力を失うことがないから買い替えとかはないぞ?そう考えたら薪よりはいいかもな。」


そう言われ、私は前の世界のことを考えた。

薪で火をつける経験なんて林間学校での体験くらいしかなく、それで火加減とか調節できる自信はない。

ましてや火事なんて起こしたら大変なことになってしまう。


「だいぶ高いです?」


値段が気になり聞くと、ご主人は指を2本立てた。


「これくらい。」

「2金貨?」

「!?・・・バカ!200銀貨だよ!!」

「あ・・・・」


まだ物の値段をあまりわかってない私は思いっきり間違えたことに照れ笑いをした。


「へへ・・・。」

「まったく・・・。で?どうする?」

「そりゃもちろん!お願いします!」

「了解。余分にもらってるとこから出すからな?」

「はいっ!」


石を入れた道具は他にもあるらしく、トイレは汚物を浄化してくれる石付きのトイレにしてもらい、お風呂も水を入れれば一定の温度にまでしてくれるものにしてもらうことにした。

ご主人は『腕が鳴るぜ!!』と言ってなぜか乗り気で作業をしてくれ、家は2週間ほどで完成することに。

あまりの早さに不安にもなるけど、コンクリートとかないから『固まるまでの時間』というものが要らないようだ。

人数も20人という大人数での作業だからか、みるみるうちに家が完成していったのだ。


「ふぁ・・・!すごい・・・!」

「どうだい?こんな家は初めてだったからいろいろしてみたぜ?」


完成した家は大きな三角の屋根の平屋だ。

大きい屋根がウッドデッキまで出ていて、雨が降ってもハンモックは濡れなさそうに見えた。

玄関部分の扉を開いて中に入ると、広いリビングとダイニングあり、背面型のキッチンが目に入って来た。

一口コンロだけど覚えのある形のツマミがあって、料理に苦労はしなさそうだ。


「うっどでっき?だったか?そこに出る扉はこういうのがよかったんだろ?」


そう言ってご主人はリビングに付けてくれていた取っ手を持ち、横にスライドさせた。


「わぁ・・・!」


3枚扉の引き戸で作ってもらった窓兼扉。

大きく開け放たれたことで壁がなくなり、ウッドデッキと繋がってとても広いリビングに変化した。

空から降り注いでる太陽の光が木の葉の隙間から漏れ出ていて、幻想的だ。


「こんな作りは初めてだったけど・・・なかなかいいな、これ。」


ご主人も気に入ってくれたようで、腕を組みながらいろんなところに立って見ていた。

ご主人の視線の先にあるウッドデッキには、私が注文したハンモックが設置されている。

ウッドデッキの両端にある大きな柱からロープが伸びていて、布を引っ張ってベッドのようになっているのだ。


「まぁ、ちょっと乗るのにコツがいるんで練習しないといけないですけどね・・・。」


苦笑しながら言うと、ご主人は豪快に笑っていた。


「ははっ!いいんじゃないか?時間はいくらでもあるからな。」


ご主人はこのあと一通り石の入った道具の使い方を教えてくれた。

キッチンのコンロはビー玉くらいの赤い石が埋め込まれていて、それに触れるとコンロ全体が熱くなるらしい。

ツマミを回すとその火力を調節できるようで、まるでIHのコンロみたいだ。


「トイレは宿と同じ物だからわかるな?」

「はいっ。」

「あとは・・・風呂か。風呂はそこの川から水を汲んできて入れろ。メシでも食ってるうちに温まる。」


時間というものがないこの世界。

大体の時間は自分基準で話すようだ。


(30分くらいかな?)


かく言う私も時計が無いから時間はわからない。

体内時計は当てになんかならないし、感覚でしか計れないのだ。


「ま、気になることがあったら言ってこい。まだ宿は取ってあるんだろ?」

「あ・・・はい、住むのにまだ用意しないといけないものありますし・・・。」

「だな。じゃあ戻るか。」


私はご主人と一緒に歩道になってる道を歩いて行った。

ご主人はこの歩道に手すりを作ってくれたようで、歩きやすくなってる。


「ありがとうございます、いろいろ作ってくださって・・・」


家の他にも私の要望を聞いてくれたご主人。

生活するのが楽しみだと思いながら言うと、ご主人は少し遠くを見ながら話し始めた。


「いや?なんか・・・マオが来てから町が変わった気がしてさ、その礼もあるんだよ。」

「え・・私、何もしてませんけど・・・・」

「まぁ、うちのが嬉しそうだったってのもデカいな。滅多に客なんて来ないし、長期で泊まる奴もいないから。だからその礼。」


そう言うご主人の顔が少し赤くなってるような気がした。

夫婦だから・・・パートナーが笑顔でいてくれることが嬉しいのだろう。


「・・・ふふ。いいですね。理想の夫婦です。」

「~~~~っ。ほら、さっさと宿帰るぞ。」


照れてるご主人を微笑ましく見ながら町に戻ると、露店商の一角で争うような声が聞こえてきた。


「ちがうって!!おじさん!!全部で55リルだよ!!」





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