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宮原蒼太編
第30話 ほめられたことが、よくわからない[3]
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蒼太は涙の跡が乾いた頬をこすって、うなずいた。
うなずいたけれど、頭の中は真っ白だった。
最初に言う一言。
そんなの、今まで考えたことがない。
蒼太は普段、言葉を用意しない。
というより、用意できない。
喉の奥に言葉があるのに、出す順番が分からなくなる。
出す前に、相手の顔色を見てしまって、勝手に「ダメだ」と判断してしまう。
だから、最初の一言を決める、というのは、蒼太にとって少し怖かった。
でも同時に、少しだけ楽でもあった。
明日、何かが起きても、最低限「これだけは言う」という杭を打てる気がした。
しのはペンを持たず、蒼太が書くのを待った。
急かさない。
励ましもしない。
「頑張って」と言われないのが、なぜか助かった。
頑張れるか分からないのに、頑張れと言われると、もう泣きたくなるからだ。
蒼太は紙を見つめた。
白い。
白いと、怖い。
「……何でもいいんですか」
声が震えた。
「何でもいい」の中には、逃げ道もある。
逃げ道があると、蒼太は少しだけ息ができる。
「何でもいいです。ただ、“相手を変える言葉”じゃなくて、“自分を守る言葉”にしましょう」
自分を守る言葉。
その言い方が、蒼太の胸に少し残った。
守る、というのは、負けることじゃない。
蒼太はどこかでそう思いたかった。
蒼太はペンを握った。
握ると、手のひらがじっとりしているのが分かった。
汗だ。
こんなことで汗が出るのが恥ずかしくて、蒼太はペンを持ち替えるふりをして手のひらをこすった。
頭に浮かんだ一言は、すぐ消える。
「やめて」
「言わないで」
「こわい」
どれも、言った瞬間に泣いてしまいそうだった。
しのが静かに言った。
「“行く”と決めた人は、すでに強いです。でも、その強さを見せる必要はないです」
蒼太は、少しだけ目を上げた。
強い、という言葉は、蒼太には遠い。
でも、しのの言い方は「あなたは強いんだ」と押しつける感じじゃなかった。
“事実として、もうやっている”という感じだった。
蒼太は、ゆっくり書いた。
『きょうは ちょっと こわい』
書いて、すぐに消したくなった。
こんなの、恥ずかしい。
情けない。
男子が言うことじゃない。
陽菜に言われそうだ。
でも、しのは否定しない。
しのは、文字を見たまま言った。
「それは、あなたの事実です。嘘じゃない」
“嘘じゃない”。
その言葉が、妙に安心だった。
嘘じゃないことを言っていい場所が、蒼太には少なかった。
蒼太は小さく首を振った。
「……でも、それ言ったら、また……」
また、泣く。
また、からかわれる。
また、ノロマって言われる。
その“また”が、胸の奥で増える。
しのは、少しだけ間を置いた。
「じゃあ、“こわい”を言わない形で、守る言葉にしますか」
蒼太は、うなずいた。
うなずいたけれど、何があるのか分からない。
しのは提案を押しつけず、選択肢として置いた。
「たとえば、『きょうは それ やめて』。短いです。理由を言わなくていい」
蒼太は、その文字を頭の中で声にしてみた。
――きょうは それ やめて。
……言える気がしない。
でも、“理由を言わなくていい”が助かる。
蒼太は、理由を言おうとすると詰まる。
詰まると泣く。
泣くと終わる。
理由がないなら、詰まらないかもしれない。
蒼太は紙に書き直した。
『きょうは それ やめて』
書いた瞬間、心臓が跳ねた。
自分が強くなったわけじゃない。
でも、言葉が“形”になった。
