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第50話
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「よく寝たのう。息子はもう逝ってしまっただろうな……」
数時間後、十分な睡眠を得たような気分で陛下は自然と目覚める。不意にレオナルドの事が頭をよぎって低い声でつぶやくように言う。実は最愛の息子を失った喪失感が心を支配していた。だがアリーナを裏切って逃れられない運命とすれば諦めざるを得なかった。
陛下は息子との心に残る楽しい思い出を頭の中に思い浮かべていた。レオナルドは生まれつき体が弱くて溺愛していたな……。陛下は切ない表情になり静かに微笑んだ。
「――陛下!」
そこへ突然、男の大声が無遠慮に耳に響いて、陛下は不機嫌そうに顔をしかめた。ここはアリーナの屋敷でもあるし、礼儀正しいとは言えないと思った。
「なんだ?」
急に騒々しく部屋へ入ってきたのは、いかにも男らしい彫りの深い顔立ちで、護衛の筋骨たくましい大男だった。顔には焦りと不安の色が見える。陛下は何かあったのか?と聞いた。
「レオナルド様がああああああああああああああああああぁぁーっ!!」
男はすさまじい絶叫を発した。腹の底から絞り出すような気合の声であった。陛下は寝起き直後の寝ぼけた頭が引き締まると同時に、全くうるさい奴だと呆れた。
「息子がこの世を去ったのだろう?」
「いや、あの、それが……」
陛下は言わなくてもわかっておるといった感じである。だけど何となく男の様子がおかしい。言葉に詰まって言い淀んでいるのです。
「はっきり言わぬか!」
いきなり大声を上げて部屋に飛び込んできて、男は煮え切らない態度である。陛下もイラついた表情を見せながら厳しい言い方をした。
「レオナルド様がいなくなりました……」
「は?」
こ奴は何を言っておるのだ?陛下は事情をよく理解できなくて、いささか間抜けな声を出した。
「少し目を離していたらレオナルド様の姿がどこにもなくて……」
「誰かが移動させたのではないか?」
「それが誰に聞いても知らないと言うのです」
男は食事をとるためにアリーナの屋敷に入ったと言う。その場には男の他にはレオナルド以外は誰もいなかった。レオナルドがしつこく絡んでキスを要求した女性の付き人や他の数人の付き人たちは、二人を残してとっくに屋敷の待機室に控えていた。
誰かがレオナルドを移動させたのだろう?陛下は至極当然なことのような気がして話しますが、男は聞いてみたが全員が首を横に振ってわからないと答えた。
「そんなわけはなかろう!死体が勝手に動いたとでもいうのか?」
「お言葉ですが最後に見た時は、レオナルド様は崖っぷちぎりぎりですが生きておられましたよ」
「それはいつだ?」
「今から20分ほど前でしょうか……?」
「ばかを言うな!私は3時間は寝ていたのだぞ?息子は普通なら死んでいるだろう……」
数時間後、十分な睡眠を得たような気分で陛下は自然と目覚める。不意にレオナルドの事が頭をよぎって低い声でつぶやくように言う。実は最愛の息子を失った喪失感が心を支配していた。だがアリーナを裏切って逃れられない運命とすれば諦めざるを得なかった。
陛下は息子との心に残る楽しい思い出を頭の中に思い浮かべていた。レオナルドは生まれつき体が弱くて溺愛していたな……。陛下は切ない表情になり静かに微笑んだ。
「――陛下!」
そこへ突然、男の大声が無遠慮に耳に響いて、陛下は不機嫌そうに顔をしかめた。ここはアリーナの屋敷でもあるし、礼儀正しいとは言えないと思った。
「なんだ?」
急に騒々しく部屋へ入ってきたのは、いかにも男らしい彫りの深い顔立ちで、護衛の筋骨たくましい大男だった。顔には焦りと不安の色が見える。陛下は何かあったのか?と聞いた。
「レオナルド様がああああああああああああああああああぁぁーっ!!」
男はすさまじい絶叫を発した。腹の底から絞り出すような気合の声であった。陛下は寝起き直後の寝ぼけた頭が引き締まると同時に、全くうるさい奴だと呆れた。
「息子がこの世を去ったのだろう?」
「いや、あの、それが……」
陛下は言わなくてもわかっておるといった感じである。だけど何となく男の様子がおかしい。言葉に詰まって言い淀んでいるのです。
「はっきり言わぬか!」
いきなり大声を上げて部屋に飛び込んできて、男は煮え切らない態度である。陛下もイラついた表情を見せながら厳しい言い方をした。
「レオナルド様がいなくなりました……」
「は?」
こ奴は何を言っておるのだ?陛下は事情をよく理解できなくて、いささか間抜けな声を出した。
「少し目を離していたらレオナルド様の姿がどこにもなくて……」
「誰かが移動させたのではないか?」
「それが誰に聞いても知らないと言うのです」
男は食事をとるためにアリーナの屋敷に入ったと言う。その場には男の他にはレオナルド以外は誰もいなかった。レオナルドがしつこく絡んでキスを要求した女性の付き人や他の数人の付き人たちは、二人を残してとっくに屋敷の待機室に控えていた。
誰かがレオナルドを移動させたのだろう?陛下は至極当然なことのような気がして話しますが、男は聞いてみたが全員が首を横に振ってわからないと答えた。
「そんなわけはなかろう!死体が勝手に動いたとでもいうのか?」
「お言葉ですが最後に見た時は、レオナルド様は崖っぷちぎりぎりですが生きておられましたよ」
「それはいつだ?」
「今から20分ほど前でしょうか……?」
「ばかを言うな!私は3時間は寝ていたのだぞ?息子は普通なら死んでいるだろう……」
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