婚約披露パーティで浮気者の王子が毒入りワインを飲み殺害された。妹の王女が犯人を推理し事件を解き明かそうとするが……

第2話 幼馴染で元恋人の男爵令嬢スカーレットの怒り

イザベラがとんでもない事を言い出した。オリビアが第一王子のジェームズと婚約しているのに、第二王子のメイソン23歳とも密かに連絡を取り合い愛しあっていたと言ったのです。最初にジェームズから恋人だとオリビアを紹介された時に、女の勘で何かを感じ取っていてオリビアのことをしたたかな人だと見通していた。実はオリビアは男性を知らない不純度ゼロの女性でしたが、悩み苦しみストレスによって変わってしまった。

イザベラは自分の直感的な判断を信じてオリビアの身辺調査を開始する。結果は消し炭のように真っ黒であった。メイソンの他にも数人恋人関係を結んでいる男性がいた。いずれも高身長で色香のある魅力にあふれた男だった。アメリアは我が妹ながら呆れつつも感心した顔になった。

「それじゃあオリビアが犯人なの？」
「まだそれは分かりませんが……」

二人が小声で話している時だった。

「オリビアさん！あなたがジェームズを殺したのよ！」

女性の声で非常に攻撃的で不安定な声で頭ごなしに叫んだのは男爵令嬢のスカーレットだった。倒れているジェームズに泣きすがるオリビアに険しい目を向けている。スカーレットはジェームズの幼馴染で、オリビアとの婚約が決まるまでは恋人関係で両想いで愛しあっていた。

「おかしな言いがかりはやめて！」
「男爵令嬢ごときが……」
「公爵令嬢のオリビア様に向かって失礼ですわよ」

オリビアのそばで一緒に悲しんでいる取り巻きの女性たちが強く反論した。どうして婚約者のオリビアがジェームズ王子を殺さなくてはならないのか？と苛立ちを覚えたのだ。

取り巻きの女性たちは子爵家の令嬢に伯爵家の令嬢であり、貴族の爵位では下位の男爵家の令嬢のスカーレットに身のほど知らずだと完全に見下した態度を取っている。

「皆さん喧嘩はやめましょう。頭を冷静にして話し合えばわかりあえます。スカーレットさんも根拠もないのに突然変なことは言わないでください。ここにいる人たちが勘違いなさいますわ」

オリビアの取り巻きたちとスカーレットのいがみ合いが始まったが、オリビアは一瞬だけ人の悪い笑みを浮かべてから真剣な瞳でそう言った。けれど腹の中では悲劇のヒロインの自分の邪魔をするなという感じで、うざったいから消えてほしいと思っていた。

「オリビアさん、あなたがジェームズと婚約しているのに他の男性とデートをしたり密会を楽しんでいる事は知っていますからね！」

スカーレットは大声で言った。顔には確信めいたものがあるように感じる。婚約パーティーに招待された大勢の客たちがいる中で何を言い出すのかとオリビアは落ち着きを失った顔つきになり、冷や汗が流れ高鳴る心臓を白くしなやかな手でおさえた。