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結城凛子

初めての・・・?

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 羽野くんの家は、学校から徒歩約15分のところにある普通の一軒家だった。
 2階建ての2階、角部屋にある羽野くんの部屋は青と白でまとめられていて、とてもさっぱりしている。壁にはどこか遠い国の大自然の写真が飾られていて、ただの住宅街にある男子高校生の部屋とは思えないほど清々しい空気を感じる。

「今日、親が帰ってくるの遅いから」

 羽野くんは少しぎこちなく笑って、お茶かジュースどっちがいい、と聞いてきた。

「・・・お茶で」

 羽野くんが1階でお茶を用意してくれている間、部屋に繋がっているベランダに置いてあったおしゃれなハンモックに揺られることにした。外国の住宅を特集したテレビ番組を見て以来、ハンモックのある庭に憧れているという話をしたら、羽野くんが快く貸してくれたのだ。網の上にふかふかのクッションが置いてあって、とても乗り心地がいい。
 さっきまで緊張していたはずなのに、だんだんと心地よくなってきて目蓋を閉じる。夕暮れの日差しに包まれながら初夏の風に頬を撫でられるととても気持ちいい。このままずっと揺られていたい。

「結城さん・・・?」

 いつの間にか戻ってきていた羽野くんの声がして、ウトウトしかけていたことに気づく。
 羽野くんがマグカップをテーブルの上に置くとそこはかとなく花の甘い香りが漂ってきたので、釣られるようにふらふらと部屋の中へ戻った。一口お茶を啜ると、黄金色のとろりとした液体がゆっくり喉を伝い落ちていく。
 このお茶、ティーバッグじゃないよね?すごく美味しい・・・。

「お茶淹れるの上手なんだね」

 ホッと息を吐きながら顔を上げると、私を見つめていたらしい羽野くんと目が合った。その瞳が熱を帯びているように見えて、今更ながらこの状況が恥ずかしくなる。慌てて顔を伏せたら羽野くんが近づいてくる気配がした。
 どうしよう・・・いや、どうしようも何もないんだけれど、いつもの羽野くんと違いすぎる。
 身を固くしていると下から覗きこまれてびっくりして顔を上げた瞬間、ふにっとした感触が唇を覆った。
 なっ、何だ今のは!あざといじゃないか!というかまつ毛長いな!
 なんて内心わたわたしていると、羽野くんが目元だけで笑うのが見えた。ちゅっ♥ちゅっ♥と何回も軽くキスされて、濡れた音が鼓膜に染み込んでいく。

「あ、あの、羽野くんっ!ちょっと、」

 これ以上ドキドキしたら心臓が壊れそうで、距離を取ろうと羽野くんの胸元を押したらバランスを崩してしまった。咄嗟に引き寄せられてしがみつく。
 羽野くんはさっき教室で見た男の人の顔をしていて、動揺している私をよそにゆっくり唇を合わせてきた。

「っん・・・ぁっ♥」

 羽野くんにしがみついたままなのは体勢が悪いせいなのに、熱っぽく口付けられるとまるで恋人同士みたいだなんて考えてしまって、慌てて打ち消す。
 これはただの性欲!性欲以外何もないから・・・!

「んっ♥んんっ♥あっ♥ふっ・・・♥」

 唇を舐められて背筋がゾクゾクする。身体を捩ったら、いつの間にか薄ら開けてしまっていた唇に熱く濡れた舌が侵入してきた。いやらしい音を立てて舌を絡め取られて、口内をくまなく探られる。羽野くんの唾液と私の唾液が口内で混ざり合って溢れそうになったものを飲み込むと、身体が燃えるように熱くなる。
 まるで媚薬みたい。もちろん飲んだことなんてないけれど、こんな感じになのかな・・・なんて。

「結城さん・・・いい?」

 名残惜しそうに唇を離した羽野くんが掠れた声で囁く。その声に誘われるように、私は頷いていた。



「んっ♥んんっ♥ふっ♥」

 ベッドに辿り着いた途端、羽野くんが性急に唇を重ねてくる。縋るように羽野くんのシャツを握り締めると口付けが深まって、くちゅっ♥ぷちゅっ♥といういやらしい音が部屋に響く。
 恥ずかしい。でも気持ちいい。

