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彼とハイキングすることになるなんて!? (1)

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 スッポリと闇に包まれていた。
 携帯電話のフラッシュライトも、一メートル先で光が闇に吸い取られる。
 もう元のハイキングコースに戻ってもいいはず――なのに、赤いリボンはどこにも見当たらない。
 見慣れない廃れた炭小屋も通り過ぎた。
 いくらなんでも、これはおかしい。もしや完全に迷ってしまったのでは? とさすがに心配になる。
 そろそろお腹が空いてきたし、息も切れてきた。

「ちょっと休憩……」

 よろめく足を止めた矢先、疲れ果てた私はパフッと何かに衝突した。
 それが彼の背中だと分かったとき、私の顔がボッと熱くなった。
 ぶつかっただけで。

「中学生じゃあるまいし……」

 声に出して、自分に突っ込みを入れてしまった。
 彼が振り向く。

「ただの独り言――」

「あれを見ろ」

 言い訳する私を遮って、彼が前方を指す。
 その方向に顔を向けると、街明かりが私の目に映った。
 その光は散りばめられた宝石のように輝いている。
 急に体にエネルギーが沸いて、彼を追い越して急ぎ足で向った。

 蜃気楼のように、目の前に広がる夜景のパノラマ――

「危ない!」

 突然、彼に後ろから腕を引っ張られた。
 振り向く間もなく、私の足がズズズーと滑り落ちる。
 寸でのところで腕を掴む彼が、私の落下を食い止めた。

 悲鳴さえ出なかった。

 崖がどうしてこんなところに?? とまともに考えられたのは、彼に抱えられ、安全な場所に移動した後のことだった。

「これ以上暗闇の中で歩くのは危険だ。元来た道に戻るどころか、深みにはまっている」

 彼の声が間近で聞こえる。

「明るくなるまで、待つしかない」

 高所恐怖症の人間が味わう最大の恐怖を味わった私は、うな垂れながら頷いた。
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