君に幸あれ

夜瑠

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自分の荒い息遣いが路地に木霊する。

バタバタと足音を立てながら必死に走る。

火照った頬が彼に会える喜びを表している。


がアジトにしている廃屋が目に入ると更に足をはやめた。

勢いよく開いたその先に愛しい彼がいる。


「琳くん!」

気だるげな彼に走り寄る。

周りからの嘲笑なんて気にならない。
あいつらは嫉妬してるんだ。が琳くんといることに。
そう思えば初めは気になっていた周りの目も今や哀れに思えてくる。

「琳くんはい!買ってきたよ!」

先程コンビニで買ってきた物を彼に渡す。

傷んでしまった金髪すら彼の美を妨げることは出来ない。むしろ引き立ててしまっている。

「おーサンキュー」

そう言って俺の頭をポンと叩く。このために俺は頑張っている。

「じゃ、お前ら部屋からでてけー」

その合図に周りにいた奴らも出ていく。

「……琳くん…今日は…俺と…」

「ゆず。」

不安げに顔を上げると彼はにこりと笑っていた。
その顔に俺は歓喜する。

しかしその喜びはすぐに叩きのめされた。

「お前も外だ。」


気落ちしながら外に出るとニヤニヤと他の奴らが俺を嘲笑っていた。


「あっれー?のゆずくんは中じゃないの~?」

睨み付けても現役で不良やってるヤツらにひ弱な俺の睨みが効くはずもない。

「はっ。恋人が女抱くためのコンドーム買いにいくとかお前ほんと哀れだな。」

「うるさい!黙れ!」

「こわーい!ゆずちゃんが怒った~!」

ケタケタと馬鹿にしたように笑うやつらを無視してその部屋をでる。
違う部屋へ入り鞄からパソコンを取り出す。

カタカタと提出するレポートを作成する。
打ち込みながら薄い壁の向こうから聞こえてくるマットレスの軋む音と最近の彼のお気に入りの女の嬌声に苛苛する。

なんであんな女が…!!

男に媚びるしか脳が無いような頭軽そうな奴が琳くんの傍にいることが許せない。

俺の方が琳くんの役に立つのに。





数時間後、耳障りな女の声が止み部屋から出ていく音がした。

俺は琳くんの元へ走る。

琳くんはベッドの上で煙草をふかしていた。

俺の事に気づくといつものようにふわりと綺麗に微笑む。俺はその笑みに今度こそ、と走りよる。

未だ晒されたままの彼のモノを咥える。

「んっ…ふ、りんくん…んん、っふ」

「ゆず。後ろは?」

「んっ、だいじょ、ぶ…!」

その問いに期待を込めた目で琳くんを見つめる。

彼は俺の目を見てにこりと笑う。


「じゃあ、金稼いできてくれる?」

「……へ、?」

「何してんの。ちゃんと咥えて。」

「ぅぐッ…!?ん゛!!」

喉奥を突かれたことで涙が浮かぶ。
必死に舌を使い以前教えてもらった琳くんのイイトコロを刺激する。

「出すから飲んでね。」

そう言って俺の後頭部を掴んで更に押し込んだ。喉奥に勢いよく注がれた精を1滴たりとも零さないようにえずきそうになるのを堪えて飲み込む。

そうするとイイコだね、とまた頭をポンと叩いてくれる。

その手の温もりを甘受しながら先程の言葉についてきく。

「琳くん…お金って…?」

「知り合いのゲイ風俗の店が人手不足なんだって。ゆず行ってきてくれるよね?」

「え、いや、でも…俺、」

「ゆず。俺の聞けないの?」

琳くんは無表情に俺の顔を見据える。その瞳の暗さにヒュっと息を飲む。

「う、ううん!出来る!行ってくる!ちゃんと…お金…!!」

そう言うと彼はまたにこりと笑ってくれた。

赦された、そう思っても表情を緩める。

「じゃあ3ヶ月後にまた会おうか。」 

「え。さん、かげつ……?」

「うん。ちゃんと一生懸命働いて稼いできてね?」

「う、ん…わかった…」

「じゃあ早速行ってきてくれる?」

琳くんはそう言ってまたにこりと笑った。

「り、んくん…あの、1回だけでも…」

「ゆず?俺の言葉が聞けないの?」

「あ、ぅ……いってきます……」

イイコだね、とまた頭をポンと叩いてくれた。

こぼれ落ちそうになる涙を堪えてふらふらと部屋を出た。

琳くんから送られてきた地図を呆然と見つめながら俺は夜の街へと出掛けていった。





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