形になると、明日まで持ち運べる。
蒼太は、紙を指で押さえた。
風で飛んでいきそうな気がした。
飛ばないのに、押さえた。
それくらい、この紙が大事に思えた。
しのは、ペン先で紙の端を軽く叩いた。
「言えるかどうかは、明日決めていいです。言えないなら言えないでいい。その場合、“帰る”を選べます」
蒼太は、胸が詰まった。
帰る、を選べる。
逃げていい、じゃない。
“選べる”。
蒼太が欲しかったのは、たぶんこの言葉だった。
「……ぼく、帰っちゃったら……だめですか」
声がまた小さくなる。
小さい声は、自分でも聞こえにくい。
しのは首を横に振った。
「だめではないです。帰るのは、判断です。判断は、えらいです」
“えらい”。
蒼太はその言葉に、少しだけびくっとした。
えらい、と言われると、胸が苦しくなることがある。
「えらいね」と言われたあとに、また同じことを求められる気がするからだ。
でも、しのの“えらい”は違った。
続けろ、の意味がなかった。
ただ、今の選択を、事実として肯定しているだけだった。
蒼太は、唇を噛んだ。
泣きたくない。
でも、泣きたい。
「……じゃあ、行って、だめだったら、帰ってもいい」
それは、蒼太の口から出た言葉だった。
誰かに言わされた感じじゃない。
蒼太が、自分で組み立てた言葉だった。
しのは、その言葉を拾う。
「いま、“行って、だめだったら、帰る”と決めました」
蒼太は、うなずいた。
うなずくと、肩が少し下がった。
ずっと上がっていた。
自分でも気づいていなかった。
しのは、ここで初めて、封筒を蒼太に返した。
封筒は軽い。
でも蒼太には、ずしっと重く感じた。
お金の重さじゃない。
「自分がここに来た」という事実の重さだ。
「足りない分は……次でいいですか?」
蒼太は思わず言ってしまった。
言った瞬間に、自分で自分を叱りたくなる。
次。
次がある前提で喋ってしまった。
しのは、すぐに首を横に振った。
「次の約束はしません。今日は今日で終わりです」
蒼太は、一瞬だけ心が沈んだ。
でも、それと同時に少しだけ安心した。
“約束をしない”、ということは、“縛られない”ということだ。
しのは淡々と言った。
「今日の分のお金は、受け取りません。足りないから、ではなく――今日の時間は、あなたが自分で決めた時間だったからです」
蒼太は、目をぱちぱちさせた。
「……ぼくが?」
「はい。来たこと。話したこと。紙に書いたこと。全部、あなたが決めました。私がしたのは、紙を出したことと、言葉を短くしたことだけです」
蒼太は、胸の奥が変な感じになった。
嬉しいのか、恥ずかしいのか、分からない。
でも、少しだけ“熱い”感じがした。
胸の奥で、何かが小さく点いたみたいな。
それでも蒼太は、すぐに言えなかった。
「ありがとうございます」と言うのが、蒼太は苦手だ。
言うと泣きそうになる。
泣くと全部が台無しになる気がする。
だから、代わりに聞いた。
「……じゃあ、ぼく、ほめられたんですか?」
しのは一瞬だけ、考える顔をした。
「今日は、“褒めた”というより、“あなたの判断を言葉にしました”。褒めは、その先にあります」
蒼太は、ますます分からなくなった。
でも、分からないままでいい、とも思った。
分かったふりをするより、ずっと楽だった。
しのは最後に、短く言った。
「蒼太くんは、怖いのに動ける人です。今日ここに来たことが、その証拠です」
“証拠”。
蒼太はその言葉が好きだった。
証拠は、誰かの気分で変わらない。
証拠があるなら、明日も少し信じられる。
蒼太は小さく、でもちゃんと頭を下げた。
「……ありがとうございました」
言えた。
泣かなかった。
胸の奥はまだ揺れているのに、声は出た。
それだけで、蒼太は少しだけ自分を誇らしく思った。
