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嫌な雰囲気。
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「乗せていただいてありがとうございました。」
町の入口手前で乗り物から下ろしてもらった私は3人にお礼を言った。
トープさんとセラドンさんが指をパチンっ・・!と、鳴らし、集まっていた木の枝と大きな葉っぱは解散するようにどこかに飛んで行く。
不思議な光景に私はその姿が見えなくなるまで見送った。
「いや?俺たちも楽しかったし。」
私は子供たちと手を繋ぎ、町に向かって歩き始めた。
子供たちは交互に振り返ってはカーマインさんたちに手を振ってる。
「にーちゃん!また遊ぼうな!」
「にーちゃんたち遊んでくれてありがとう!」
そう言う度に私も振り返って会釈をする。
それを何回か繰り返すともう姿が見えないところまで歩いてしまったようで、子供たちは振り返らなくなった。
「マオ、あいつなんか嫌な感じしたよな?」
私の手をくぃっと引きながら聞いてきたのはコパーくんだ。
どうやらマローさんのことを言ってるようだ。
「だいぶ前に銅貨を落とした人だよ?覚えてる?」
見覚えがあったあの人は、ひと月くらい前に広場で銅貨を落とした人だった。
革袋が破れてしまっていて、縫ってあげた記憶がある。
「・・・あ!あの人か!」
「思い出した?じゃあここで問題です、コパーくんは銅貨を何枚拾って渡したでしょうか?」
「え・・・。」
急な問題に地面をじっと見ながら考えるコパーくん。
ちゃんとした枚数を思い出せなくても、思い出そうとすることが大切なのだ。
「ふふ。・・・あ、人を悪く言うのはダメだよ?言われたら嫌でしょ?」
大人になればある程度わかるかもしれないけど、子供のうちはストレートに感情を表現してしまうことがある。
それはいいこともあるけど、良からぬことに繋がってしまうこともあるのだ。
貶し合う世界より褒め合える世界の方が素敵だと思う私は、子供たちは悪口を言わない人に育って欲しいと思ってる。
「えー・・・メイズもそう思っただろ?あいつ、なんか嫌な感じしたよな?」
コパーくんに聞かれたメイズくんも首を縦に振り始めてしまった。
困った事態になりそうでどうしようか悩んでしまう。
「うーん・・どんな風に『嫌な感じ』したの?」
とりあえず理由を聞いてみようと思って問うと、コパーくんは真剣な顔で私を見上げていた。
「にーちゃんのこと、仲間外れにしてた。」
「!!・・・そうだね。」
子供の目から見ても異様な光景だったのだろう。
マローさんはカーマインさんのことを存在しないかのように扱おうとしていたのだ。
(でもカーマインさんのこと『さま』付けで呼んでたから、地位はマローさんの方が下・・・っていうか、同じお城の騎士団ってことになるよね・・。)
お城の物置部屋に居てた時に聞いた『俺たち騎士団が呼ばれた』って言葉。
あの言葉からカーマインさんたちは騎士団の一人で、マローさんも騎士団に所属してることがうかがえた。
『報告』とかいう言葉もあったから、上下関係なのだろう。
(上司を存在しないかのようにするって・・・すごい心臓の持ち主・・。)
そんなことを考えてると、コパーくんとメイズくんが悲しそうな顔をして私を見ていた。
二人ともマローさんの態度に心を痛めたようだ。
「俺、にーちゃんのこと好きなのに・・・。」
「俺も・・・!にーちゃん優しいよ?なのになんであんなことするの?」
「それは・・・・」
きっとマローさんなりに何か理由があっての行動のはず。
その行動が相手や周りを傷つけてることに、彼は気づいてないのだろう。
(『カーマインさまに触れないほうがいい』みたいなこと言ってたよね、あの言葉が理由なのかな・・。)
そんなことを考えてしまうけど、今は子供たちを説得する方が先だった。
そろそろ私たちも解散するのに、心にもやもやが残ったまま返すわけにいかない。
「・・そうだね。どうしてマローさんがあんな態度だったのかはわからないけど・・次に会ったときはどうしてそんなことをするのか聞いてみるのもいいかもしれないね。きっと何か理由があると思うから・・。」
マローさんの言い分を理解できるかどうかはわからない。
それでも聞かなきゃわからないこともあるものだ。
「・・・もう会いたくないけど、会ったら聞いてみる。」
「俺も・・・。」
二人は無理矢理納得してくれたのか、前を向いた。