「脱がせてもいい?」

 優しくベッドに押し倒されながら確認される。
 これだけ積極的に触れておきながら、ちょっと不安そうな表情をしているのがなんだかおかしい。でも、掠れた声の中に懇願する様な響きがあったから、いいよって伝えた。

 早速下着以外の服を脱がされて、羞恥心に塗れながら頑張って大人しく仰向けに寝転がっていると、ブラ越しに胸を揉まれる。

「やわらかい・・・」

 思わず漏れた、という感じで呟いて熱心に胸を揉む羽野くんが、カブトムシを見つけて目をキラキラさせる小学生みたいに見えてちょっと可愛い。

「直接触ってもいい?」

 了承の意味を込めて背中を少し浮かし、ブラのホックを外す手伝いをする。
 一瞬息を呑んだ羽野くんが、恐る恐る胸に手を乗せてきた。

「んっ・・・」
「あ、ごめん・・・痛かった?」
「ううん、ちょっと手が冷たかっただけ」
「ッ、ごめん!」
「その、大丈夫だから・・・続けて?」

 興奮と肌寒さですっかり乳首が立ってしまっているのが恥ずかしい。しかもそれを見た羽野くんが生唾を飲み込んだのが見えて、ますます恥ずかしい。
 優しくマッサージする様に羽野くんが胸を揉み始めると、私の体温で温かくなっていく手がなんだかいやらしくて、それほど強い刺激でもないのに股の間がキュンキュンする。心地よさにうっとりしていると両乳首を摘まれた。

「ひゃっ!あっ・・・♥」

 信じられないくらい甘い声が漏れて、慌てて口元を手で覆う。頬がひどく熱い。羽野くんの視線を感じるけれど、目を合わせられなくて横を向く。

「気持ちいいんだね・・・」

 そんなことわざわざ言わないでほしいのに。
 どこか恍惚とした羽野くんの言葉が敏感な突起に落ちて行くのがわかって、思わず目をぎゅっと閉じた。

「んッ!んん、んぁ♥はっ、あっ♥」

 ぴちゃ♥ぴちゃ♥と恥ずかしい音が部屋に響く。最初は遠慮がちに動いていた羽野くんの舌が、舐めるだけじゃなくて吸ったり甘噛みしたりとどんどん大胆になっていく。ムズムズした感覚が下腹部に溜まっていって、口を手で覆っているのに抑えきれない声が漏れ出てしまう。

「んんっ♥ふっ♥んっ!あっ♥ふっ♥」
「結城さん、手、離して?」
「ッ、いやっ!」
「大丈夫、キスするだけだから」

 ちゅっと手の甲にキスされながら赦しを乞われて渋々手を離すと、すぐに羽野くんの優しい唇に塞がれる。
 やっぱり羽野くんのキス、気持ちいい。
 ふわふわした頭でキスに夢中になっていると、いきなり乳首を摘まれた。

「んッ!ふっ・・・!」

 びっくりして唇を開いた隙に、羽野くんが舌を差し入れてくる。
 気持ちいいけれど今までよりずっと強い刺激が怖くなって羽野くんの胸を押したら、逆に身体を押さえつけられてしまった。舌を吸われながら乳首をこね回されて、気持ちいいのと怖いのが混ざってどうしたらいいかわからない。

 酸欠で頭がクラクラし始めた頃、ようやく唇が離れていった。銀色の糸が引いて、プツッと途切れる。その生々しい光景に目が釘付けになっていると、荒く息を吐く私を宥めるように羽野くんがそっと唇を合わせてきた。
 急に優しくするのはずるい。

「下、触ってもいい?」

 熱っぽい声で問われて小さく頷く。
 そろそろとパンツを脱がされて、ゆっくり脚を押し開かれる。早く触ってほしい気持ちと今すぐ止めてほしい気持ちが交差して、自分でもどうされたいのかよくわからない。