外に出ると、夕方の風が冷たかった。
頬が痛い。
でも、さっきの涙の痛さとは違った。
駅までの道を歩きながら、蒼太は紙を何度も確認した。
ポケットに入れたはずなのに、なくなっていないか心配だった。
何度も触って確かめる。
紙がある。
それだけで、少し安心する。
公園は明日だ。
明日という言葉が、蒼太には重い。
でも今日は――今日だけは、もう少し軽かった。
家の近くまで来ると、急に不安が戻ってきた。
家に帰れば、いつも通りの夜がある。
宿題。
お風呂。
明日の準備。
そして、明日。
蒼太は玄関の前で一度だけ立ち止まった。
朝みたいに固まるわけじゃない。
ただ、呼吸をひとつした。
――行って、だめだったら、帰る。
自分で言った言葉を、心の中でもう一度言ってみた。
言うと、少しだけ胸が落ち着いた。
ドアを開ける。
「ただいま」
声は小さかったけれど、ちゃんと出た。
お母さんが台所から「おかえり」と返す。
いつもの音。
いつもの匂い。
いつもの部屋。
世界は何も変わっていない。
それなのに、蒼太のポケットには紙がある。
たった一行。
『きょうは それ やめて』
でも、それがあるだけで、明日が少し違う気がした。
蒼太は自分の部屋に入り、リュックを下ろした。
紙を机の引き出しに入れようとして、やめた。
引き出しにしまうと、見えなくなる。
見えなくなると、無かったことになりそうだった。
だから、ノートの最初のページに挟んだ。
買ったばかりの、無地の表紙のノート。
蒼太の“今日”が入る場所。
挟んだだけで、少しだけ安心した。
ベッドに横になり、天井を見た。
誰にも褒められていない。
でも、胸の奥に、さっきの言葉が残っている。
――怖いのに動ける人。
蒼太は、その言葉が自分のことだとは、まだ信じきれなかった。
でも、否定もしなかった。
否定しない、というのは蒼太にとって大きなことだった。
目を閉じる。
明日は怖い。
それでも、今日より少しだけ、呼吸ができそうだった。
うなずいたけれど、頭の中は真っ白だった。
最初に言う一言。
そんなの、今まで考えたことがない。
蒼太は普段、言葉を用意しない。
というより、用意できない。
喉の奥に言葉があるのに、出す順番が分からなくなる。
出す前に、相手の顔色を見てしまって、勝手に「ダメだ」と判断してしまう。
だから、最初の一言を決める、というのは、蒼太にとって少し怖かった。
でも同時に、少しだけ楽でもあった。
明日、何かが起きても、最低限「これだけは言う」という杭を打てる気がした。
しのはペンを持たず、蒼太が書くのを待った。
急かさない。
励ましもしない。
「頑張って」と言われないのが、なぜか助かった。
頑張れるか分からないのに、頑張れと言われると、もう泣きたくなるからだ。
蒼太は紙を見つめた。
白い。
白いと、怖い。
「……何でもいいんですか」
声が震えた。
「何でもいい」の中には、逃げ道もある。
逃げ道があると、蒼太は少しだけ息ができる。
「何でもいいです。ただ、“相手を変える言葉”じゃなくて、“自分を守る言葉”にしましょう」
自分を守る言葉。
その言い方が、蒼太の胸に少し残った。
守る、というのは、負けることじゃない。
蒼太はどこかでそう思いたかった。
蒼太はペンを握った。
握ると、手のひらがじっとりしているのが分かった。
汗だ。
こんなことで汗が出るのが恥ずかしくて、蒼太はペンを持ち替えるふりをして手のひらをこすった。
頭に浮かんだ一言は、すぐ消える。
「やめて」
「言わないで」
「こわい」
どれも、言った瞬間に泣いてしまいそうだった。
しのが静かに言った。
「“行く”と決めた人は、すでに強いです。でも、その強さを見せる必要はないです」
蒼太は、少しだけ目を上げた。
