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第6話

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「お父様、少し落ち着いてください。お体にさわります」
「そんなことはどうでもよいわ!」

陛下は魔法が使えないという絶望のあまり大声で叫んだ。その影響えいきょうで心臓が悪い陛下は、よろめいて倒れそうな顔色をしていた。

とっさに息子のガブリエルが体を支えながら、冷静さを取り戻してくださいと本気で心配していた。だが陛下はどうでもいいと再び怒っているような大声を上げる。

魔法を使えないことが絶対にあってはならない大変な出来事で、陛下は自分の体なんか知ったことではないという気分になった。

「はぁーっ、はぁーっ」
「……大丈夫ですか?医者を呼びましょうか?」
「少し興奮こうふんしただけだ……すぐに落ち着く……」

陛下は息苦しさを覚えて荒い息づかいになっていた。国王陛下で父でもあるから、息子は助けなければならないと思って、医師を呼ぶべきであろうかと声をかける。

ところが、当の本人は面倒なことになるのではないかと考えをめぐらせて、心配することはないと苦しそうな声をだして引き止めた。何度か深呼吸をして乱れた呼吸を整えながら、父と息子は黙ったまま互いを見つめ合う。

「ガブリエル、よく聞くのだ!」
「は、はい!」

――しばらくして、ようやく心の平静を取り戻したとみえて、陛下は立ち上がるとガブリエルも跳ねるみたいに立ちあがりました。即座に息子に向かって、見通しの良い広い部屋中にひびく声を張りあげた。

何か圧倒的な迫力で叫んだ父に、心臓が止まりそうになり足がふらついたガブリエルは、きつめられた厚い真っ赤な絨毯じゅうたんの上に転びそうになったが、何とか踏みとどまって返事をする。

「魔法が使えないことを何としてもよその国に知られてはいかん!繁栄はんえいを誇っているディオール帝国が崩壊ほうかいするほどの最重要の課題だ!!」

陛下の頭の中は、ディオール帝国が昔の弱小国家で、誰もが悲しい顔で苦しい生活を強いられて、助けを求める悲鳴を上げている光景だった。

外国に魔法が使えないと知られれば、侵略軍しんりゃくぐんに対して抵抗も出来ずに、国民が自尊心じそんしんを傷つけられて命を落として国が簡単に壊れてしまうだろう。そうなると、また地獄の生活が始まってしまうのだ。陛下は、そのことを一番恐れて青ざめた顔で神経質に身体を震わせる。

大至急だいしきゅう魔法が使えなくなった原因をつき止めて、できるだけ早く解決するのだっ!!!!!」
「お任せください!」

完全な不意打ちで、どうして突然魔法が使えなくなったのか原因不明のままですが、とにかく一刻も早くこの国に魔法が復活するように、息子に指示を出した。

陛下から命を受けて王太子ガブリエルは素早く対応した。その日のうちに、この国に何が起こっているのか原因を調べる組織が結成された。

「――私の愛する国に何が起こっているの……!?」

実のところ、ディオール帝国の最高権力者は国王陛下ではありませんでした。一番偉い真の頂点はである。エリザベス女王は急な用事があり、今は外出中でこの場に居合わせていないのです。

エリザベスが不在なので、頭の悪い夫に少しの間任せていただけであった。彼女は夫と違ってかなり優秀な女性でした。女王はクロエの能力と本来の姿も知っている。

クロエに婚約破棄したばか息子のガブリエルと夫の陛下は、クロエを大事にしないで結果的に国から追放した。その悪質性について、エリザベス女王は非常に厳しく断罪するのだった。
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