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1. わたしは
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私はヴァレリア。
大人になったら、このモルドバコドル国の国王であるお父様の後を継いで、女王陛下となると誰もが思っていたし、私もそうなるべく育てられていた。
けれど、周りからそう言われても、なんだかしっくり来なくて…幼かったからかもしれないけれど。
国民の為とは何かがわからないからかしら?と思い、私なりに試行錯誤したのよ。
でもね、こうなってしまうなんて、何がいけなかったのかしら…。
お母様…私はどこから間違っていたの?思い返してみても、分からないのよ。
ーーー
ーー
ー
乳母のパトリツィアは、生まれてすぐに亡くなったお母様の代わりに、私のお世話をしてくれるの。
妹ヴェロニカにも、別の乳母がついている。名前は…ユーリアと言ったかしら。
パトリツィアはとても優しい。私をいつも抱きしめて頭を撫でてくれる。
そして、『ヴァレリア様は優秀よ。本当に可愛いわ。あぁまるで私の本当の子みたいね。』と言ってくれる。私も、本当の母のように慕っていたと思うわ。
そして、子守唄のようにいつも、物語を語ってくれる。物悲しい物語。
「ある国に住んでいた人々が貧しくなって、隣の国へ逃げました。その王様は心優しくて住んでいいよと言って下さったが、土地は痩せていて食べ物は何も無かった。人々が嘆き悲しんでいるとその王様の遣いが来て言いました。『二度と帰れないけれど衣食住は保証するよ。来たい人はついてきなさい。』と。ついて行くとそこは煌びやかな宮殿でした。ついて来た人達はそこで、王様の下で働かせてもらい、帰る事は出来ないけれど幸せに暮らしました。」
「どうして帰れないの?」
私はいつも同じ疑問を投げ掛けるの。
「王様の下で働くという事は、いろいろな外に漏らしてはいけない重要な情報を知りうるかもしれないという事。それを外に持ち出してはいけないからですよ。」
「それで、幸せになったの?」
「なった人達もいるし、なってない人達も…いるのではないですか?それは人によって感じ方それぞれです。自分の目で直接見なければ、分かりませんよね。」
四歳になり、さまざまな帝王学を学んでいくことになった時です。その物悲しい物語は、現実の話だと知りました。
その頃には、乳母のパトリツィアとはお別れです。代わりに、侍女のモラリがつきました。
初めて先生になった人は、リア先生。
その人が歴史の時間にこの物語を話してくれたからです。パトリツィアから聞かされた〝ある国〟とは隣の国キシデル。〝隣の国〟とは我が国モルドバコドル国と言って。
私は、なぜその話をパトリツィアが哀しげに話してくれたのか考えていました。すると眠気が襲ってくるのです。それはそうですよね、いつもパトリツィアが、眠る前に私を抱きしめトントンと体を優しく触りながら話してくれた物語なのですから体が寝る時間だと勘違いしているのだと思います。
「…ヴァレリア様。ヴァレリア様!聞いておられますか?」
そう言われても私は聞こうとしているけれど、その話は何度も聞いてもう知っているし、眠くなるから止めて欲しいわ。だけど、直接言ったら悪いでしょうから、先生の事を褒めてみたの。そうしたらなぜだか機嫌が悪くなってしまって、リア先生は『陛下に伝えます。私じゃない先生に代わるでしょう。』と言われたわ。
リア先生には悪いけれど、私はそれで良かったわ。次の先生には、その物悲しい物語は止めて欲しいと伝えようかしら。
大人になったら、このモルドバコドル国の国王であるお父様の後を継いで、女王陛下となると誰もが思っていたし、私もそうなるべく育てられていた。
けれど、周りからそう言われても、なんだかしっくり来なくて…幼かったからかもしれないけれど。
国民の為とは何かがわからないからかしら?と思い、私なりに試行錯誤したのよ。
でもね、こうなってしまうなんて、何がいけなかったのかしら…。
お母様…私はどこから間違っていたの?思い返してみても、分からないのよ。
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乳母のパトリツィアは、生まれてすぐに亡くなったお母様の代わりに、私のお世話をしてくれるの。
妹ヴェロニカにも、別の乳母がついている。名前は…ユーリアと言ったかしら。
パトリツィアはとても優しい。私をいつも抱きしめて頭を撫でてくれる。
そして、『ヴァレリア様は優秀よ。本当に可愛いわ。あぁまるで私の本当の子みたいね。』と言ってくれる。私も、本当の母のように慕っていたと思うわ。
そして、子守唄のようにいつも、物語を語ってくれる。物悲しい物語。
「ある国に住んでいた人々が貧しくなって、隣の国へ逃げました。その王様は心優しくて住んでいいよと言って下さったが、土地は痩せていて食べ物は何も無かった。人々が嘆き悲しんでいるとその王様の遣いが来て言いました。『二度と帰れないけれど衣食住は保証するよ。来たい人はついてきなさい。』と。ついて行くとそこは煌びやかな宮殿でした。ついて来た人達はそこで、王様の下で働かせてもらい、帰る事は出来ないけれど幸せに暮らしました。」
「どうして帰れないの?」
私はいつも同じ疑問を投げ掛けるの。
「王様の下で働くという事は、いろいろな外に漏らしてはいけない重要な情報を知りうるかもしれないという事。それを外に持ち出してはいけないからですよ。」
「それで、幸せになったの?」
「なった人達もいるし、なってない人達も…いるのではないですか?それは人によって感じ方それぞれです。自分の目で直接見なければ、分かりませんよね。」
四歳になり、さまざまな帝王学を学んでいくことになった時です。その物悲しい物語は、現実の話だと知りました。
その頃には、乳母のパトリツィアとはお別れです。代わりに、侍女のモラリがつきました。
初めて先生になった人は、リア先生。
その人が歴史の時間にこの物語を話してくれたからです。パトリツィアから聞かされた〝ある国〟とは隣の国キシデル。〝隣の国〟とは我が国モルドバコドル国と言って。
私は、なぜその話をパトリツィアが哀しげに話してくれたのか考えていました。すると眠気が襲ってくるのです。それはそうですよね、いつもパトリツィアが、眠る前に私を抱きしめトントンと体を優しく触りながら話してくれた物語なのですから体が寝る時間だと勘違いしているのだと思います。
「…ヴァレリア様。ヴァレリア様!聞いておられますか?」
そう言われても私は聞こうとしているけれど、その話は何度も聞いてもう知っているし、眠くなるから止めて欲しいわ。だけど、直接言ったら悪いでしょうから、先生の事を褒めてみたの。そうしたらなぜだか機嫌が悪くなってしまって、リア先生は『陛下に伝えます。私じゃない先生に代わるでしょう。』と言われたわ。
リア先生には悪いけれど、私はそれで良かったわ。次の先生には、その物悲しい物語は止めて欲しいと伝えようかしら。
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