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第4話

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「セリーヌ!お前がステファニーに陰湿いんしつないじめおこなっていたことは全部知っているぞ!!」
「そんな事しておりません」

突然フレッドが想像を絶することを大声で叫んだ。聡明そうめいで心優しい性格のセリーヌがいじめ何てそんなことはあり得ないことです。セリーヌは落ち着いた声ですぐに反論する。

「嘘をつくな!ステファニーが泣きながら告白してくれたのだっ!!」

次はアランが憤怒ふんぬの顔を作ってセリーヌを威嚇いかくするように言い放った。ステファニーが涙を流しながら、話を打ち明けてくれたと言う。

「そうだよね?ステファニー」
「……その通りです。毎日のようにセリーヌ様に嫌がらせをされて……心が悲しみでいっぱいでした……」

アランは一瞬で顔を変化させて、穏やかな笑顔を向けてステファニーに優しく問いかける。彼女もうなずいて同意をしめした。セリーヌから日常的に悪意たっぷりの言葉をぶつけられて、自分の心がこわれていく感覚を味わったと同情を引く顔で話す。

「ステファニーさん、嘘はやめてください」
「私は嘘なんてついていませんわ!!」

明らかにステファニーはをついている。その事はセリーヌ本人はわかっているのだ。声を荒げたい気持ちを抑えてつとめて冷静な声で言った。

逆にステファニーは異様なくらいの動揺ぶりだった。目にあせりの色が見えて不安で落ち着かない気分で、耳が痛くなるような声を張り上げて叫んだ。

「私たちがいるから安心して大丈夫だよ。今までセリーヌに何をされたのか?辛いだろうけど、もう一度教えてほしい」

ステファニーの甲高かんだかい声で耳に少しダメージを受けたのか?フレッドは苦痛を感じる顔で話かけた。セリーヌに、これまでどのような嫌がらせ行為をされて迷惑したのか?改めて確認させてほしいと見つめながら言う。

「……はい……私が聖女に選ばれる前のことです。貧乏びんぼう貴族は、この学園に相応ふさわしくないから何度もやめろと言われました。他には私のドレスを見て黄ばんでシミがあるので、雑巾ぞうきんだと笑われて床を拭くように言われて……」

 肩をふるわせて涙混じりの声でステファニーは話し始めた。今でこそ聖女に選ばれて裕福な暮らしを手に入れることができたが、それまでは貧しい生活ぶりで、着ているドレスはいつも誰かのおさがりでした。

洗っても所々が薄汚れた服を身につけていた。その事をステファニーは気にして恥ずかしいと思っていたが、庶民階級しょみんかいきゅうと変わらない暮らしの貧乏貴族の娘が、高価な美しいドレスはとても買えなかった。
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