【完結】婚約破棄された彼女は領地を離れて王都で生きていこうとしていたが、止める事にしました。

まりぃべる

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〈21. おじさまに会いに行く  〜レーヴィ視点〜〉

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 レーヴィは外に出て、ラッセを見つけると駆け寄った。

「ラッセ、どう?」

「手筈は整っております。元々、いつ決断されてもいいように準備しておりましたから。」

「そうか、ありがとう。って、ラッセ、別に今までの話し方でいいのに。」

「それでは威厳が保てません。レーヴィ様は、偉大なるガブリエル国王の血統を受け継いだ、正統なる王太子様なのですから。」

「止めてよ、そう持ち上げるの。まぁ、仕方ないか…今までは隠れていたようなものだし。
騎士団長、腕は鈍っていない?」

「元、ですからね。けれど、今の騎士団にはまだまだ負けませんぞ。命を賭してまで、戦う所存です。」

「だから、そういうの要らないって!いい?この作戦では、誰一人命を落とさないのが目標だからね?」

「第一目標は、ですね。我々は、ガブリエル国王の仇を討ちたいとウズウズしていますから。」

「証拠が無い。変な事するなよ?」

 レーヴィの周りにいる者は皆、野心家のアードルフが兄ガブリエルを葬ったと思っている。
激昂したら、姉を殺めに行ってしまうくらいだ。
 ベーネルスタードに攻め入った後、自らアームの住む村へとこっそりと隠れるように越していったアードルフ。『我を忘れてしまった。名もなき村で謹慎する』と反省の色を見せたがそれも、虎視眈々と王位を狙っていたのを隠す為だろうと誰もが思っている。

 だが、そう。確たる証拠が無い。だからこそ皆、腸が煮えくりかえるほどであるし、アードルフと同じところまで墜ちたくないとも思っている。少なくとも、今は。

「それは、次第ですな。さ、行きますか。」

「うん。」

「…ところで、いつを取るおつもりで?」

「僕が、おじさんに会ったら取るよ。それまでは一応、前国王の息子とバレないようにしたいからね。」

「そうですな。もう少しの辛抱です。さ、ちょっと汚れますがここから。」

「あぁ、懐かしいな。昔はあっち王宮側からこっち王都側までよく抜け出して……」

しか教えられていない通路を使うのですから、当時は皆血相を変えて探されておりましたな……」


 ラッセとレーヴィは、王都の一角にある一見すると何の変哲もない水路だがその実、王宮への隠し通路に歩みを進めた。

ーーー
ーー





 レーヴィは分かれ道を曲がったりしながら迷子にならないよう器用に進み、ある一つの出口へと進んだ。

 そこは、庭園の一角へと続く道だった。

 庭園の茂みへと出たレーヴィは、ラッセと共に辺りを見渡す。体つきの大きなラッセには、少々辛い通路ではあったが、そんな事は言ってられないと肩や首を素早く回した。

「あ、あちらに、アードルフ様が。」

 ラッセがそう言うと、レーヴィも、

「うん。あんなところで…」

 と呟き唇を噛んだ。
 どうやら今の時間は、昼食前の僅かな一時らしく、庭園が見える一角でアードルフは椅子に座ってウトウトと微睡んでいる。

 辺りを見渡しても、衛兵らしき人は見えない。アードルフは、自分は栄華を極めていると油断しているのだ。だから護衛も付けずに一人でいる。

「僕が行く。ここで待て。合図をしたら、姿を現して。」

「承知!」

 レーヴィがそう言って、足早にアードルフへと向かう。目の前に立っても、アードルフはまだ目を覚ます気配が無かった。

「おじさま。アードルフおじさま!」

 意を決してレーヴィがそう声を掛けると、アードルフはゆっくりと目を開けた。

「ん?誰だ?まだ夢を見ているのか?」

「お久しぶりです。」

 そう言って、レーヴィは自身の頭を掴んで引っ張った。すると、黒い髪から、あごのラインで切り揃えられた金髪の髪へと変わり、手には鬘が握られた。
一般庶民が多いとされる黒い髪色の鬘をかぶる事で、市井へと紛れていたのだ。

「お前…レーヴィか!人を呼ぶぞ!?」

「おじさま。あなたと少しお話がしたくて来たのです。聞いて下さいませんか?」

「…なんだ?ここまでどうやって入った?」

 まだ訝しげにアードルフは見ているが、話を聞いてもらえるようでレーヴィはホッとする。

「まず、おじさまの政策は、革新的ですごいです!」

「お?どうした?そうだろう?おかげでどんどん王都へ人が集まってくるだろう?」

「でも、その為にシワ寄せが王都以外の領地にいっていますよ。」

「地方には、以前よりも多額の税率へと引き上げた事か?仕方在るまい。有事の際の備えもせねばならん。」

「それがおじさまのですものね。それで助けられた人がいるのも事実ですし。」

「そうであろう!?無償で基本的な衣食住を提供なんて優良な政策だろうが。兄には考え付かなかった政策ぞ!」

(シワ寄せがくるからやらなかっただけだろ。)

 そうレーヴィは思ったが、アードルフは激昂させると何をしでかすか分からない為に反論は胸にしまって言葉を続ける。

「で、提案があります。僕、ベーネルスタードで暮らしたいので、あの地区をこのクリシャンスタンメ国から独立させて下さい。」

「はぁ!?あの、何も無い地区か!?」

(何もかも無くさせたのは、お前だろうが!!)

 またも、言葉を飲み込んで畳みかける。

「はい。させてくれますよね?
今まで、僕は逃げ隠れていただけだと思いますか?今、僕がこの王宮に入って来たみたいに、いつでもおじさまをどうこうする事なんて出来るのですよ?でも、この半年、それを敢えてしませんでした。それは、僕が平穏な暮らしを望んでいるからです。でも、僕が命令すれば、おじさまなんてすぐに葬れるんです。ほら、見て?」

 そう言ったレーヴィは敢えて、ラッセがいる方角を指差し、姿を見せさせる。

「ラッセがいるって事は、他にもいます。おじさまはおじさまの正義を貫きその理想郷を目指して下さい。僕は僕の正義の元に、生活を送りたいのです。」

「う、うむ…。」

 アードルフは騎士団長であるラッセが苦手だった。
騎士団長であるがゆえ、真面目なのだ。アードルフは事ある毎に小言を言われ、仕返しをしたいが武力では負けてしまう。
だから、アードルフは私兵を結成させてしまったのだ。
所詮寄せ集めではあったが、ベーネルスタードへ攻め入った時、何の知らせもせずにいきなり攻めた為、反撃をする頃には領地は戦火の炎に巻き込まれた後だったのだ。

 苦手なラッセがいる、それだけでアードルフは苦虫を噛み潰したような顔をし、うなり声を上げた。

「おじさま。許可して下さいますよね?僕を殺すより、生かす方が『心が広い偉大な国王』だと国民にも思わせる事が出来ますよね?」

 それが、決定的だった。
アードルフは認めてもらいたいという気持ちが強いのだと、レーヴィはその気持ちを揺さぶったのだ。

「相分かった。聞き入れよう。その代わり、二度とラッセを俺の前に見せるな。」

「ありがとうございます!それは、おじさまの行動次第ですよ。我々に干渉されないのでしたら、僕らも変に干渉しませんから。では。」

 そう言って、レーヴィはアードルフの元を去った。
その間、ラッセはアードルフをずっと睨みつけていた。

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