ゆうしゃの夏、まほうつかいの空

えんびあゆ

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第3章 ゆうしゃのしるしを巡る冒険

第25話 秘密の地図とゆうしゃのしるし[13]

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「……ねえ、そらた」
「なに?」
「わたしね、お姉ちゃんのこと……ちゃんと“いなくなった”って、受けとめてなかったのかも」

そらたは黙って、なつみの顔を見つめた。

「“しんじゃった”って、思うと、もう会えない気がして。でも、“いなくなった”って思うと、どこかにいるような気がして。どこかで、わたしのことを見てくれてるような……そんな気が、ずっとしてた」
「……うん」
「でも、お姉ちゃん、ほんとはずっと、ここにいたんだよね。わたしのなかに、思い出に。声に。文字に。こうして歩いているこの道に……」

なつみは立ち止まり、風に髪をなびかせながら、ゆっくりと空を見上げた。

「この“しるし”って、そういうことなんだと思う。“かたちのない思い”を見つけること……」
「……」
「そらたは、そういうの、ある?」

しばらく考えて、そらたがぽつりと答えた。

「あるよ。……ぼくにとって、“まほう”って、たぶんそういうものだから」
「まほう?」
「うん。見えないけど、たしかにある。言葉とか、想いとか、優しさとか。そういうのが、まほうだと思ってる」
「……!」

なつみの目がふっと開かれる。

「じゃあ、わたし……たくさんの“まほう”に支えられてたんだ」

「うん。たぶん、なっちゃん自身が“まほうのあるひと”なんだと思うよ」

ふたりは並んで歩きながら、やがて土手の一番高いところにたどり着いた。

そこには、なにもなかった。
ただ、風と、空と、草の音があった。

けれど―――
「……ここ、だ」

なつみが、ぽつりと言った。

「ここが、“しるし”の場所だと思う」
「理由、あるの?」
「ううん。でも、なんか……そう思ったの。なんとなくだけど」

そらたは、彼女の顔を見て、笑った。

「じゃあ、きっとそうなんだと思う」

ふたりはその場にしゃがみこみ、草を撫でながら、ゆっくりと流れる川を見つめた。

「お姉ちゃん、ここからの景色が好きだったのかな」
「そうかもしれない。……あるいは、なっちゃんがここに立って、何かを思い出すのを願ってたのかもね」

なつみは小さく目を閉じて、風の音に耳を澄ませた。

聞こえてくるのは、草の揺れる音。
川の流れる音。
そして―――心のなかで呼びかける、静かな声。

「……ただいまって、まだ言えないな」

ぽつりとつぶやいたその言葉に、そらたは小さくうなずいた。

「うん。きっと、そのときはちゃんとくるよ」

空が、ゆっくりと群青に染まっていく。
ふたりは、まだ“しるし”のすべてを見つけたわけじゃなかった。
だけど、心のなかにはたしかな何かが芽生えはじめていた。

“かたちのない おもい”が、しるしとして残る。
それをたどる、夏の冒険は、あと少しだけ続いていく―――。
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