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18. 彼女の実家
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「私、依頼されたのをこなしているの。別に、やりたくてやっているんじゃないの。旦那様に言われたからね、仕方なくよ。」
そう言ったマルグレーテは、少し悲しそうに微笑んだ。
「…依頼?誰に?何をしているのよ。」
シャーロテは訝しげに疑問を投げかける。
「旦那様は…というかラスムセン男爵様は、ツツモタセみたいな事をしているのよ。もしかしたら、あなたに相談した人がいるかもね。でも、それきっと自作自演よ。うちは被害者ですって言いたいのね。」
ツツモタセーーーそれは、魅力的な女性が男性に近付き、現を抜かしている時に協力者に助けてもらってその男性を陥れる事。
「あ!でも誤解しないで。私は自分の身はきちんと守っているわ。体だって必要以上に触らせたりはしてないわよ、だって気持ち悪いもの。私の体を見て、鼻の下を伸ばして近づいてくるのよ。鼻息荒い男だっているわ!全く…ま、でもこの学院に通う間だけだと言われているから仕方なくね。…ま、私の場合、協力者なんて居ないから一人でやらないといけないのだけど。」
「…ラスムセン男爵様は、なぜそんな事を?なぜあなたは仕方なくいう事を聞いているの?それに、入学も少し遅れて…。」
クラーラも、疑問を呈した。
「なんか、詰問みたいね。…ま、いいわ。私も、いい加減誰にも話さないのは苦しくなってきたから、教えてあげる。…その代わり、たまにはこうやって話をさせてくれない?興味もない男としか話さないって、本当に辛いのよ。女子生徒は私の上辺しか見ないから、話し掛けても無視されて、ちょっと友達も欲しいなとは思っていたのよね。」
マルグレーテは、初めは殊勝に話していたけれど、少し考え、二人から少し視線を逸らし、恥ずかしそうにそう言った。
「…内容によるわ。次の授業に間に合うように話しなさいよ。間に合わなかったら、帰りも時間空けなさい。いいわね?マルグレーテ。」
マルグレーテが言った言葉に、シャーロテとクラーラは、なんだか噂とは違って彼女は悲しい想いをしているのだろうか?と思い始める。
しかし授業もあと十五分ほどで始まる為、シャーロテが時計を見つつそう言った。
友達が欲しいと言ったマルグレーテに応えるように、シャーロテは今まで呼んでいなかった名前を敢えて呼んだ。
「分かったわ。でも内緒にしてね?手短に話すと、私は旦那様の子ではないの。一年ほど前、離婚を機にラスムセン男爵領に越してきて、町の食堂で給仕をしていた私の母が、気に入られたのよ。旦那様は、男爵なのによく町で食事をするのですって。それからすぐに旦那様に町に家を用意してもらって、生活し始めたの。でも、私が学院に上がれる年齢だと分かると旦那様は、私に通わせてくれると言うの。それだけじゃなくて男爵家の敷地に住まわせるし、母と結婚するって。知らなかったけれどちょうど、旦那様の奥さんが落石事故で亡くなったからって。母さんは結婚出来るし、私が学院に通えるなんてと喜んじゃって。…だけと、そんな上手い話があるわけないのに。」
シャーロテが名前を呼んでくれ、嬉しそうに微笑んだマルグレーテは、少し話すと、そうため息をつく。
一呼吸してまた言葉を繋いだ。
「旦那様は、私一人を呼び出して言ったの。『お前には仕事をしてもらう。母親には絶対に言うなよ。悲しませたくないよな?貴族としての生活をさせてやるんだから、それに報いるんだ。いいね?』って。それが、別れさせる仕事よ。依頼された家や人は、何らかの事情があって、婚約を白紙にしたいらしいの。他に好きな人がいて、婚約者と結婚したくない人が大半ね。あとは、相手の家に借金やギャンブルとか何らかの理由があって結婚したくないとか。私がやる事は、主に男子生徒に誘惑して夢中にさせ、それとなく婚約を結んでいる女子生徒に見せたり噂を流して、婚約を白紙に戻す材料を作るよ。どうしてそれをやろうとしたのかは分からないけれど、金儲けしたかったのじゃないの?旦那様は、その依頼達成によって、お礼金をかなりもらってるらしいわ。私にも、成功する度かなりのお小遣いをくれるのよ。」
「別れさせる仕事…。」
「ラスムセン男爵はそんな事をやってるの!?」
マルグレーテの言葉に、クラーラとシャーロテは、それぞれ口を開く。
「まぁ、私がちょっと誘惑した位で婚約が白紙になるなら、初めから結ばなければいいのにって思うのだけど、でもそれって庶民の感覚なのかしら?ま、でも大抵の男ってちょっと近づくと鼻を伸ばすからそういう性なのかしら。…あ!なぜ入学が遅れたかは、単純に私の貴族としての勉強が間に合わなかったのよ。言葉遣いや振る舞いって言うの?貴族って本当に面倒よね。私、絶対に学院卒業したら、庶民に戻ってやるんだから!」
「…だいたい分かったわ。続きは、放課後にしましょう?そろそろ授業が始まるわ。」
シャーロテは、時計を見てそう言うと、クラーラも急いで先生に頼まれていた教材を手にする。
「あ、だから、私依頼を受けていないのに纏わり付いて来るあの男は鬱陶しくて。本当にあの人は、止めた方がいいわよ。気持ち悪いもの。…何なら、旦那様に依頼してくれるなら、別れさせてあげるわ。」
