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第51話

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レオナルドが忽然こつぜんと姿を消してしまった。そう護衛の男の口から伝えられる。陛下は大きな混乱で平静を保つことができなかった。とりあえず今は合流しようと思い、アリーナたちがいるところに向かって歩き出した。

「――レオナルドがいなくなった……!?」

陛下が目覚める数分前。一緒にお茶を飲んでいたらメイドがそっと耳打ちした。アリーナは、どぎもを抜かれてしまい思わず驚きの声をあげたのであった。

「息子がどうしたの?」

レオナルドに何かあったの?優雅ゆうがな仕草で読書にふけっていた王妃が、自分の子供の名前が耳に入ってただちに反応する。読書好きな王妃は壁にずらりと並んだ本棚から何冊か手に取って読んでいた。

「レオナルドがになって騒いでいるみたいです」
「え?息子はもう死んだんじゃないの?」

アリーナからレオナルドが、行方をくらましてしまったと聞かされた王妃は少々困惑しているようだった。どうしてかと言うと、最後に見た息子の姿は本当に虫の息で倒れて、苦しそうなうめき声を立てていたのです。

「そもそも生きている事が信じられませんわ」

焼きたてのクッキーを上品に一口食べながら、ミレーユが以外という顔色でしゃべった。弱り果てている状態で自由に動けたら、ばか王子はゾンビ化でもしてるのか?と心の中で思っていた。

「レオナルド生きてるの?しぶとい男ね……」

彼はまだこの世に存在しているの?レオナルドの子供を妊娠してるカトリーヌが呆れつつも感心してしまった。そして大きな口を開けてアップルパイにかぶりついた。

「今、レオナルドをさがしているみたいですね」

アリーナは紅茶をすすってから静かに言った。現在、陛下と王妃の付き人たち全員でレオナルドの念入りな捜索そうさくをしているみたいだという。それなのに先ほどのメイドからは、いまだに発見されていないと報告された。そう思うと誰もが不思議な顔をする。

「そのうち見つかりますよ。あの体で遠くに行けるわけがありませんからね」

カトリーヌが実にあっけらかんとした声を出す。もうレオナルドへの愛情はキスを拒否された時から無くなっているのだ。よくも私のキスを受け入れなかったわね……あんな男がどうなろうが知らないわよ……という気持ちで憎しみのほうが強いのである。

「それにしてもどの料理も美味しいわ」

すかさず濃厚で柔らかいチーズと野菜をはさんだサンドイッチに手を伸ばして、その上オムレツを口の中に入れると幸福そうな表情で舌鼓したつづみをうっていた。

「あなたほんとよく食べるわね……」
「私はお腹に子供がいるんだから二人分食べないといけないでしょ?」

恐ろしいばかりの食欲にミレーユがつい言ってしまうと、カトリーヌは気にしませんわという口調で答えるのだった。
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