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第29話
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「もう挨拶は終わったわね。連れていきなさい」
クロエは無慈悲な口調で続けた。ローラが連れて行かれた時の状況は、両親は疲れた心で涙を流してローラの方に視線をやっていたが、一言も口をきくことができない。
「きゃあああっ私が悪かったからクロエ許してーー!」
甲高い悲鳴を盛大に撒き散らし、ローラはその場からいなくなる。最後までクロエにこんなことはやめてくれと泣いて懇願していた。
ローラは、地下の暗い奈落にまっさかさまに落ちていったのである。部屋にはローラの声が虚しく響くだけだった。
「ミカエルが入院しているのですか?」
ローラが去って、誰もがしばらく無言になったまま動かなくなる。やがてクロエが静かに口をきり、その沈黙もようやく破られた。
ある意味自業自得だろうが、離婚でミカエルが心のバランスが耐え切れなくなって精神を病んでしまい、ついには入院生活を送るようになる。
何となく胸が沈むような淋しさを感じたクロエは、ミカエルに一度くらい会ってみたかったものだと思う。別に再婚する気もないが、今はどんな様子をしてるだろう?それがクロエの興味の中心だった。
「その通りです。クロエ様から捨てられた息子は情けないですが、正常でいられなくなってしまって……」
「もうあの子は駄目です。気が触れてしまいもう私たちには手に負えなくて……」
ミカエルの生活は荒れる一方で、時々暴れ出して家族をてこずらせた。一時はどうしようもなくてミカエルを柱に縛りつけたこともあったと言う。
それでも大声で叫びたてたり、いつまでも狂った笑い声を連発していて施設に入所させるしか方法がなかった。愛していた我が子が望まぬ方向に変わってしまい、両親は深く落ち込んで無気力な状態が続く。
「お兄様……そんなにクロエのことが好きなのですか?」
「うがああああぁあぁあッ!!」
日々ローラは入院している病室を訪ねて、兄のミカエルのそばでつきっきりで看病した。ところが自分が本気で心配していることが、ちゃんと伝わっているのかも分からないような受け答えをされた。
まるで獣のように恥知らずに吠える姿を見ると、ローラはミカエルがかわいそうになって涙が止まらなかった。そんな時、一瞬脳裏をよぎったのがクロエ。彼女なら異常が見られる兄を救えるはずだ。
「お兄様、すぐにクロエを連れてきますから、もう少し辛抱して下さい」
ローラは気を取り直して、クロエの家に向かうべく猛然と走り出した。だが馬車に乗り込む手前で不意に立ち止まる。このまま訪問しても相手にされず邪険に追い返されてしまうだろう。
そう考えたローラは、何か良からぬことを企んでいる悪役の顔になり、数々の悪業を重ねたことで知られていた組織と連絡をとる。それほどまでに兄を助けたい一心で危険に身をさらしたのです。
だが散々な結果となってしまった。地下牢に幽閉されたローラは、離ればなれになった兄のミカエルとの楽しかった出来事を色々と想像し、いつまでも思いを募らせるのだった――
*****
新作「王子が親友を好きになり婚約破棄「僕は本当の恋に出会えた。君とは結婚できない」王子に付きまとわれて迷惑してる?衝撃の真実がわかった。」を投稿しました。よろしくお願いします。
クロエは無慈悲な口調で続けた。ローラが連れて行かれた時の状況は、両親は疲れた心で涙を流してローラの方に視線をやっていたが、一言も口をきくことができない。
「きゃあああっ私が悪かったからクロエ許してーー!」
甲高い悲鳴を盛大に撒き散らし、ローラはその場からいなくなる。最後までクロエにこんなことはやめてくれと泣いて懇願していた。
ローラは、地下の暗い奈落にまっさかさまに落ちていったのである。部屋にはローラの声が虚しく響くだけだった。
「ミカエルが入院しているのですか?」
ローラが去って、誰もがしばらく無言になったまま動かなくなる。やがてクロエが静かに口をきり、その沈黙もようやく破られた。
ある意味自業自得だろうが、離婚でミカエルが心のバランスが耐え切れなくなって精神を病んでしまい、ついには入院生活を送るようになる。
何となく胸が沈むような淋しさを感じたクロエは、ミカエルに一度くらい会ってみたかったものだと思う。別に再婚する気もないが、今はどんな様子をしてるだろう?それがクロエの興味の中心だった。
「その通りです。クロエ様から捨てられた息子は情けないですが、正常でいられなくなってしまって……」
「もうあの子は駄目です。気が触れてしまいもう私たちには手に負えなくて……」
ミカエルの生活は荒れる一方で、時々暴れ出して家族をてこずらせた。一時はどうしようもなくてミカエルを柱に縛りつけたこともあったと言う。
それでも大声で叫びたてたり、いつまでも狂った笑い声を連発していて施設に入所させるしか方法がなかった。愛していた我が子が望まぬ方向に変わってしまい、両親は深く落ち込んで無気力な状態が続く。
「お兄様……そんなにクロエのことが好きなのですか?」
「うがああああぁあぁあッ!!」
日々ローラは入院している病室を訪ねて、兄のミカエルのそばでつきっきりで看病した。ところが自分が本気で心配していることが、ちゃんと伝わっているのかも分からないような受け答えをされた。
まるで獣のように恥知らずに吠える姿を見ると、ローラはミカエルがかわいそうになって涙が止まらなかった。そんな時、一瞬脳裏をよぎったのがクロエ。彼女なら異常が見られる兄を救えるはずだ。
「お兄様、すぐにクロエを連れてきますから、もう少し辛抱して下さい」
ローラは気を取り直して、クロエの家に向かうべく猛然と走り出した。だが馬車に乗り込む手前で不意に立ち止まる。このまま訪問しても相手にされず邪険に追い返されてしまうだろう。
そう考えたローラは、何か良からぬことを企んでいる悪役の顔になり、数々の悪業を重ねたことで知られていた組織と連絡をとる。それほどまでに兄を助けたい一心で危険に身をさらしたのです。
だが散々な結果となってしまった。地下牢に幽閉されたローラは、離ればなれになった兄のミカエルとの楽しかった出来事を色々と想像し、いつまでも思いを募らせるのだった――
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