「すごい・・・」
「あんま見ないで・・・」
「・・・ここ、かな?」

 私の言葉を完全に無視した羽野くんが指を秘部に押し当てる。しっとり濡れている部分を経由した指先が敏感な突起に触れて、思わず息を呑んだ。

「これ、大丈夫?」

 そう言いながらクリを優しく捏ね回されると、お腹の奥がムズムズする。

「痛い?」
「ううん、痛くない・・・」
「そう、じゃあ続けるね」

 羽野くんと視線を交わすと、びっくりするぐらい色っぽい表情をしていた。こんな羽野くん、見たことない。
 まるでイケナイことをしているような罪悪感とその表情を見られたことへの優越感で、身体の奥がもっと熱くなる。

「ここよりこっちの方がいい?」
「んっ♥うん・・・」

 突起の根元や天辺、右側、左側でどこが私のイイところなのか見極めようとしているみたいに、羽野くんは繊細な手つきで触れてくる。正直、男の子ってもっと即物的で前戯なんておざなりにするものだと思っていたからびっくりした。
 高校生になってから、嫌でも初体験の噂話などを小耳に挟むことが増えたけれど、ただ痛かったとか前戯が短かったなどあまりいい話を聞いたことがなかったので実はちょっと怖い気持ちがあった。それなのに、羽野くんは私が気持ちよくなることを優先するように気遣ってくれている。

「ここ・・・いいみたいだね」
「んぁ♥はっ♥んんっ・・・♥」

 研究熱心な羽野くんに気持ちいいポイントを暴かれて、思わず大きな声が出た。慌てて手で口を覆ぐけれど、羽野くんの指は止まらない。

「ふっ♥んっ・・・♥ぁっ♥」

 優しい触れ方が気持ちよくて頭がぼーっとする。このまま身体が溶けてしまいそう。

 しばらく心地いい刺激に身を任せていたら、いきなりグッとクリを摘まれて意識が引き戻される。

「っ!ぁっ、それ・・・」
「あ、痛かった?ご、ごめん!このくらい?」
「ぁっ♥うん・・・♥」

 強く擦られるのが痛くて眉を顰めたら、羽野くんがすぐに力加減を調整してくれた。優しく摘まれて擦られると、さっきまでの気持ちよさがまた戻ってきてすぐにうっとりしてしまう。

「んっ、ふっ♥あッ!きもち、いっ・・・♥」
 
 嬉しそうな羽野くんの顔が視界に入ってきたと思ったら、そのまま唇を塞がれた。キスされながら指を動かされると、今まで感じたことの無いような快感が迫ってきて、羽野くんに抱き着いてしまう。舌が交わる生々しい音と私の中から溢れ出す粘着質な音が合わさって鼓膜に響いて、お腹の奥が燃えるように熱い。

「もっと気持ちよくなって、結城さん」

 熱に浮かされて潤んでいる羽野くんの瞳に間近で見つめられながら気持ちいいところばかり擦られて、大きな熱が下腹部からり上がってくる。

「ぁっ♥はのくん、まってっ♥」
「だめ、待たない。このままイッて?」
「んっ♥ーーー~~~ッ♥♥♥」

 何が起こっているのかわからない。目の前が真っ白になって自分がどこにいるのか何をしているのか、一瞬何も考えられなくて全部わからなくなった。


 強烈な快感が落ち着くと、ぼんやりした視界に羽野くんが映った。
 羽野くんに見られながらイッちゃった。こんなに気持ちよくなったの初めて・・・。
 こっちは恥ずかしいような気まずいような気持ちでいっぱいなのに、羽野くんはすごく嬉しそうな様子で柔らかく微笑んでいる。照れ隠しに羽野くんの首筋に顔を埋めたら、羽野くんの心臓がバクバク鳴っているのが聞こえてしまって余計に恥ずかしい。

