彼の妹にキレそう。信頼していた彼にも裏切られて婚約破棄を決意。

１５

「ホークが変態だったなんてね」
「僕が変態……？突然話し出して何を言っている」
「言葉通りの意味よ」
「そうだよねー」

この場にいる全員が口をつぐみ、しばらくの間緊張の糸が途切れるように沈黙が部屋を覆う。

その時予兆もなく友人達が何か企んでいるような？いたずらっぽい顔で喋り始める。

僕が変態……？彼はいきなり変質者と言われても理解が追いつかない。彼の頭の中では緊急事態が発生していた。

それもそのはず今まで一度でも、そんな下品さが感じられる言葉を親しい友人から冗談でも言われたことがない。

「最初聞いた時はショックだったわ」
「実は私昔からホークの事好きだったのに」
「私もホークのことはずっと恋い焦がれていたわ」
「いつも夢中になって目で追っていたよね？」
「私も……それなのにね」
「そうね」
「クラスの子達は揃いも揃ってホークの魅力に恋に落ちてのぼせていたでしょ？」
「学園では皆に遠い憧れのように思われていたホーク様が……妹とできていたなんてね」

上品であどけない可愛らしさが表情に残る淑女達は、細くて綺麗な声で水を得た魚のように元気いっぱいにしゃべりまくる。

イブリンの友人達の会話は止まることなく、互いに共感して相槌を打ったり弾みがつくように語り合う。

頂上から流れる水のように、彼女達の会話は盛り上がりひっきりなしに続く。

途切れる気配がなく思い出話に花が咲いたりして、満足そうに顔をほころばせ愉快な気持ちで喜びが胸の中に広がっていました。


「君の友人達はいつまで話し続けるつもりだ？」
「さあ？」
「ここは僕達の今後の幸せを話し合う大切な場だろう？」
「何言ってるの？ここはホークと絶交するための場所でしょ？」

じれったくて仕方ない目つきの彼は、先ほど彼女の友人から言われた男のいやらしさが渦巻いている浅ましい言葉を思い出して、怒りが緩やかに湧き出してきた。

ここは恋人と結婚するために語り合う重要な場所だよね？と黙っている彼女に問いかけるが、別れ話のために会ったのよ？と告げられて頭おかしくなりそうなくらいイラつく。


「僕はこれ以上耐えられない！黙れ！お前達いい加減にしろ！好き放題しゃべってどういうつもりだ！」

とうとう彼が話し続ける友人達に、我慢の限界を越えて声を張り上げ怒鳴り散らす。

小鳥がさえずるように愛嬌いい声で笑顔が絶えなく、開放的に気持ちよく会話していた友人達がピタリと止まる。

そして彼のことを不潔な存在だと思うようなゴミを見る視線を向けるのです。

「なんだその目は？僕をそんな軽蔑した目で見るんじゃない！」

彼は変態と言われたのもまだ全然理解できない。にもかかわらず自分勝手にふるまう彼女の友人達にも腹の虫がおさまらない。おまけに冷たい刺すような視線で見られたらたまったものではない。

「フフッ……」

だけど彼女だけは彼のあまりの困った顔に少し可笑しい気持ちになりプッと吹き出してしまう。