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三
彼とハイキングすることになるなんて!? (1)
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スッポリと闇に包まれていた。
携帯電話のフラッシュライトも、一メートル先で光が闇に吸い取られる。
もう元のハイキングコースに戻ってもいいはず――なのに、赤いリボンはどこにも見当たらない。
見慣れない廃れた炭小屋も通り過ぎた。
いくらなんでも、これはおかしい。もしや完全に迷ってしまったのでは? とさすがに心配になる。
そろそろお腹が空いてきたし、息も切れてきた。
「ちょっと休憩……」
よろめく足を止めた矢先、疲れ果てた私はパフッと何かに衝突した。
それが彼の背中だと分かったとき、私の顔がボッと熱くなった。
ぶつかっただけで。
「中学生じゃあるまいし……」
声に出して、自分に突っ込みを入れてしまった。
彼が振り向く。
「ただの独り言――」
「あれを見ろ」
言い訳する私を遮って、彼が前方を指す。
その方向に顔を向けると、街明かりが私の目に映った。
その光は散りばめられた宝石のように輝いている。
急に体にエネルギーが沸いて、彼を追い越して急ぎ足で向った。
蜃気楼のように、目の前に広がる夜景のパノラマ――
「危ない!」
突然、彼に後ろから腕を引っ張られた。
振り向く間もなく、私の足がズズズーと滑り落ちる。
寸でのところで腕を掴む彼が、私の落下を食い止めた。
悲鳴さえ出なかった。
崖がどうしてこんなところに?? とまともに考えられたのは、彼に抱えられ、安全な場所に移動した後のことだった。
「これ以上暗闇の中で歩くのは危険だ。元来た道に戻るどころか、深みにはまっている」
彼の声が間近で聞こえる。
「明るくなるまで、待つしかない」
高所恐怖症の人間が味わう最大の恐怖を味わった私は、うな垂れながら頷いた。
携帯電話のフラッシュライトも、一メートル先で光が闇に吸い取られる。
もう元のハイキングコースに戻ってもいいはず――なのに、赤いリボンはどこにも見当たらない。
見慣れない廃れた炭小屋も通り過ぎた。
いくらなんでも、これはおかしい。もしや完全に迷ってしまったのでは? とさすがに心配になる。
そろそろお腹が空いてきたし、息も切れてきた。
「ちょっと休憩……」
よろめく足を止めた矢先、疲れ果てた私はパフッと何かに衝突した。
それが彼の背中だと分かったとき、私の顔がボッと熱くなった。
ぶつかっただけで。
「中学生じゃあるまいし……」
声に出して、自分に突っ込みを入れてしまった。
彼が振り向く。
「ただの独り言――」
「あれを見ろ」
言い訳する私を遮って、彼が前方を指す。
その方向に顔を向けると、街明かりが私の目に映った。
その光は散りばめられた宝石のように輝いている。
急に体にエネルギーが沸いて、彼を追い越して急ぎ足で向った。
蜃気楼のように、目の前に広がる夜景のパノラマ――
「危ない!」
突然、彼に後ろから腕を引っ張られた。
振り向く間もなく、私の足がズズズーと滑り落ちる。
寸でのところで腕を掴む彼が、私の落下を食い止めた。
悲鳴さえ出なかった。
崖がどうしてこんなところに?? とまともに考えられたのは、彼に抱えられ、安全な場所に移動した後のことだった。
「これ以上暗闇の中で歩くのは危険だ。元来た道に戻るどころか、深みにはまっている」
彼の声が間近で聞こえる。
「明るくなるまで、待つしかない」
高所恐怖症の人間が味わう最大の恐怖を味わった私は、うな垂れながら頷いた。
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