「下・・・舐めてもいいかな?」
「え?下って・・・」
「・・・ここ」

 羽野くんが躊躇いがちに触れたのは、先ほどまで散々指で弄られて気持ちよくなってしまった突起だった。

「そッ、あっ♥き、汚いよ」
「そんなことない。ね、ちょっとだけでいいから」

 じっと熱のこもった目で懇願されると、言葉に詰まってしまう。羽野くんは私の中の葛藤を宥めるかのように、触れるだけのキスを顔中に降らせてくる。
 ずるいなぁ、なんて思いつつも優しさに絆されて頷く。

「ありがとう!あ、もし痛かったら教えて」
「うん・・・」

 私の言葉を聞いた羽野くんは、私の気が変わることを恐れてか、さっさと脚の付け根に顔を寄せた。逃げ出しそうになりながらも、シーツを握り締めてどうにか耐える。

 くちゅっ・・・♥

 息を詰めてその瞬間を待っていた私に、その刺激は甘すぎた。

「あッ!ああっ♥はぁッ♥」

 声を抑える余裕なんてなくて、与えられる快楽に溺れる。一度達したそこは驚くほど敏感になっていて、羽野くんの舌先の動きを余すところなく感じ取ってしまう。
 シーツを掻いた爪先が身体を押し上げて、羽野くんの顔に秘部を押し付ける格好になってしまうけれど、制御なんてできない。それなのに、羽野くんが暴れる腰を掴んで固定してきたので、逃げ場の無くなった快感が一気に弾けた。

「あぁああッ♥♥♥」

 余りに気持ち良くて、ほとんど苦痛だった。
 吸ったり舐めたり扱いたり、先ほどまでたどたどしく指で触っていたとは思えないほど多彩な羽野くんの愛撫に、思考がドロドロに溶けていく。
 じゅるじゅる♥と音を立てて愛液を啜られるのすら気持ち良くてたまらない。
 頭おかしくなりそう・・・気持ちいい♥
 浅く息を吐いていたら、今度は指が中に入ってきた。ぐちゃぐちゃに濡れそぼっている秘部は、いとも簡単に羽野くんを受け入れてしまう。これ以上刺激を与えられたらおかしなことを口走りそうで腰を揺らして抵抗するけれど、突起を舐めしゃぶりられながら指を抜き挿しされたら何も考えられなくなる。

「んんッ♥そこ!だめッ♥」

 どんどん息が上がってまたあの感覚が湧き上がってくる。
 気持ちいいーーーそれしか考えられない。

「ッはの、くん♥もう、もう・・・!」
「んっ、イきそう?」

 羽野くんはそう言うと、じゅっ♥と突起を吸い上げながら指の抽挿を速める。

「はっ、んあっ!あああッ♥♥♥あっ・・・♥」

 目の前が白く弾けた。身体がガクガク震えて止まらない。
 開きっ放しの口から涎が垂れている気がしたけれど、そんなことどうでもいい。虚ろな視界と達しても快感が広がり続ける身体が私の全てで、今はそれ以外どうでもいい。


 しばらく朦朧とした意識の中を漂っていたら、いつの間にか羽野くんの体温がすっかり離れてしまっていた。身体が怠いので視線だけを落として羽野くんの姿を探す。

「羽野くん・・・?どうしたの?」
「あ、その・・・実は、避妊具を持ってなくて・・・」
「あっ・・・」

 気まずげに告げられた内容に、意識が現実に引き戻される。何も考えずに家まで来てしまったけれど、確かに避妊具が無いと先には進めない。けれど、これだけ気持ちよくしてもらったのにこのまま終わりというのは申し訳なさすぎる。

 どうしたらいいか考えた私は、ふと思いついたことを提案してみた。

「じゃあ、舐めようか?」
「え?」
「今度は私が羽野くんのを舐めるよ」
「・・・え?」

 先ほどまで羽野くんが同じことをしてくれていたのだからお返しに、と思ったのだけれど、羽野くんはまるで信じられないことを聞いたみたいな顔をして固まってしまった。
 あれ・・・もしかして言ったらダメだった?それとも、私に舐められるのが嫌ってことかな?
 色んな可能性が頭を駆け巡って失言に後悔していると、羽野くんが慌てたように言い募る。

