2 / 6
2.
しおりを挟む知らないおじさんに後ろから突かれながらどうしてこうなったのだろうと考える。
この2ヶ月毎日毎日知らないおじさんに抱かれ初めの頃は泣いて嫌がっていたがもう諦めた。
もう俺は捨てられるのだろうか。ここ最近琳くんは俺を抱いてくれなくなった。
やはり住む世界が違ったのだろうか。
そんなことを考えながら初めて彼に会った日のことを思い出した。
中高一貫校に通っていた僕は暗く、地味で友達1人いなかった。加えて男子校というなんの娯楽もない学校生活は中二の頃変わり果ててしまった。
きっかけがなんだったかもう覚えてはないけれどいつの日からか僕はいじめのターゲットになってしまった。
そうは言ってもそんなに気にしていなかった。クラスメイトに無視されようと嘘の時間割変更を教えられようと元から友人1人いない僕には無視には気づかなかったし急に時間割変更を教えてくるのもおかしくて引っかからなかった。
中学の間はその程度の可愛らしい嫌がらせだけだった。
けれど高校でそれは一変した。
外部から本物のいじめっ子がやってきたのだ。彼は僕に対する嫌がらせを本物のいじめへと変化させた。
リンチされ、カツアゲされ、ロッカーに閉じ込められ、真冬の濁ったプールに突き落とされ、便器に顔を突っ込まされた。
これには周りの奴らも引き気味だったが彼らもこっち側に来るわけにはいかないと必死に更なるいじめを考え実行していった。
教師も見て見ぬふりを続けた。由緒ある学園でいじめがあったなど言えるはずがなかったし主犯が理事長の遠い親戚だった。
僕は逃げ出したくて堪らなかったけれど逃げる場所を知らなかった。
僕の両親は大手企業の社長でずっと海外にいる。
けれど僕のことを毛嫌いしていた。
それというのも僕は父に薬を盛って襲ったストーカーの産んだ子供らしいのだ。僕が1歳の頃その母が死に遺言状に書かれてあった父に警察から連絡がいったそうだ。
両親は僕が中学に上がるまでは面倒を見てくれたけれどその後はこの学園に放り込まれた。金は自由に使えとブラックカードを渡されて捨てられた。
僕は親の社用電話の番号しか教えてもらっていない。それも会社の危機に関わるような情報を得た時以外掛けてくるな、と言われている。
僕は誰かに相談することすら出来ないのだ。
そして僕は彼に出会った。地獄から僕を助け出してくれた神様に。
あの日は押し付けられた文化祭か何かの買い出しに街に出ていたが運悪くいじめっ子集団に出会ってしまった。
そのまま路地に連れ込まれリンチされていた。いつ終わるのかも分からない地獄にただ身を縮めて耐えるしか無かった。
「ねぇ、人のアジトの近くでダサいことやんないでくれる?」
その声は今の状況にはとても不似合いな冷静な声だった。
「あ?なんだてめー。お前も殴られたいのか?」
「ぶふっ!こいつ琳のこと殴るんだってさ!」
「笑ってやんなよ。くっ、琳と自分の実力差も分かんねぇ雑魚なんだから。ははは!」
「何笑ってんだよ!!てめーらやってやるぞ!」
僕は呆然とその様子を見ていた。
僕を殴っていた7人があっという間に3人に殴られて倒れていく。素人目に見ても彼らは僕にとって何よりも怖かった存在を容易く倒してみせたのだ。
「大丈夫?彼らの知り合い?それとも知らない人?」
1番綺麗な人が僕に声を掛けてくれた。ハッとして何とか答える。
「ぁ、同じ高校の……いじめっ子…です……」
「お前いじめられっ子オーラ出てるもんな。」
「言ってやんなよ。そんな事実。」
後ろのふたりが嘲るように言う言葉になんだか恥ずかしくなって俯く。
「2人ともそんなこと言うな。ほら、君も俯かないで。そんなオーラ出てないから。」
「出たよ琳の人たらしゲーム」
「ゲームなんて可愛いもんじゃねぇだろ。宗教勧誘じゃね?」
「お前らな…俺リーダーなんですけど。……ね、君名前は?」
何を言っているのか全く理解出来なかったが聞かれたことに辛うじて答える。
「ぇと、小鳥遊優杏です……」
「そう。優杏、俺たちのアジトへ行こう。手当してあげるよ。」
その日から俺は琳くん──芳川琳くんに付き纏い、しばらくして付き合い始めたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
奇跡に祝福を
善奈美
BL
家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。
※不定期更新になります。
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる