29 / 68
第4章 まほうつかいの空
最終話 まほうつかいの空[2]
しおりを挟む
そして、そんなわたしの隣には、
静かに、でもずっと「まほう」をくれた誰かがいた。
そらたの言葉。まなざし。手のあたたかさ。
目に見えないたくさんの魔法が、わたしの背中を押してくれていた。
ゆうしゃとまほうつかい。
それはきっと、物語の中の名前じゃない。
心のなかで、誰もが持っている“なまえ”なんだ。
「まっててほしいって思った。そらたと一緒に、ここまで帰ってきたよ」
そう言うなつみは、少し誇らしげだった。
そらたも空を見上げ、つぶやいた。
「ただいま、なっちゃん。そして……」
「なに?」
「おかえり」
その声には、優しさと信頼が満ちていた。
なつみはそっとそらたに寄り添い、ふたりは夜空の下で肩を寄せ合った。
「ねえ、なっちゃん。ぼくたち、しるしを探してるうちに、何か大切なものを見つけたんじゃないかなって、思うんだ」
「うん……」
なつみはそっと、胸に手を当てた。
そこには、たしかにひとつひとつの“しるし”が刻んだ想いがあった。
――お姉ちゃんの声。
――寄り添ってくれた手。
――見えない未来を照らす、あの光。
――そして、最後に見つけたのは、「ただいまと言える場所」。
静寂の中で、ふたりの心は確かに繋がっていた。
しるしの冒険は終わったけれど、その心の旅は続いていく。
なつみは深呼吸して、そらたと一歩を踏み出した。
「したい冒険、まだまだあるよね!」
「もちろん。次は、新しい“まほう”探しだってできるかも」
「ねえ、そらた。わたし、“ゆうしゃ”っぽくなれたかな?」
「うん。なっちゃんは、ちゃんと“ゆうしゃ”だったよ」
そらたは、にこっと笑った。
「それなら……そらたは、いちばんすごい“まほうつかい”だね」
「え?なんで?」
「だって、“まほう”って、見えないけど心をあったかくしてくれるものでしょ?そらたはずっと、そういう“まほう”をくれたから」
「……なっちゃんも、ぼくにとっての“まほう“だったけどね」
「えっ……、どういうこと!?」
「なんでもない」
「えー、それってどういうことなのー!」
ふたりは軽やかに笑い、星空が2人を見送るように夜道の先に続く明かりに向かって歩いていく。
「……やっぱり、そらたは私にとっての“まほうつかい”なんだね」
なつみはそらたの背中を見守り小さく笑いながら、空を見上げた。
星が、ぽつぽつと滲むように瞬いていた。
「お姉ちゃん、ただいま。わたし、帰ってきたよ。ちゃんと歩いて、ちゃんと笑って、ちゃんと向き合って……そらたと一緒に、ここまで来たよ」
ほんの一粒だけ、なつみの瞳からこぼれ落ちた雫は、星明かりの中で静かに光った。
「お姉ちゃんはもう居ないけど―――お姉ちゃんが遺してくれたしるしの意味に気がつけたよ」
風がそっと吹き抜けた。
星の光が、まるで返事をするようにきらめいた。
(わたしはもう、立ち止まらない。だって、“しるし”は、わたしの中にあるから)
(わたしは“ゆうしゃ”――誰かの想いを受けとって、歩き続けるひと)
(そして、隣には“まほうつかい”がいてくれる。見えない光を、そっと灯してくれる)
ひと夏の冒険のなかで、なつみは“ゆうしゃ”になり、そらたは“まほうつかい”になった。
それは、誰かに与えられた肩書きじゃない。
ふたりが、ふたりらしく過ごした時間の中で、
そっと心に宿った“なまえ”だった。
強さとは、ひとりで戦うことじゃない。
優しさとは、そっと手を差し伸べること。
ふたりは、それぞれのしるしを胸に、
次の物語へと歩きはじめた——。
そして、それはもう――
「ゆうしゃの夏、まほうつかいの空」の終わりであり、
まだまだ続くふたりの物語の“はじまり”でもありました。
-完-
静かに、でもずっと「まほう」をくれた誰かがいた。
そらたの言葉。まなざし。手のあたたかさ。
目に見えないたくさんの魔法が、わたしの背中を押してくれていた。
ゆうしゃとまほうつかい。
それはきっと、物語の中の名前じゃない。
心のなかで、誰もが持っている“なまえ”なんだ。
「まっててほしいって思った。そらたと一緒に、ここまで帰ってきたよ」
そう言うなつみは、少し誇らしげだった。
そらたも空を見上げ、つぶやいた。
「ただいま、なっちゃん。そして……」
「なに?」
「おかえり」
その声には、優しさと信頼が満ちていた。
なつみはそっとそらたに寄り添い、ふたりは夜空の下で肩を寄せ合った。
「ねえ、なっちゃん。ぼくたち、しるしを探してるうちに、何か大切なものを見つけたんじゃないかなって、思うんだ」
「うん……」