「や、いや、大丈夫!自分で、自分でなんとかするから!」
「でも、私だけ気持ちよくしてもらって悪いよ」
「あ、うっ・・・ううっ、じゃあ、せめてシャワーを・・・」
「・・・私は浴びてないけど?」
「結城さんはいいの!ちょっと待ってて!すぐ戻るから!」

 そう言い捨てると、脱兎の如く羽野くんが部屋を出て行った。
 ・・・変な羽野くん。
 取り残された私は、ふっと身体の力を抜いてベッドに横たわる。
 まさかこんな展開になるとは思っていなかった。昨日の今日でセックス(未遂)をすることになるとは、何だか感慨深い。それにしても、避妊具のことをすっかり忘れていたな。一体どこで手に入れればいいんだろう。

 そんなことをつらつらと考えていると、羽野くんが戻ってきた。思ったより時間が掛かったなと思って羽野くんを見遣ると、髪の毛まで濡れている。

「髪の毛まで洗う必要はないんじゃ・・・」

 思わず漏れた言葉はそこそこ大きく部屋に響いた。

「あ、いや、その・・・ちょっと、煩悩を抹消するために・・・」

 ・・・滝行?
 こんな状況で煩悩を消すと言われても、説得力がない。
 教室でキスしたときみたいにもじもじしながら答える羽野くんに、なんだか気が抜けてしまう。

「とりあえずこっちに来て。そんな遠くにいたら何もできないよ」

 自分の部屋なのにどこかよそよそしい様子の羽野くんは、先ほどからドアの前に突っ立ったまま動こうとしなかった。私は身体を起こすと手招きして羽野くんをベッドに誘導した。羽野くんは先ほどよりも緊張した面持ちでベッドに腰掛ける。

「その・・・脱がすね?」

 一応羽野くんに声を掛けて、短パンをずらす。羽野くんの頬が紅潮するのを見て、こっちまで緊張してしまう。

「わ!これが・・・」

 羽野くんの羽野くんは、既におへそに付きそうなくらい勃ち上がっていた。他の人のものを見たことはないけれど、かなり大きく見える。
 私がまじまじと観察していると、躊躇いがちな羽野くんの声が聞こえた。

「あんまり見ないで・・・恥ずかしいから」

 掠れて色っぽい羽野くんの声に、私の中がきゅっと締まる感覚がした。思わず羽野くんを掴む。

「んっ・・・」

 羽野くんの声に苦悶する響きが混じったので、慌てて力を緩める。ふにふにと感触を確かめるように触っていると、どんどん質量を増して固くなっていく。
 すごい、どこまで大きくなるんだろう・・・。

「その、私、こういうことをしたことがないから良くわからないんだけど、どうしたら気持ちよくなれるの?」

 勝手がわからないことに今更ながら気付いた私は正直に助けを求めた。羽野くんは目元を赤くしながら、口を覆う。

「・・・・・・を・・・先っぽを舐めて」

 しばらくの沈黙の後、聞き逃してしまいそうなほど小さな声が聞こえた。
 私は竿の部分に手を添えたまま先端に顔を近づけると、思い切って舌を伸ばす。シャワーを浴びてきただけあって、石鹸の淡い香りがする。
 チロチロと舌先で撫でるように舐めながら、羽野くんを見上げて尋ねる。

「んっ、これで、いいの?」
「ッ、うん、いいよ・・・ぁっ!」

 羽野くんが気持ち良さそうにしているのが嬉しくて少し笑うと、羽野くんの顔が真っ赤に染まった。気を良くして傘の部分に舌を這わせたら、腹筋が大げさなほどビクッと震える。
 そういえば、羽野くんは運動部に所属していないのに薄らと筋肉が割れていて良い身体をしているけれど、何か運動でもしているのかな。
 そんな疑問が湧いたけれど、すぐに羽野くんから漏れる色っぽい声に思考が遮断された。

「うっ、ぁ・・・もっと強く、握って・・・上下に動かせる?」

 私は羽野くんの言葉通り、手で竿を扱く。くぐもった吐息を漏らしながら快感に眉根を寄せる羽野くんが色っぽすぎて目を離せない。
 もっと羽野くんのえっちな表情が見たい。もっと気持ちよくなってほしい。

「他には?どうしたら気持ちいいの?」
「あっ・・・その・・・」

 羽野くんは口をもごもごさせながら、目を反らす。

「ここまでしてるんだから遠慮しないでよ」
「・・・・・・じゃあ、咥えてほしい」
「んっ、ほふ?」
「ちょっ、それでしゃべらないで!んッ・・・」

 羽野くんのお気に召したようなので、私は膨張したものを咥えたまま先っぽ窪みに舌を這わせ、手で竿を扱く。口の中がいっぱいで苦しいけれど、ビクビクと反応する羽野くんが可愛く思えて、夢中で舐めしゃぶった。

「あっ、だめだッ、でるッ・・・」

 ビュクッビュクッビュクッ♥と勢いよく羽野くんの精子が口の中に広がった。いきなり飛び出てきたものに驚いて、舌と手の動きを止める。
 最後まで吐き出した羽野くんは、私が咥えたまま固まっているのを見てものすごい速さで枕元のティッシュを渡してきた。

「ご、ごめん!それ、早く出して!」

 私はティッシュを受け取ると、精子を吐き出す。ねっとりした白いものがティッシュに零れ出る。

「ほんとにごめん!・・・あ、うがいする?それともシャワー浴びる?」

 羽野くんが涙目で必死に謝ってくるのが少し可笑しい。色々したせいで身体がベトベトしていたので、有り難くシャワーを使わせてもらうことにした。



 外がかなり暗くなっていたこともあって、羽野くんが家まで送ってくれることになった。正直、羽野くんの家付近の地理に明るくなかったので大変助かった。
 特に会話をするでもなく、並んで歩く。普通は気まずくなるものだけれど、身体がスッキリと軽いお蔭か頭もスッキリして気分がいい。

「そういえば、羽野くんのご両親って何をされてるの?」
「父親は美術の中学教諭で母親は陶芸家だよ」
「え、すごい!芸術家一家なんだね!」

 羽野くんの言葉を聞いて納得する。羽野くんの家はごく一般的な私の家と比べてどことなくおしゃれな雰囲気だった。

「羽野くんも何か描いたり作ったりするの?」
「いや、僕は特に・・・でも、考えるのが好きだから、囲碁を指すのが趣味かな」
「羽野くん、頭いいもんね」
「・・・結城さんのご両親は?」
「うちはねー、唯の会社員だよ。二人とも同じ会社で働いてて、週に二回は仕事終わりにデートして帰ってくるんだよね。子供ながら、あんなに仲良くてすごいなーって感心してる」
「そっか。・・・その、もしよかったら・・・・・・また今日みたいに学校終わり、誘ってもいいかな?」
「え・・・」

 羽野くんの提案に思わず足を止める。
 確かに今日は最後までできなかったけれど、次のお誘いがあるとは思ってもみなかった。

「あ、嫌ならいいんだ!でも、その、結城さんさえよければ・・・」
「私はいいけど」
「そっか!じゃあまた声掛けるね」

 こちらとしては棚から牡丹餅状態だけれど、羽野くんはそれでいいのかな。
 羽野くんのどことなく弾んだ声を聞きながら、もやもやした気持ちになる。最初に言った通り、別に私は羽野くんと付き合いたいなどと思っているわけではない。そもそも誰かと付き合うということ自体が想像できない。でもそうすると、この関係は何なのだろう。

 ・・・セフレ?

 その言葉が思い浮かんだ瞬間、寒気がした。私みたいな人間がセフレを持つなんて何の冗談だろうか。いや、恋人も同じくらい有り得ないんだけど。そう、セフレとか恋人とか、そんなことを考えること自体、羽野くんに失礼だ。
 色々と考えてしまって頭が痛くなりそうだった。でも幸いそれ以降羽野くんが話しかけてくることは無かったので、無言のまますっかり暗くなった帰り道を歩き続けた。


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