強い、という言葉は、蒼太には遠い。
でも、しのの言い方は「あなたは強いんだ」と押しつける感じじゃなかった。
“事実として、もうやっている”という感じだった。
蒼太は、ゆっくり書いた。
『きょうは ちょっと こわい』
書いて、すぐに消したくなった。
こんなの、恥ずかしい。
情けない。
男子が言うことじゃない。
陽菜に言われそうだ。
でも、しのは否定しない。
しのは、文字を見たまま言った。
「それは、あなたの事実です。嘘じゃない」
“嘘じゃない”。
その言葉が、妙に安心だった。
嘘じゃないことを言っていい場所が、蒼太には少なかった。
蒼太は小さく首を振った。
「……でも、それ言ったら、また……」
また、泣く。
また、からかわれる。
また、ノロマって言われる。
その“また”が、胸の奥で増える。
しのは、少しだけ間を置いた。
「じゃあ、“こわい”を言わない形で、守る言葉にしますか」
蒼太は、うなずいた。
うなずいたけれど、何があるのか分からない。
しのは提案を押しつけず、選択肢として置いた。
「たとえば、『きょうは それ やめて』。短いです。理由を言わなくていい」
蒼太は、その文字を頭の中で声にしてみた。
――きょうは それ やめて。
……言える気がしない。
でも、“理由を言わなくていい”が助かる。
蒼太は、理由を言おうとすると詰まる。
詰まると泣く。
泣くと終わる。
理由がないなら、詰まらないかもしれない。
蒼太は紙に書き直した。
『きょうは それ やめて』
書いた瞬間、心臓が跳ねた。
自分が強くなったわけじゃない。
でも、言葉が“形”になった。
形になると、明日まで持ち運べる。
蒼太は、紙を指で押さえた。
風で飛んでいきそうな気がした。
飛ばないのに、押さえた。
それくらい、この紙が大事に思えた。
しのは、ペン先で紙の端を軽く叩いた。
「言えるかどうかは、明日決めていいです。言えないなら言えないでいい。その場合、“帰る”を選べます」
蒼太は、胸が詰まった。
帰る、を選べる。
逃げていい、じゃない。
“選べる”。
蒼太が欲しかったのは、たぶんこの言葉だった。
「……ぼく、帰っちゃったら……だめですか」
声がまた小さくなる。
小さい声は、自分でも聞こえにくい。
しのは首を横に振った。
「だめではないです。帰るのは、判断です。判断は、えらいです」
“えらい”。
蒼太はその言葉に、少しだけびくっとした。
えらい、と言われると、胸が苦しくなることがある。
「えらいね」と言われたあとに、また同じことを求められる気がするからだ。
でも、しのの“えらい”は違った。
続けろ、の意味がなかった。
ただ、今の選択を、事実として肯定しているだけだった。
蒼太は、唇を噛んだ。
泣きたくない。
でも、泣きたい。
「……じゃあ、行って、だめだったら、帰ってもいい」
それは、蒼太の口から出た言葉だった。
誰かに言わされた感じじゃない。
蒼太が、自分で組み立てた言葉だった。
しのは、その言葉を拾う。
「いま、“行って、だめだったら、帰る”と決めました」
蒼太は、うなずいた。
うなずくと、肩が少し下がった。
ずっと上がっていた。
自分でも気づいていなかった。
しのは、ここで初めて、封筒を蒼太に返した。
封筒は軽い。
でも蒼太には、ずしっと重く感じた。
お金の重さじゃない。
「自分がここに来た」という事実の重さだ。
「足りない分は……次でいいですか?」
蒼太は思わず言ってしまった。
言った瞬間に、自分で自分を叱りたくなる。
次。
次がある前提で喋ってしまった。
しのは、すぐに首を横に振った。
「次の約束はしません。今日は今日で終わりです」
蒼太は、一瞬だけ心が沈んだ。
でも、それと同時に少しだけ安心した。
“約束をしない”、ということは、“縛られない”ということだ。
