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海から帰って来て今は自分の部屋。彼の記憶の中によみがえる。なんで妹なんかと関係を……と彼女に責められていた。

「私はこんなにも傷ついたのよ!どうして私を苦しめるの!」

そんな自分だけが被害者だって文句をたれる彼女に力強い声で反論した。

「そんなにしたかったら、他に女を作ったらどう?って作れって言ったのはイブリンだ!」
「あの時はホークに勢いで言ったかもしれないけど……」
「言い訳をするな!イブリンが言ったくせに!」
「でも妹と浮気するとは思わなかったし……」
「僕とフランソワのことをこれでもかというほど……変態と悪口を言い続けて……ひどいじゃないか!」

今後どうしたいか……。彼は意気地がないので決められない。だけどいくつか選択を考えて、それがその時の気分で毎日変わっていく。

一つ目の考えは最初の頃の二人に戻ること。これは浮気をする前から彼が持ち続けてた淡い希望。彼女が都合よく納得してくれるわけもない将来。

二つ目は、なぜ自分が情けないほどに絶望的な状況になってしまったか……?過去を振り返って反省して、彼女と人生をやり直す。

浮気した自分にそんな権利はないのは理解している。だけどこれは彼の心の中にある一点の曇りもない悲願。

現在恋人としては、本当に最もひどい状態。でも二人に楽しい弾みが胸にあったこともこれまで数えきれないほど経験した。

(いつかイブリンの中で復縁して良かったと思えるように、僕は大事にしていきたい。お互いに笑顔溢れる未来を信じたい……)

実に独りよがりな彼です。


三つ目はやはり別れ。頑張ろうとするんだけど、ふと気づくと彼女に相手にしてもらえない不満がつのり壊れそうになる。自分にため息をつく日々。

彼は考えないようにしていますが、どうしても海のことが脳裏にこびりつく。そして彼女の機械みたいな人間味を感じさせない表情。

夜中に突然目が覚めて昨日のことのように思い出す。今でも彼女には怖くて問い詰められないから、あの時何が彼女の心にあったのか不明。

自分は確かに彼女を傷つけた。でも、あの時まで溺死させるほど憎まれてるなんて予想だにしなかった。彼は絶対に別れたくないけど、そんな人と結婚するなんて無理なのだろうかと思う……。

「もしイブリンとの間に子供がいたら……仲の悪い両親に育てられるのは子供にとって不幸だよね?」

今となっては完全に、彼女と寝所を共にすることも無いのに想像の翼を広げる。婚約も叶わないのに、あろうことか子供ができたら……なんて現実逃避を繰り返す。
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