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バートとレベッカ
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「聞きました、ついにあの女と婚約破棄してくださったのですね!」
例の件の翌日、早速屋敷にレベッカがやってくる。今までは一応外聞とかを気にしていたが、もう婚約者はいないからそういう面倒なことも気にしなくていい。
僕は堂々とレベッカを屋敷に迎え入れる。
「やあレベッカ、これからは堂々と会えるね」
「嬉しいですわ」
そう言ってレベッカは無邪気にほほ笑む。身に着けている高級なドレスや綺麗なアクセサリーとあいまってとても可愛い。
その笑顔に僕はついどきどきしてしまう。
リッタはいい子ではあったが、一緒に過ごしていてこんな気持ちになることはなかった。
そんな彼女を見ると改めて婚約破棄して良かったと思う。
「さあ、早速僕の部屋に来てくれ」
これまでは応接室に通していたが、もう細かいことは気にしなくていいだろう。
僕は自室にレベッカを連れ込み、ソファに座る。
しばらく他愛のない話をしていたが、やがて少しずつ隣に座っているレベッカが体を寄せてくる。そのため僕の体と密着した。
そして彼女は僕の方を上目遣いで見上げてくる。
それを見て僕は彼女の意図を察した。
「おいおいレベッカ、まだ日は高いよ」
「でも私、バート様があの女よりも私を選んでくれたのが嬉しくて」
「全く、レベッカは健気で可愛いな」
僕も「まだ日は高い」などと言ったものの、胸元を大胆に露出した色気のあるレベッカが隣で密着してきた時からもう長くは我慢できないと思っていた。
彼女の言葉が引き金となり、僕は手を伸ばすのだった。
それからどのくらい経っただろうか。
気が付くと、僕たちはベッドの上で一緒に横になっていた。互いの顔が間近になったまま横になっている。まさにこの世で一番親密な距離と言えるだろう。
「良かったよ、レベッカ」
「私もバート様に愛されて幸せです」
そう言って僕たちは余韻を楽しむ。
するとそんな雰囲気の中だった。
「あの、バート様……」
「ん、何だ?」
「実は本当は父に言ってはいけないと言われているんですが、バート様にだけは伝えたいという話がありまして」
レベッカが小声で言う。一体何だろうか。
「何だ?」
「すみません、忘れてください、やっぱりバート様と言えど言ってはいけないことでした」
そう言って慌てて彼女が口を塞ぐ。
普段そういうそそっかしいことはしないので少しらしくないが、そんなことを言われると余計に気になってしまう。
「待ってくれ、僕と君の仲だろう? それに誰にも言わないって」
「本当ですか?」
「ああ、本当だ。君のために僕は婚約破棄もしたんだ。信じてくれ」
「そうでしたね……実は父上が掴んだ情報によると、近々オルメタ鉱石の値が上がるらしいのです」
「へ?」
オルメタ鉱石というのはマイナーな金属の鉱石だ。
加工もしづらいし強度も高くないので今のところ大して出回っていないし、大した値段でもない。
「何でも、その鉱石に特殊な加工を加えると強度の高い剣を打つことが出来るらしくて……それで密かに私たちは鉱石を集めているのですが……バート様も今のうちから鉱石を買えば大儲け出来るかもしれません」
「なるほど」
確かにそういう話であればシーモア商会で鉱石を独占した方が儲けが大きくなるから他の人に言うのははばかられることだろう。
だがレベッカは僕のためにわざわざ話してくれたに違いない。
やはりレベッカは健気で可愛いな、と思ってしまう。
「ありがとうレベッカ」
そう言って僕は彼女の頭を撫でる。
「いえ、バート様のためですから。もしこの話に乗るおつもりでしたら我が商会にまとまったお金を預けてくだされば代わりに鉱石を買い集めることが出来ますよ」
「分かった。何から何までありがとう」