知ろうとしないと知れないこともある。
「二人がマローさんのことを『嫌』っていう気持ちはわかるけど、悪口はだめだからね?そこは覚えておいて?」
「うん・・・。」
「はーい・・。」
とぼとぼと歩く二人は少しだけ後ろを振り返った。
きっとカーマインさんのことを考えてるのだろう。
(でもストレートに聞くわけにもいかないし、それとなくそんな話題になったら聞けるくらいかなぁ・・。)
ケンカに関しては両方の話を聞いて話し合いをしないと、いい解決方法は出てこない。
今回みたいに一方的に嫌ってるような場合は・・・仲直りなんて難しいことが多いのだ。
(いい大人だし、お互いに接触しないようにして過ごしてるんだろうなぁ、無理して仲良くする必要なんて無いんだろうし。)
仲間や友達は選べるもの。
合わない人と無理矢理仲良くする必要なんてないのだ。
自分のことを大事にしてくれる人を大事にすればいい。
・・・人生は長いようで短いのだから。
「じゃあマオ、また明日ねー?」
繋いでいた手を離して、コパーくんが言った。
もう町の広場に戻ってきていたみたいで、解散する場所に到着していたようだ。
「あ・・・うん、また明日ね?メイズくんもまた明日。」
「はーい!またねー!」
二人は私に手を振りながら駆けて帰って行った。
その姿が見えなくなるまで手を振りながら見送り、帰路につく。
「なんか考えることがたくさんあるなぁ・・・。」
今川先生のこと、枯れた木のこと、マローさんのこと、カーマインさんのこと。
別に考えなくてもいいけど、気になって仕方ない。
「うーん・・・。」
私は家に帰り夕食を食べた後、頭の中で色々整理していった。
カーマインさんたちが使える『力』のことや、聖女は一人しか呼べないという言い伝え。
原初の木である枯れた木がこの世界を豊かにする力を持っていた過去や、突然花を失ったこと。
「・・・ノートが欲しいな。」
あーでもない、こーでもないと考えてるうちにだんだん瞼が重たくなっていく。
今日はいろいろあって体が疲れ切ってるようだ。
「ふぁ・・・急ぐ考え事じゃないし、今日はもう寝よ。」
明日はみんなに何を教えようかと思いながら、灯していた灯りを消す。
まだほんのり見えてるうちにベッドに入り、私は夢の世界に旅立っていったのだった。
「乗せていただいてありがとうございました。」
町の入口手前で乗り物から下ろしてもらった私は3人にお礼を言った。
トープさんとセラドンさんが指をパチンっ・・!と、鳴らし、集まっていた木の枝と大きな葉っぱは解散するようにどこかに飛んで行く。
不思議な光景に私はその姿が見えなくなるまで見送った。
「いや?俺たちも楽しかったし。」
私は子供たちと手を繋ぎ、町に向かって歩き始めた。
子供たちは交互に振り返ってはカーマインさんたちに手を振ってる。
「にーちゃん!また遊ぼうな!」
「にーちゃんたち遊んでくれてありがとう!」
そう言う度に私も振り返って会釈をする。
それを何回か繰り返すともう姿が見えないところまで歩いてしまったようで、子供たちは振り返らなくなった。
「マオ、あいつなんか嫌な感じしたよな?」
私の手をくぃっと引きながら聞いてきたのはコパーくんだ。
どうやらマローさんのことを言ってるようだ。
「だいぶ前に銅貨を落とした人だよ?覚えてる?」
見覚えがあったあの人は、ひと月くらい前に広場で銅貨を落とした人だった。
革袋が破れてしまっていて、縫ってあげた記憶がある。
「・・・あ!あの人か!」
「思い出した?じゃあここで問題です、コパーくんは銅貨を何枚拾って渡したでしょうか?」
「え・・・。」
急な問題に地面をじっと見ながら考えるコパーくん。
ちゃんとした枚数を思い出せなくても、思い出そうとすることが大切なのだ。
「ふふ。・・・あ、人を悪く言うのはダメだよ?言われたら嫌でしょ?」
大人になればある程度わかるかもしれないけど、子供のうちはストレートに感情を表現してしまうことがある。
それはいいこともあるけど、良からぬことに繋がってしまうこともあるのだ。
貶し合う世界より褒め合える世界の方が素敵だと思う私は、子供たちは悪口を言わない人に育って欲しいと思ってる。
「えー・・・メイズもそう思っただろ?あいつ、なんか嫌な感じしたよな?」
コパーくんに聞かれたメイズくんも首を縦に振り始めてしまった。
困った事態になりそうでどうしようか悩んでしまう。
「うーん・・どんな風に『嫌な感じ』したの?」
