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Ⅱ
フランク
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その日の昼過ぎ、再びフランクが屋敷にやってきました。
どうも今日は父上がシエラに「フランクともっと仲良くしろ」というようなことを言ったようで、シエラは少し緊張しながらフランクを出迎えにいきます。
私はそれを知るとあまり良くないと思いつつも、庭の掃除をする振りをしながらついそれを遠くから見つめてしまいます。
シエラはフランクと会うと、ぎこちない様子で何かを話しています。フランクの方も笑顔を浮かべてはいますが、私が見る限りあれは作り笑いでしょう。いつも私と話している時と比べて少し表情がぎこちなく見えます。フランクはフランクでシエラに好かれていないことを感じ取っているようで、完全に外面だけで会話してしまっています。
それを見て私はなぜかほっとしてしまう自分がいるのを感じました。
それから二人は応接室に向かい、視界からは見えなくなります。
二人が一緒に話しているだけで私には関係ないことのはずなのに、話している間中なぜかずっともやもやして何かしようとしても手につきません。
自室にいて本を読もうとしても、なぜか二人が話している光景ばかりが浮かんでしまいます。
そんな訳で私はしばらく上の空でぼーっとしていました。
しばらくして、と言っても私が長く感じていただけで本当は短い時間だったのですが、私は我慢できずに立ち上がります。そしてキッチンに水をとりにいく振りをして二人の様子を見にいこうとすると、応接室で所在なさげに座っているフランクの姿が目に入りました。
「あれ、どうしたの、フランク」
「それがシエラは夕食の準備があるとかでキッチンに行ってしまって」
そう言ってフランクは安堵と苦笑が混ざった複雑な表情をします。
それを見て、彼もシエラと一緒にいるのはやりづらいと感じているのだと悟りました。
まだ夕方と呼べるのかも微妙な時間だし、そもそもシエラは夕食の準備をする必要もありません。きっと、フランクは放っておけば私と会話するからそれでいいとでも思っているのでしょう。
「そう……それならケーキ焼いたから一緒に食べる?」
「本当か?」
フランクが嬉しそうな表情に変わったのを見て、私はキッチンに用意していたケーキを運んでいきます。
ちなみにシエラは夕食の準備と言っていたらしいですが、キッチンには姿がありませんでした。自室にでも引きこもっているのでしょうか。
私とフランクが話しているところにシエラがやってきても気まずいのでそれはそれでいいのですが。
そんなことを考えつつ私はケーキを切り分け、フランクの前に持っていきます。
「どうぞ」
「ありがとう」
「ううん、この前は色々励ましてくれたからそのお礼」
本当はフランクのために焼いた、と言いたかったのですが私たちの関係でそこまで言っていいのか、と思ってしまって私は咄嗟にお礼ということにしてしまいました。
そして彼がスプーンでケーキをすくって口元に持っていくのを私は緊張しながら見守ります。
フランクはそうではない、と分かってはいてもどうしても前にウィルが料理を食べて心無い感想を言われたことを思い出してしまいました。
フランクにまでそんなことを言われれば私は今度こそ立ち直れなくなってしまいます。
「そんなこと、全然気にしなくて良かったのに……うん、うまい」
ケーキを口に入れ、フランクはおいしそうに言いました。
その言葉を聞いて私はほっとします。
「ところで前にウィルに心が籠ってないと言われたんだけど、何でか分かるかしら?」
「別にそんなことはないと思うけど……」
そう言ってフランクは首をかしげます。
「まあよく分からないけど、そういうのって自分の気持ちも反映されるだろ? だからウィルがエレンに対して微妙な気持ちを抱いていたからそういう風に思えてしまったんじゃないか?」
「なるほど。じゃあ気にしなくていいのかな」
「当然だ。だってウィルはシエラの作った料理はおいしそうに食べてたんだろう? そんなのウィルが相手をどう思っているかどうか、ていうだけだ」
「そうね……でも、ていうことはやっぱり私はウィルに……」
それに気づき私の言葉は再び小さくなっていきます。
どうも今日は父上がシエラに「フランクともっと仲良くしろ」というようなことを言ったようで、シエラは少し緊張しながらフランクを出迎えにいきます。
私はそれを知るとあまり良くないと思いつつも、庭の掃除をする振りをしながらついそれを遠くから見つめてしまいます。
シエラはフランクと会うと、ぎこちない様子で何かを話しています。フランクの方も笑顔を浮かべてはいますが、私が見る限りあれは作り笑いでしょう。いつも私と話している時と比べて少し表情がぎこちなく見えます。フランクはフランクでシエラに好かれていないことを感じ取っているようで、完全に外面だけで会話してしまっています。
それを見て私はなぜかほっとしてしまう自分がいるのを感じました。
それから二人は応接室に向かい、視界からは見えなくなります。
二人が一緒に話しているだけで私には関係ないことのはずなのに、話している間中なぜかずっともやもやして何かしようとしても手につきません。
自室にいて本を読もうとしても、なぜか二人が話している光景ばかりが浮かんでしまいます。
そんな訳で私はしばらく上の空でぼーっとしていました。
しばらくして、と言っても私が長く感じていただけで本当は短い時間だったのですが、私は我慢できずに立ち上がります。そしてキッチンに水をとりにいく振りをして二人の様子を見にいこうとすると、応接室で所在なさげに座っているフランクの姿が目に入りました。
「あれ、どうしたの、フランク」
「それがシエラは夕食の準備があるとかでキッチンに行ってしまって」
そう言ってフランクは安堵と苦笑が混ざった複雑な表情をします。
それを見て、彼もシエラと一緒にいるのはやりづらいと感じているのだと悟りました。
まだ夕方と呼べるのかも微妙な時間だし、そもそもシエラは夕食の準備をする必要もありません。きっと、フランクは放っておけば私と会話するからそれでいいとでも思っているのでしょう。
「そう……それならケーキ焼いたから一緒に食べる?」
「本当か?」
フランクが嬉しそうな表情に変わったのを見て、私はキッチンに用意していたケーキを運んでいきます。
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そんなことを考えつつ私はケーキを切り分け、フランクの前に持っていきます。
「どうぞ」
「ありがとう」
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そして彼がスプーンでケーキをすくって口元に持っていくのを私は緊張しながら見守ります。
フランクはそうではない、と分かってはいてもどうしても前にウィルが料理を食べて心無い感想を言われたことを思い出してしまいました。
フランクにまでそんなことを言われれば私は今度こそ立ち直れなくなってしまいます。
「そんなこと、全然気にしなくて良かったのに……うん、うまい」
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その言葉を聞いて私はほっとします。
「ところで前にウィルに心が籠ってないと言われたんだけど、何でか分かるかしら?」
「別にそんなことはないと思うけど……」
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「なるほど。じゃあ気にしなくていいのかな」
「当然だ。だってウィルはシエラの作った料理はおいしそうに食べてたんだろう? そんなのウィルが相手をどう思っているかどうか、ていうだけだ」
「そうね……でも、ていうことはやっぱり私はウィルに……」
それに気づき私の言葉は再び小さくなっていきます。
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