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14話
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「はぁ、それでは失礼いたします」
「ナタリア話は終わってないぞ!」
「手を放してください」
ナタリアは別れの挨拶をすませると席を立って歩き出した。ラウルの体は反射的に動いてナタリアの腕をつかみ憤懣の残った眼で睨んで怒鳴りつけた。放してと言うナタリアにラウルは素直に応じてくれそうにもない。
「放してほしいなら婚約破棄を取り消せ!」
「痛い……」
ラウルは婚約不履行を強く非難してナタリアに取り消すように迫ってきた。ナタリアが同意しないので腕をつかむ手に力が入っていく。たちまち耐えられないほど強烈になり、ナタリアはあまりの痛さに涙が出そうになるのをこらえた。
「やめろ!!!」
その時突然、頼もしい青年の声が聞こえた瞬間ラウルは後ろへのけぞって倒れた。ラウルは声の主に殴られてしまったようだ。
「大丈夫ですか?」
「あっ、はい、ありがとうございます」
助けてくれた青年はかなり質のいい服を着ていた。すらりと上背があって美貌だったが少し冷たい印象を与える顔立ちをしている。青年は紳士的な振る舞いでナタリアの身を気遣ってくれる心の余裕を見せた。
ナタリアは半ば驚き同時に戸惑いながらもお礼を言うと、青年は以外に少年のように無邪気な笑顔を向けてきてナタリアはなんともいえず和んだ心地がした。
「きゃあああっ」
「危ない!」
ナタリアは軽く会釈して歩き出した瞬間ふいに悲鳴を上げた。つまずいてよろめいて倒れそうになる。青年は危うく転びそうになったナタリアをしっかりと受け止めてくれた。
「本当に大丈夫ですか?」
「あの、すみません」
青年と目が合うとナタリアは顔を赤くして素早く目を逸らした。青年は心配そうな声で尋ねるとナタリアは迷惑をかけて申し訳ないと気恥ずかしい思いがした。ナタリアの心臓は早鐘のように鳴り響いている。
「誰だかわからないがよくも殴ってくれたな!」
青年に不意打ちを受けて倒されたラウルが立ち上がっていた。言葉に挑むような調子があり額に青筋を立ててこっちへ近寄ってきた。このままでは大変な騒ぎになってしまうと思いナタリアは困ったような顔をして立っていた。
「ラウルは相変わらず女性への接し方がスマートじゃないな」
「お前どうして僕の名前を知ってるんだ!」
「ふふっラウル僕の顔を忘れたのか?」
青年はフレンドリーな笑顔をつくり親しげな口調で声をかける。どうやら知り合いらしいがラウルは最初思い出すことが出来ず喧嘩腰で食ってかかろうとする。青年はふふ、と笑って余裕のある態度を続けるとラウルは苦渋の表情になった。
「……もしかして、クラウドか?」
「そうだよ。久しぶりだね」
少し悩んだ末に遠い記憶を呼び起こして名を口にした。青年は懐かしそうなまなざしでラウルを見て語っている。青年の正体は隣国ロマリア王国の王太子であるクラウドだった。
後でナタリアが質問するとクラウドは同じ場所で一部始終を見ていたという。ラウルだから殴ったというのもあるし二人の中では日常の挨拶程度だそうで、クラウドは普段は知らない他人にすぐに手をあげるような男性ではない。
「ナタリア話は終わってないぞ!」
「手を放してください」
ナタリアは別れの挨拶をすませると席を立って歩き出した。ラウルの体は反射的に動いてナタリアの腕をつかみ憤懣の残った眼で睨んで怒鳴りつけた。放してと言うナタリアにラウルは素直に応じてくれそうにもない。
「放してほしいなら婚約破棄を取り消せ!」
「痛い……」
ラウルは婚約不履行を強く非難してナタリアに取り消すように迫ってきた。ナタリアが同意しないので腕をつかむ手に力が入っていく。たちまち耐えられないほど強烈になり、ナタリアはあまりの痛さに涙が出そうになるのをこらえた。
「やめろ!!!」
その時突然、頼もしい青年の声が聞こえた瞬間ラウルは後ろへのけぞって倒れた。ラウルは声の主に殴られてしまったようだ。
「大丈夫ですか?」
「あっ、はい、ありがとうございます」
助けてくれた青年はかなり質のいい服を着ていた。すらりと上背があって美貌だったが少し冷たい印象を与える顔立ちをしている。青年は紳士的な振る舞いでナタリアの身を気遣ってくれる心の余裕を見せた。
ナタリアは半ば驚き同時に戸惑いながらもお礼を言うと、青年は以外に少年のように無邪気な笑顔を向けてきてナタリアはなんともいえず和んだ心地がした。
「きゃあああっ」
「危ない!」
ナタリアは軽く会釈して歩き出した瞬間ふいに悲鳴を上げた。つまずいてよろめいて倒れそうになる。青年は危うく転びそうになったナタリアをしっかりと受け止めてくれた。
「本当に大丈夫ですか?」
「あの、すみません」
青年と目が合うとナタリアは顔を赤くして素早く目を逸らした。青年は心配そうな声で尋ねるとナタリアは迷惑をかけて申し訳ないと気恥ずかしい思いがした。ナタリアの心臓は早鐘のように鳴り響いている。
「誰だかわからないがよくも殴ってくれたな!」
青年に不意打ちを受けて倒されたラウルが立ち上がっていた。言葉に挑むような調子があり額に青筋を立ててこっちへ近寄ってきた。このままでは大変な騒ぎになってしまうと思いナタリアは困ったような顔をして立っていた。
「ラウルは相変わらず女性への接し方がスマートじゃないな」
「お前どうして僕の名前を知ってるんだ!」
「ふふっラウル僕の顔を忘れたのか?」
青年はフレンドリーな笑顔をつくり親しげな口調で声をかける。どうやら知り合いらしいがラウルは最初思い出すことが出来ず喧嘩腰で食ってかかろうとする。青年はふふ、と笑って余裕のある態度を続けるとラウルは苦渋の表情になった。
「……もしかして、クラウドか?」
「そうだよ。久しぶりだね」
少し悩んだ末に遠い記憶を呼び起こして名を口にした。青年は懐かしそうなまなざしでラウルを見て語っている。青年の正体は隣国ロマリア王国の王太子であるクラウドだった。
後でナタリアが質問するとクラウドは同じ場所で一部始終を見ていたという。ラウルだから殴ったというのもあるし二人の中では日常の挨拶程度だそうで、クラウドは普段は知らない他人にすぐに手をあげるような男性ではない。
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