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述懐

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洗濯物をしまっていると、森の方から一人の男性が走ってきた。よく見ると
おじさまだった。
「ああ。フィリア。大丈夫だったかい?」
「おじさま!ご心配かけましたか?ええ。もっと平原の奥から聞こえたもの。ここからじゃ何かわからないわ。もちろんここも変わりないわ。」
相変わらず、心配性ね。

「そうか。フィリア。本当は、いつ言おうか迷っていたんだが…フィリア。ここに座って話を聞いてもらえないだろうか?」
おじさまがそう改まって言うものだから、私は自然と緊張してしまう。けれど、洗濯物を干す場所にあるベンチに2人で腰掛けた。

「あ、あのお2人は?」
「いいんだ。洗濯物を中へ持っていってくれるだろう。フィリア。これからとても大事な事を言うよ。」
そう言って、おじさまは立ち上がり、私の目の前に膝を地面について話し出した。

「フィリア。いや、フィリア王女様。あなたは、今は無きアルフェンス国の王女様なのだよ。そして、私の名前はユリエル=バルベルト。アルフェンス国があった頃はあなたのお父様である国王陛下の側近をしていたのです。」
そう言って、一度言葉を切った。きっと、私が言葉を飲み込む時間を与えてくれたのだろう。
今は無き…そうだ。おじさまは、この国や周辺国の話を教えてくれる時に言っていた。15年前に、アルフェンス国はバルグェン国に滅ぼされたと言っていた。

「そうだったの…いきなりでかなり驚いたけれど…たくさん聞きたい事はあるけれど。おじさまは、なぜ今話そうとしたの?」
「いきなりで混乱するのは良く分かる。だが、その首に掛かっているペンダント。それはあなたの本当のお姿の髪の色と、瞳の色なのだよ。そして、三日月はアルフェンス国の国の象徴だ。」
首に掛かっているペンダント。これは落とさないよういつも服の中へしまっている。それを取り出して改めて見てみる。
銀色の紐に、三日月の形をした青い宝石が1つ付いている。

「あなたの本当の髪の色は銀色なのだよ。あなたのお父様が、民衆に紛れ込めるよう今の色にしてくれた。その内元の色へ戻るだろう。そして、ここからが本題だ。いきなりで驚くだろうが、アルフェンス国を建て直して欲しい。私と共に、国民の生き残りが森で暮らしいている。他の地区で暮らしている者もいる。あなたの一声で、動く手筈になっている。」
え!?そんな…いきなり出生を聞いたと思ったら、国を建て直してって…。

「バルグェン国が、この国へ戦争を仕掛けようとしている。先ほどの音も、恐らく爆発音だろう。威嚇しているんだ。あと、幾日かでこの国の国王陛下が代替えする。今の第一王子が国王となるのだ。その時に、バルグェン国は攻めてきて、自分が国王となろうとするらしい。だから、我々もこの国に手を貸し、バルグェン国を共に討ち取りましょう!」

無理でしょ!?私はこの教会の孤児院に住んでる一般人よ。世の中も知らないのよ!おじさま!ああ…私どうすればいいの!?こんなんで、楽しめるのかしら?
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