さすがはレベッカだ。こんなに僕のことを考えてくれるなんて。
こうして夜は更けていくのだった。
例の件の翌日、早速屋敷にレベッカがやってくる。今までは一応外聞とかを気にしていたが、もう婚約者はいないからそういう面倒なことも気にしなくていい。
僕は堂々とレベッカを屋敷に迎え入れる。
「やあレベッカ、これからは堂々と会えるね」
「嬉しいですわ」
そう言ってレベッカは無邪気にほほ笑む。身に着けている高級なドレスや綺麗なアクセサリーとあいまってとても可愛い。
その笑顔に僕はついどきどきしてしまう。
リッタはいい子ではあったが、一緒に過ごしていてこんな気持ちになることはなかった。
そんな彼女を見ると改めて婚約破棄して良かったと思う。
「さあ、早速僕の部屋に来てくれ」
これまでは応接室に通していたが、もう細かいことは気にしなくていいだろう。
僕は自室にレベッカを連れ込み、ソファに座る。
しばらく他愛のない話をしていたが、やがて少しずつ隣に座っているレベッカが体を寄せてくる。そのため僕の体と密着した。
そして彼女は僕の方を上目遣いで見上げてくる。
それを見て僕は彼女の意図を察した。
「おいおいレベッカ、まだ日は高いよ」
「でも私、バート様があの女よりも私を選んでくれたのが嬉しくて」
「全く、レベッカは健気で可愛いな」
僕も「まだ日は高い」などと言ったものの、胸元を大胆に露出した色気のあるレベッカが隣で密着してきた時からもう長くは我慢できないと思っていた。
彼女の言葉が引き金となり、僕は手を伸ばすのだった。
それからどのくらい経っただろうか。
気が付くと、僕たちはベッドの上で一緒に横になっていた。互いの顔が間近になったまま横になっている。まさにこの世で一番親密な距離と言えるだろう。
「良かったよ、レベッカ」
「私もバート様に愛されて幸せです」
そう言って僕たちは余韻を楽しむ。
するとそんな雰囲気の中だった。
「あの、バート様……」
「ん、何だ?」
「実は本当は父に言ってはいけないと言われているんですが、バート様にだけは伝えたいという話がありまして」
レベッカが小声で言う。一体何だろうか。
「何だ?」
「すみません、忘れてください、やっぱりバート様と言えど言ってはいけないことでした」
そう言って慌てて彼女が口を塞ぐ。
普段そういうそそっかしいことはしないので少しらしくないが、そんなことを言われると余計に気になってしまう。
「待ってくれ、僕と君の仲だろう? それに誰にも言わないって」
「本当ですか?」
「ああ、本当だ。君のために僕は婚約破棄もしたんだ。信じてくれ」
「そうでしたね……実は父上が掴んだ情報によると、近々オルメタ鉱石の値が上がるらしいのです」
「へ?」
オルメタ鉱石というのはマイナーな金属の鉱石だ。
加工もしづらいし強度も高くないので今のところ大して出回っていないし、大した値段でもない。
「何でも、その鉱石に特殊な加工を加えると強度の高い剣を打つことが出来るらしくて……それで密かに私たちは鉱石を集めているのですが……バート様も今のうちから鉱石を買えば大儲け出来るかもしれません」
「なるほど」
確かにそういう話であればシーモア商会で鉱石を独占した方が儲けが大きくなるから他の人に言うのははばかられることだろう。
だがレベッカは僕のためにわざわざ話してくれたに違いない。
やはりレベッカは健気で可愛いな、と思ってしまう。
「ありがとうレベッカ」
そう言って僕は彼女の頭を撫でる。
「いえ、バート様のためですから。もしこの話に乗るおつもりでしたら我が商会にまとまったお金を預けてくだされば代わりに鉱石を買い集めることが出来ますよ」
「分かった。何から何までありがとう」
さすがはレベッカだ。こんなに僕のことを考えてくれるなんて。
こうして夜は更けていくのだった。
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