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41日目 目まぐるしく変わる状況
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「はぁ・・・。一時はどうなるかと思ったよ・・・」
大きなため息を一つこぼして、僕は項垂れながら赤く染め上げられた廊下を歩いている。ただでさえ重たくのし掛かる背中の荷物が、うねりをあげるかのように重量を増やしてくるようだ。あまりの重さに、気がつけば背中は曲がり、老人のような歩き方をしていた。
「全く。毎度のことですが、彼女の強情さには頭を痛くさせているんです。お手数をおかけいたしました」
隣でクイッとメガネの位置を直しながら、歩く女子生徒。ひさちゃんが、変わらぬ冷静さで苦言を漏らす。あまり感情を表情に浮かべずに話すタイプのようで、彼女の本心を覗くのが少し難しい。しかし、少なくとも今は申し訳なさそうにしているのは、なんとなく分かった。
「その場を収める為とはいえ、龍馬君にあのような条件を出してもらうなんて・・・。一つのクラスをまとめる役職に身を置く者としても、女子としても不甲斐ない限りです」
「え? そんな大した約束を一美とはしていないと思うんだけど・・?」
そう返した、僕の顔を彼女は覗き込むようにしてみてくる。突如として、距離を縮められた顔と顔。あまりの接近で、心臓がドクンと一段と昂ると、呼吸が荒くなってくる。
「男子と女子が・・・登下校を共にするのですよ!!?? そんなの・・・いけないことが起きるに決まってるじゃないですか!!??」
興奮しながら、声を荒げるひさちゃん。顔が近い・・・。言葉の意味よりも、僕の肌を撫でる彼女の口から漏れた息の行方の方が頭を悩ませてくる。いや、捕まえることなんてできないんだが。それにしても、顔が近い・・・。この距離だと、ひさちゃんの全てがよりきめ細かやかに見えてくる。
潤いを十二分に含んだ白い肌。陶器を連想させるそれは、気をしっかりと保っていなければ吸い込まれるように、手を伸ばしてしまいそうになる。それに、ふくよかな曲線を誇る唇。そこだけは直視してはいけない。一度見てしまうと、二度と逸らすことはできないだろう。
「うん? 聞いてますか・・・?」
「え・・? あぁ! 聞いてるよ? 約束の話でしょう?」
「ムゥ! 全然聞いてませんね!! そんな話はしてません!!」
「ご、ごめんよ。ほら? もうすぐ職員室に着いちゃうから、用事が終わったらまた聞かせてよ」
「仕方ありませんね・・・」
二人の視線の先に見える、廊下の方に伸びるように設置された『職員室』と書かれた細い看板。だいぶガタがきているようで、所々に亀裂が見えるが・・・。今は、それは見て見ぬふりをしておこう。
「宮本先生~。いらっしゃいますか~?」
ひさちゃんは、扉の前に立つと何の躊躇いもなしにノックする。そして、用事のある先生の名前を呼ぶ。
「おぉ~、いるぞ~って。学級代表の二人じゃないか! どうしたんだ、何か用か?」
職員室の中から聴こてくる声。声高々に職員室の中だと言うのに叫ぶ声に、他の教員の方は少し顔を歪めた。
「用って・・・。先生が呼んだんじゃないんですか? 私たちを呼んで欲しいって、愛菜ちゃんから聞いてんですけど」
「いや? そんな話を佐々木とはしていないと思うんだけど・・・。何か聞いているか、芳佳!!」
「だから!! 職員室の中で、そんな家の中みたいな声を出さないでよ!! 恥ずかしい!!!」
「いやいや、あなたもかなり声大きいですから・・・」
奥から顔を出してきたのは、先生の娘さんの芳佳さん。目まぐるしく変わる状況に、僕は静かにツッコミを入れるしか、存在感を示すことができそうになかった。
大きなため息を一つこぼして、僕は項垂れながら赤く染め上げられた廊下を歩いている。ただでさえ重たくのし掛かる背中の荷物が、うねりをあげるかのように重量を増やしてくるようだ。あまりの重さに、気がつけば背中は曲がり、老人のような歩き方をしていた。
「全く。毎度のことですが、彼女の強情さには頭を痛くさせているんです。お手数をおかけいたしました」
隣でクイッとメガネの位置を直しながら、歩く女子生徒。ひさちゃんが、変わらぬ冷静さで苦言を漏らす。あまり感情を表情に浮かべずに話すタイプのようで、彼女の本心を覗くのが少し難しい。しかし、少なくとも今は申し訳なさそうにしているのは、なんとなく分かった。
「その場を収める為とはいえ、龍馬君にあのような条件を出してもらうなんて・・・。一つのクラスをまとめる役職に身を置く者としても、女子としても不甲斐ない限りです」
「え? そんな大した約束を一美とはしていないと思うんだけど・・?」
そう返した、僕の顔を彼女は覗き込むようにしてみてくる。突如として、距離を縮められた顔と顔。あまりの接近で、心臓がドクンと一段と昂ると、呼吸が荒くなってくる。
「男子と女子が・・・登下校を共にするのですよ!!?? そんなの・・・いけないことが起きるに決まってるじゃないですか!!??」
興奮しながら、声を荒げるひさちゃん。顔が近い・・・。言葉の意味よりも、僕の肌を撫でる彼女の口から漏れた息の行方の方が頭を悩ませてくる。いや、捕まえることなんてできないんだが。それにしても、顔が近い・・・。この距離だと、ひさちゃんの全てがよりきめ細かやかに見えてくる。
潤いを十二分に含んだ白い肌。陶器を連想させるそれは、気をしっかりと保っていなければ吸い込まれるように、手を伸ばしてしまいそうになる。それに、ふくよかな曲線を誇る唇。そこだけは直視してはいけない。一度見てしまうと、二度と逸らすことはできないだろう。
「うん? 聞いてますか・・・?」
「え・・? あぁ! 聞いてるよ? 約束の話でしょう?」
「ムゥ! 全然聞いてませんね!! そんな話はしてません!!」
「ご、ごめんよ。ほら? もうすぐ職員室に着いちゃうから、用事が終わったらまた聞かせてよ」
「仕方ありませんね・・・」
二人の視線の先に見える、廊下の方に伸びるように設置された『職員室』と書かれた細い看板。だいぶガタがきているようで、所々に亀裂が見えるが・・・。今は、それは見て見ぬふりをしておこう。
「宮本先生~。いらっしゃいますか~?」
ひさちゃんは、扉の前に立つと何の躊躇いもなしにノックする。そして、用事のある先生の名前を呼ぶ。
「おぉ~、いるぞ~って。学級代表の二人じゃないか! どうしたんだ、何か用か?」
職員室の中から聴こてくる声。声高々に職員室の中だと言うのに叫ぶ声に、他の教員の方は少し顔を歪めた。
「用って・・・。先生が呼んだんじゃないんですか? 私たちを呼んで欲しいって、愛菜ちゃんから聞いてんですけど」
「いや? そんな話を佐々木とはしていないと思うんだけど・・・。何か聞いているか、芳佳!!」
「だから!! 職員室の中で、そんな家の中みたいな声を出さないでよ!! 恥ずかしい!!!」
「いやいや、あなたもかなり声大きいですから・・・」
奥から顔を出してきたのは、先生の娘さんの芳佳さん。目まぐるしく変わる状況に、僕は静かにツッコミを入れるしか、存在感を示すことができそうになかった。
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