しのは淡々と言った。
「今日の分のお金は、受け取りません。足りないから、ではなく――今日の時間は、あなたが自分で決めた時間だったからです」
蒼太は、目をぱちぱちさせた。
「……ぼくが?」
「はい。来たこと。話したこと。紙に書いたこと。全部、あなたが決めました。私がしたのは、紙を出したことと、言葉を短くしたことだけです」
蒼太は、胸の奥が変な感じになった。
嬉しいのか、恥ずかしいのか、分からない。
でも、少しだけ“熱い”感じがした。
胸の奥で、何かが小さく点いたみたいな。
それでも蒼太は、すぐに言えなかった。
「ありがとうございます」と言うのが、蒼太は苦手だ。
言うと泣きそうになる。
泣くと全部が台無しになる気がする。
だから、代わりに聞いた。
「……じゃあ、ぼく、ほめられたんですか?」
しのは一瞬だけ、考える顔をした。
「今日は、“褒めた”というより、“あなたの判断を言葉にしました”。褒めは、その先にあります」
蒼太は、ますます分からなくなった。
でも、分からないままでいい、とも思った。
分かったふりをするより、ずっと楽だった。
しのは最後に、短く言った。
「蒼太くんは、怖いのに動ける人です。今日ここに来たことが、その証拠です」
“証拠”。
蒼太はその言葉が好きだった。
証拠は、誰かの気分で変わらない。
証拠があるなら、明日も少し信じられる。
蒼太は小さく、でもちゃんと頭を下げた。
「……ありがとうございました」
言えた。
泣かなかった。
胸の奥はまだ揺れているのに、声は出た。
それだけで、蒼太は少しだけ自分を誇らしく思った。
外に出ると、夕方の風が冷たかった。
頬が痛い。
でも、さっきの涙の痛さとは違った。
駅までの道を歩きながら、蒼太は紙を何度も確認した。
ポケットに入れたはずなのに、なくなっていないか心配だった。
何度も触って確かめる。
紙がある。
それだけで、少し安心する。
公園は明日だ。
明日という言葉が、蒼太には重い。
でも今日は――今日だけは、もう少し軽かった。
家の近くまで来ると、急に不安が戻ってきた。
家に帰れば、いつも通りの夜がある。
宿題。
お風呂。
明日の準備。
そして、明日。
蒼太は玄関の前で一度だけ立ち止まった。
朝みたいに固まるわけじゃない。
ただ、呼吸をひとつした。
――行って、だめだったら、帰る。
自分で言った言葉を、心の中でもう一度言ってみた。
言うと、少しだけ胸が落ち着いた。
ドアを開ける。
「ただいま」
声は小さかったけれど、ちゃんと出た。
お母さんが台所から「おかえり」と返す。
いつもの音。
いつもの匂い。
いつもの部屋。
世界は何も変わっていない。
それなのに、蒼太のポケットには紙がある。
たった一行。
『きょうは それ やめて』
でも、それがあるだけで、明日が少し違う気がした。
蒼太は自分の部屋に入り、リュックを下ろした。
紙を机の引き出しに入れようとして、やめた。
引き出しにしまうと、見えなくなる。
見えなくなると、無かったことになりそうだった。
だから、ノートの最初のページに挟んだ。
買ったばかりの、無地の表紙のノート。
蒼太の“今日”が入る場所。
挟んだだけで、少しだけ安心した。
ベッドに横になり、天井を見た。
誰にも褒められていない。
でも、胸の奥に、さっきの言葉が残っている。
――怖いのに動ける人。
蒼太は、その言葉が自分のことだとは、まだ信じきれなかった。
でも、否定もしなかった。
否定しない、というのは蒼太にとって大きなことだった。
目を閉じる。
明日は怖い。
それでも、今日より少しだけ、呼吸ができそうだった。
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