とりあえず理由を聞いてみようと思って問うと、コパーくんは真剣な顔で私を見上げていた。
「にーちゃんのこと、仲間外れにしてた。」
「!!・・・そうだね。」
子供の目から見ても異様な光景だったのだろう。
マローさんはカーマインさんのことを存在しないかのように扱おうとしていたのだ。
(でもカーマインさんのこと『さま』付けで呼んでたから、地位はマローさんの方が下・・・っていうか、同じお城の騎士団ってことになるよね・・。)
お城の物置部屋に居てた時に聞いた『俺たち騎士団が呼ばれた』って言葉。
あの言葉からカーマインさんたちは騎士団の一人で、マローさんも騎士団に所属してることがうかがえた。
『報告』とかいう言葉もあったから、上下関係なのだろう。
(上司を存在しないかのようにするって・・・すごい心臓の持ち主・・。)
そんなことを考えてると、コパーくんとメイズくんが悲しそうな顔をして私を見ていた。
二人ともマローさんの態度に心を痛めたようだ。
「俺、にーちゃんのこと好きなのに・・・。」
「俺も・・・!にーちゃん優しいよ?なのになんであんなことするの?」
「それは・・・・」
きっとマローさんなりに何か理由があっての行動のはず。
その行動が相手や周りを傷つけてることに、彼は気づいてないのだろう。
(『カーマインさまに触れないほうがいい』みたいなこと言ってたよね、あの言葉が理由なのかな・・。)
そんなことを考えてしまうけど、今は子供たちを説得する方が先だった。
そろそろ私たちも解散するのに、心にもやもやが残ったまま返すわけにいかない。
「・・そうだね。どうしてマローさんがあんな態度だったのかはわからないけど・・次に会ったときはどうしてそんなことをするのか聞いてみるのもいいかもしれないね。きっと何か理由があると思うから・・。」
マローさんの言い分を理解できるかどうかはわからない。
それでも聞かなきゃわからないこともあるものだ。
「・・・もう会いたくないけど、会ったら聞いてみる。」
「俺も・・・。」
二人は無理矢理納得してくれたのか、前を向いた。
知ろうとしないと知れないこともある。
「二人がマローさんのことを『嫌』っていう気持ちはわかるけど、悪口はだめだからね?そこは覚えておいて?」
「うん・・・。」
「はーい・・。」
とぼとぼと歩く二人は少しだけ後ろを振り返った。
きっとカーマインさんのことを考えてるのだろう。
(でもストレートに聞くわけにもいかないし、それとなくそんな話題になったら聞けるくらいかなぁ・・。)
ケンカに関しては両方の話を聞いて話し合いをしないと、いい解決方法は出てこない。
今回みたいに一方的に嫌ってるような場合は・・・仲直りなんて難しいことが多いのだ。
(いい大人だし、お互いに接触しないようにして過ごしてるんだろうなぁ、無理して仲良くする必要なんて無いんだろうし。)
仲間や友達は選べるもの。
合わない人と無理矢理仲良くする必要なんてないのだ。
自分のことを大事にしてくれる人を大事にすればいい。
・・・人生は長いようで短いのだから。
「じゃあマオ、また明日ねー?」
繋いでいた手を離して、コパーくんが言った。
もう町の広場に戻ってきていたみたいで、解散する場所に到着していたようだ。
「あ・・・うん、また明日ね?メイズくんもまた明日。」
「はーい!またねー!」
二人は私に手を振りながら駆けて帰って行った。
その姿が見えなくなるまで手を振りながら見送り、帰路につく。
「なんか考えることがたくさんあるなぁ・・・。」
今川先生のこと、枯れた木のこと、マローさんのこと、カーマインさんのこと。
別に考えなくてもいいけど、気になって仕方ない。
「うーん・・・。」
私は家に帰り夕食を食べた後、頭の中で色々整理していった。
カーマインさんたちが使える『力』のことや、聖女は一人しか呼べないという言い伝え。
原初の木である枯れた木がこの世界を豊かにする力を持っていた過去や、突然花を失ったこと。
「・・・ノートが欲しいな。」
あーでもない、こーでもないと考えてるうちにだんだん瞼が重たくなっていく。
今日はいろいろあって体が疲れ切ってるようだ。
「ふぁ・・・急ぐ考え事じゃないし、今日はもう寝よ。」
明日はみんなに何を教えようかと思いながら、灯していた灯りを消す。
まだほんのり見えてるうちにベッドに入り、私は夢の世界に旅立っていったのだった。
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