教材室を出ながらマルグレーテは、クラーラへとそう言った。
そう言ったマルグレーテは、少し悲しそうに微笑んだ。
「…依頼?誰に?何をしているのよ。」
シャーロテは訝しげに疑問を投げかける。
「旦那様は…というかラスムセン男爵様は、ツツモタセみたいな事をしているのよ。もしかしたら、あなたに相談した人がいるかもね。でも、それきっと自作自演よ。うちは被害者ですって言いたいのね。」
ツツモタセーーーそれは、魅力的な女性が男性に近付き、現を抜かしている時に協力者に助けてもらってその男性を陥れる事。
「あ!でも誤解しないで。私は自分の身はきちんと守っているわ。体だって必要以上に触らせたりはしてないわよ、だって気持ち悪いもの。私の体を見て、鼻の下を伸ばして近づいてくるのよ。鼻息荒い男だっているわ!全く…ま、でもこの学院に通う間だけだと言われているから仕方なくね。…ま、私の場合、協力者なんて居ないから一人でやらないといけないのだけど。」
「…ラスムセン男爵様は、なぜそんな事を?なぜあなたは仕方なくいう事を聞いているの?それに、入学も少し遅れて…。」
クラーラも、疑問を呈した。
「なんか、詰問みたいね。…ま、いいわ。私も、いい加減誰にも話さないのは苦しくなってきたから、教えてあげる。…その代わり、たまにはこうやって話をさせてくれない?興味もない男としか話さないって、本当に辛いのよ。女子生徒は私の上辺しか見ないから、話し掛けても無視されて、ちょっと友達も欲しいなとは思っていたのよね。」
マルグレーテは、初めは殊勝に話していたけれど、少し考え、二人から少し視線を逸らし、恥ずかしそうにそう言った。
「…内容によるわ。次の授業に間に合うように話しなさいよ。間に合わなかったら、帰りも時間空けなさい。いいわね?マルグレーテ。」
マルグレーテが言った言葉に、シャーロテとクラーラは、なんだか噂とは違って彼女は悲しい想いをしているのだろうか?と思い始める。
しかし授業もあと十五分ほどで始まる為、シャーロテが時計を見つつそう言った。
友達が欲しいと言ったマルグレーテに応えるように、シャーロテは今まで呼んでいなかった名前を敢えて呼んだ。
「分かったわ。でも内緒にしてね?手短に話すと、私は旦那様の子ではないの。一年ほど前、離婚を機にラスムセン男爵領に越してきて、町の食堂で給仕をしていた私の母が、気に入られたのよ。旦那様は、男爵なのによく町で食事をするのですって。それからすぐに旦那様に町に家を用意してもらって、生活し始めたの。でも、私が学院に上がれる年齢だと分かると旦那様は、私に通わせてくれると言うの。それだけじゃなくて男爵家の敷地に住まわせるし、母と結婚するって。知らなかったけれどちょうど、旦那様の奥さんが落石事故で亡くなったからって。母さんは結婚出来るし、私が学院に通えるなんてと喜んじゃって。…だけと、そんな上手い話があるわけないのに。」
シャーロテが名前を呼んでくれ、嬉しそうに微笑んだマルグレーテは、少し話すと、そうため息をつく。
一呼吸してまた言葉を繋いだ。
「旦那様は、私一人を呼び出して言ったの。『お前には仕事をしてもらう。母親には絶対に言うなよ。悲しませたくないよな?貴族としての生活をさせてやるんだから、それに報いるんだ。いいね?』って。それが、別れさせる仕事よ。依頼された家や人は、何らかの事情があって、婚約を白紙にしたいらしいの。他に好きな人がいて、婚約者と結婚したくない人が大半ね。あとは、相手の家に借金やギャンブルとか何らかの理由があって結婚したくないとか。私がやる事は、主に男子生徒に誘惑して夢中にさせ、それとなく婚約を結んでいる女子生徒に見せたり噂を流して、婚約を白紙に戻す材料を作るよ。どうしてそれをやろうとしたのかは分からないけれど、金儲けしたかったのじゃないの?旦那様は、その依頼達成によって、お礼金をかなりもらってるらしいわ。私にも、成功する度かなりのお小遣いをくれるのよ。」
「別れさせる仕事…。」
「ラスムセン男爵はそんな事をやってるの!?」
マルグレーテの言葉に、クラーラとシャーロテは、それぞれ口を開く。
「まぁ、私がちょっと誘惑した位で婚約が白紙になるなら、初めから結ばなければいいのにって思うのだけど、でもそれって庶民の感覚なのかしら?ま、でも大抵の男ってちょっと近づくと鼻を伸ばすからそういう性なのかしら。…あ!なぜ入学が遅れたかは、単純に私の貴族としての勉強が間に合わなかったのよ。言葉遣いや振る舞いって言うの?貴族って本当に面倒よね。私、絶対に学院卒業したら、庶民に戻ってやるんだから!」
「…だいたい分かったわ。続きは、放課後にしましょう?そろそろ授業が始まるわ。」
シャーロテは、時計を見てそう言うと、クラーラも急いで先生に頼まれていた教材を手にする。
「あ、だから、私依頼を受けていないのに纏わり付いて来るあの男は鬱陶しくて。本当にあの人は、止めた方がいいわよ。気持ち悪いもの。…何なら、旦那様に依頼してくれるなら、別れさせてあげるわ。」
教材室を出ながらマルグレーテは、クラーラへとそう言った。
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