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第3話 鋭い観察力を持ったイザベラの推理

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犯人(毒を入れていた容器を早くどこかに捨てないと……もしも身体検査でもされたら……)

明るい雰囲気で盛り上がっていた婚約パーティー会場は打って変わって、何人もが叫んで騒々しい声を響かせる中、犯人は犯罪の証拠品をどのようにして処分しようかと考えていた。

「ジェームズお兄様のワインに毒を入れた犯人は逃げ去ってしまったと思うから、周辺を包囲したほうがいいわね」
「アメリアお姉様、少し待ってください。犯人はまだ逃げてないと思います」

アメリアはイザベラに言った。犯人は招待客に紛れて侵入したが、この時点ですでに逃げられてるんじゃないかと言う。犯人の退路を断つために兵で包囲するべきだと主張した。だがイザベラは冷静な口調でその可能性は低いと喋る。

「どうして?」
「犯人は今もこのパーティー会場にいますから」
「え!?本当なの?」
「その可能性はかなり高いですわ。あれを見てください」

どうして?アメリアから疑問を投げかけられたイザベラは、まだ犯人はパーティー会場から出てないと言い招待客たちの中に犯人はいると答えた。アメリアは驚きぶりを見せるとイザベラは、ほぼ間違いないという顔で自信ありげに胸を張って言うと、かぼそい指の一本である方向を指さしました。

イザベラが指さす先には、青銅の花瓶かびんが置かれていた。これがどうしたというのか?アメリアは不思議そうにその花瓶を眺めた。

「アメリアお姉様よくご覧になってください」
「……あっ!花の色が変わっている。それに枯れて元気がなさそう」

美しい花の色で招待客の目を楽しませていた花瓶に生けられたカラフルな色合いの華やかな花は、枯れたようにすっかり茶色く変色してしまっていたので、使われた毒は非常に強い毒性を示している事がわかる。

「犯人はこの花瓶の中に毒の入っていた容器をのために隠した。その結果、容器に幾らか残っていた毒で花がこんな風に変わり果ててしまったのです」

薬害によって変色した花。後に調べさせるとイザベラの言う通り花瓶の中に小さなガラス製の容器が見つかった。イザベラの推理によって少しずつ犯人の残した証拠という足跡が見えることが確認できる。それでも姉妹が二人で状況を把握しながら話している間にも周りの状況は進み騒がしい声が聞こえた。

「スカーレットやめないか!」

第二王子のメイソンが後ろから大きな声をあげた。スカーレットはオリビアが複数の男性と浮気をしていると、婚約者のオリビアにとって鋭く痛い指摘をした時だった。メイソンはオリビアと密会をしているので、オリビアを庇うようにして、逆にスカーレットには反感を持っている雰囲気をかもしだしていた。
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