なつみはそっと、胸に手を当てた。
そこには、たしかにひとつひとつの“しるし”が刻んだ想いがあった。
――お姉ちゃんの声。
――寄り添ってくれた手。
――見えない未来を照らす、あの光。
――そして、最後に見つけたのは、「ただいまと言える場所」。
静寂の中で、ふたりの心は確かに繋がっていた。
しるしの冒険は終わったけれど、その心の旅は続いていく。
なつみは深呼吸して、そらたと一歩を踏み出した。
「したい冒険、まだまだあるよね!」
「もちろん。次は、新しい“まほう”探しだってできるかも」
「ねえ、そらた。わたし、“ゆうしゃ”っぽくなれたかな?」
「うん。なっちゃんは、ちゃんと“ゆうしゃ”だったよ」
そらたは、にこっと笑った。
「それなら……そらたは、いちばんすごい“まほうつかい”だね」
「え?なんで?」
「だって、“まほう”って、見えないけど心をあったかくしてくれるものでしょ?そらたはずっと、そういう“まほう”をくれたから」
「……なっちゃんも、ぼくにとっての“まほう“だったけどね」
「えっ……、どういうこと!?」
「なんでもない」
「えー、それってどういうことなのー!」
ふたりは軽やかに笑い、星空が2人を見送るように夜道の先に続く明かりに向かって歩いていく。
「……やっぱり、そらたは私にとっての“まほうつかい”なんだね」
なつみはそらたの背中を見守り小さく笑いながら、空を見上げた。
星が、ぽつぽつと滲むように瞬いていた。
「お姉ちゃん、ただいま。わたし、帰ってきたよ。ちゃんと歩いて、ちゃんと笑って、ちゃんと向き合って……そらたと一緒に、ここまで来たよ」
ほんの一粒だけ、なつみの瞳からこぼれ落ちた雫は、星明かりの中で静かに光った。
「お姉ちゃんはもう居ないけど―――お姉ちゃんが遺してくれたしるしの意味に気がつけたよ」
風がそっと吹き抜けた。
星の光が、まるで返事をするようにきらめいた。
(わたしはもう、立ち止まらない。だって、“しるし”は、わたしの中にあるから)
(わたしは“ゆうしゃ”――誰かの想いを受けとって、歩き続けるひと)
(そして、隣には“まほうつかい”がいてくれる。見えない光を、そっと灯してくれる)
ひと夏の冒険のなかで、なつみは“ゆうしゃ”になり、そらたは“まほうつかい”になった。
それは、誰かに与えられた肩書きじゃない。
ふたりが、ふたりらしく過ごした時間の中で、
そっと心に宿った“なまえ”だった。
強さとは、ひとりで戦うことじゃない。
優しさとは、そっと手を差し伸べること。
ふたりは、それぞれのしるしを胸に、
次の物語へと歩きはじめた——。
そして、それはもう――
「ゆうしゃの夏、まほうつかいの空」の終わりであり、
まだまだ続くふたりの物語の“はじまり”でもありました。
-完-
0
あなたにおすすめの小説
貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳
大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。
でも、これはただのお見合いではないらしい。
初出はエブリスタ様にて。
また番外編を追加する予定です。
シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。
表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
幼き改革者、皇孫降臨 〜三歳にして朝廷を震わせる〜
由香
キャラ文芸
瑞栄王朝の皇孫・凌曜は、わずか三歳。
泣かず、騒がず、ただ静かに周囲を見つめる幼子だった。
しかしその「無邪気な疑問」は、後宮の不正を暴き、腐敗した朝廷を揺るがしていく。
皇帝である祖父の絶対的な溺愛と後ろ盾のもと、血を流すことなく失脚者を生み、国の歪みを正していく凌曜。
やがて反改革派の最後の抵抗を越え、彼は“決める者”ではなく、“問い続ける存在”として朝廷に立つ。
これは、剣も権謀も持たぬ幼き改革者が、「なぜ?」という一言で国を変えていく物語。
悪徳公主と冷徹皇帝陛下の後宮薬膳茶
菱沼あゆ
キャラ文芸
冷徹非道と噂の皇帝陛下のもとに、これまた悪しき評判しかない異国の王女、琳玲がやってきた。
琳玲は皇后の位は与えられたが、離宮に閉じ込められる。
それぞれの思惑がある離宮の女官や侍女たちは、怪しい薬草で皇帝陛下たちを翻弄する琳玲を観察――。
悪徳公主と冷徹皇帝陛下と女官たちの日々は今日も騒がしい。
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる