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彼と談話室にいると紅茶とクッキーが運ばれてきた。
紅茶は私の大好きなアールグレイ。
一口飲むと自分でも落ち着くのがよく分かった。
「私、アールグレイ大好きなんです」
「俺も紅茶の中ではアールグレイが1番好き」
「あ、一緒ですね」
カップに落としていた目を彼に向ける。
彼はカップに口を運びながら、私と目が合うと優しげに細めてくれた。
笑った時の目尻の皺が彼の魅力だと思った。
「本当にすみません。
ここまでしていただいて…」
カップをソーサーに置いてから、私は深々と頭を下げた。
父と母と懇意にしていたと言っても私はただの娘なのだ。
二人からの下心が感じられないからこそ、逆に申し訳なかった。
「気にしなくていいよ。
こっちが好きでしてるだけだし。
正直、疲れてるのにここに連れてきて休めるかどうか微妙なところだし。
あいつが少し強引なところもあるから、しんどかったら素直に言ってね」
少し苦笑混じりな彼の心遣いもありがたかった。
「屋敷に一人も寂しいですから。
こうやって誰かと話せるのも今はすごく救われます」
本音だった。
広い屋敷にぽつんと一人、あの静寂は私の悲しみを助長させた。
ここを出たら私はまたあそこへ帰られなければならない。
堪えられるだろうか。
堪えなければ…。
「そうそう、この間までイギリスにいたんだ」
話題を変えて私の気分転換をはかろうとしてくれたのだろう。
脈絡のない彼の唐突な語り口に私は顔をあげる。
申し訳なさとありがたさが込み上げてくる。
彼のこの思いやりを無駄にしたくない。
私は彼のイギリスの話に耳を傾けた。
紅茶は私の大好きなアールグレイ。
一口飲むと自分でも落ち着くのがよく分かった。
「私、アールグレイ大好きなんです」
「俺も紅茶の中ではアールグレイが1番好き」
「あ、一緒ですね」
カップに落としていた目を彼に向ける。
彼はカップに口を運びながら、私と目が合うと優しげに細めてくれた。
笑った時の目尻の皺が彼の魅力だと思った。
「本当にすみません。
ここまでしていただいて…」
カップをソーサーに置いてから、私は深々と頭を下げた。
父と母と懇意にしていたと言っても私はただの娘なのだ。
二人からの下心が感じられないからこそ、逆に申し訳なかった。
「気にしなくていいよ。
こっちが好きでしてるだけだし。
正直、疲れてるのにここに連れてきて休めるかどうか微妙なところだし。
あいつが少し強引なところもあるから、しんどかったら素直に言ってね」
少し苦笑混じりな彼の心遣いもありがたかった。
「屋敷に一人も寂しいですから。
こうやって誰かと話せるのも今はすごく救われます」
本音だった。
広い屋敷にぽつんと一人、あの静寂は私の悲しみを助長させた。
ここを出たら私はまたあそこへ帰られなければならない。
堪えられるだろうか。
堪えなければ…。
「そうそう、この間までイギリスにいたんだ」
話題を変えて私の気分転換をはかろうとしてくれたのだろう。
脈絡のない彼の唐突な語り口に私は顔をあげる。
申し訳なさとありがたさが込み上げてくる。
彼のこの思いやりを無駄にしたくない。
私は彼のイギリスの話に耳を傾けた。
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