君に幸あれ

夜瑠

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知らないおじさんに後ろから突かれながらどうしてこうなったのだろうと考える。

この2ヶ月毎日毎日知らないおじさんに抱かれ初めの頃は泣いて嫌がっていたがもう諦めた。

もう俺は捨てられるのだろうか。ここ最近琳くんは俺を抱いてくれなくなった。

やはり住む世界が違ったのだろうか。

そんなことを考えながら初めて彼に会った日のことを思い出した。


中高一貫校に通っていたは暗く、地味で友達1人いなかった。加えて男子校というなんの娯楽もない学校生活は中二の頃変わり果ててしまった。

きっかけがなんだったかもう覚えてはないけれどいつの日からか僕はいじめのターゲットになってしまった。

そうは言ってもそんなに気にしていなかった。クラスメイトに無視されようと嘘の時間割変更を教えられようと元から友人1人いない僕には無視には気づかなかったし急に時間割変更を教えてくるのもおかしくて引っかからなかった。

中学の間はその程度の可愛らしいだけだった。

けれど高校でそれは一変した。

外部からがやってきたのだ。彼は僕に対する嫌がらせを本物のいじめへと変化させた。

リンチされ、カツアゲされ、ロッカーに閉じ込められ、真冬の濁ったプールに突き落とされ、便器に顔を突っ込まされた。

これには周りの奴らも引き気味だったが彼らもに来るわけにはいかないと必死に更なるいじめを考え実行していった。

教師も見て見ぬふりを続けた。由緒ある学園でいじめがあったなど言えるはずがなかったし主犯が理事長の遠い親戚だった。

僕は逃げ出したくて堪らなかったけれど逃げる場所を知らなかった。

僕の両親は大手企業の社長でずっと海外にいる。
けれど僕のことを毛嫌いしていた。
それというのも僕は父に薬を盛って襲ったストーカーの産んだ子供らしいのだ。僕が1歳の頃その母が死に遺言状に書かれてあった父に警察から連絡がいったそうだ。
両親は僕が中学に上がるまでは面倒を見てくれたけれどその後はこの学園に放り込まれた。金は自由に使えとブラックカードを渡されて捨てられた。

僕は親の社用電話の番号しか教えてもらっていない。それも会社の危機に関わるような情報を得た時以外掛けてくるな、と言われている。


僕は誰かに相談することすら出来ないのだ。

そして僕は彼に出会った。地獄から僕を助け出してくれた神様に。


あの日は押し付けられた文化祭か何かの買い出しに街に出ていたが運悪くいじめっ子集団に出会ってしまった。

そのまま路地に連れ込まれリンチされていた。いつ終わるのかも分からない地獄にただ身を縮めて耐えるしか無かった。

「ねぇ、人のアジトの近くでダサいことやんないでくれる?」

その声は今の状況にはとても不似合いな冷静な声だった。

「あ?なんだてめー。お前も殴られたいのか?」

「ぶふっ!こいつ琳のこと殴るんだってさ!」

「笑ってやんなよ。くっ、琳と自分の実力差も分かんねぇ雑魚なんだから。ははは!」

「何笑ってんだよ!!てめーらやってやるぞ!」

僕は呆然とその様子を見ていた。

僕を殴っていた7人があっという間に3人に殴られて倒れていく。素人目に見ても彼らは僕にとって何よりも怖かった存在を容易く倒してみせたのだ。


「大丈夫?彼らの知り合い?それとも知らない人?」

1番綺麗な人が僕に声を掛けてくれた。ハッとして何とか答える。

「ぁ、同じ高校の……いじめっ子…です……」

「お前いじめられっ子オーラ出てるもんな。」

「言ってやんなよ。そんな事実。」

後ろのふたりが嘲るように言う言葉になんだか恥ずかしくなって俯く。

「2人ともそんなこと言うな。ほら、君も俯かないで。そんなオーラ出てないから。」

「出たよ琳の人たらしゲーム」

「ゲームなんて可愛いもんじゃねぇだろ。宗教勧誘じゃね?」

「お前らな…俺リーダーなんですけど。……ね、君名前は?」

何を言っているのか全く理解出来なかったが聞かれたことに辛うじて答える。

「ぇと、小鳥遊優杏たかなしゆずです……」

「そう。優杏、俺たちのアジトへ行こう。手当してあげるよ。」


その日から俺は琳くん──芳川琳よしかわりんくんに付き纏い、しばらくして付き合い始めたのだ。




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